小島一文の
“G1フィッシング”

NEW・G1フィッシング

ヒラマサはエサ取り名人・・・同調・感度を重視

2007年12月20日

ヒラマサの修正と爆釣仕掛け

ヒラは餌取り名人だから「同調」「感度」を重視

 私の大好きな釣りの一つであるヒラマサ釣りであるが、今年は昨年のフィーバーほどではないものの平均サイズが60センチクラス、時には6号以上のハリスをいとも簡単にぶっちぎっていく大物のアタリがあるなど、数よりも型が望めるようである。私も何度か「ともしま」に出かけてみたが、バラスような大物には出会えなかったものの60センチクラスを数匹仕留めることが出来た。昨年良く釣れた50センチクラスと違って、ほんの数センチ、ほんの一回り大きいだけでこれだけ引きが違うのかと・・・。あらためて海中での魚のパワーには驚かされる。やっぱりあのスピードとパワーには魅力がある。

 山陰地方のヒラマサ釣りは、タルカゴや底カゴで狙うのが一般的であるが、ウキがスッパット入ったかと思うと竿ごと引ったくられるような強い引きと同様、ダイナミックで豪快な釣りのイメージがある。しかしヒラマサは意外にも繊細で賢い魚である。豆ヒラと違って良型になればなるほど警戒心は強く神経質な一面を見せる。9月に釣行した「ともしま」でもタルウキ仕掛けのタルの撒きエサと、付け餌が同調したほんの一瞬がヒットチャンスであり、付け餌が付いているからといって潮目を長らく流していたのでは、撒きエサと付け餌が離れてしまい全くヒラマサのアタリに遭遇しなかった。また、タルウキをピクリともさせずにヒラマサが付け餌をかすめ取っていく事も何度かあり、ウキなどの抵抗を感じてすぐにハリを吐き出してしまうのである。風が強くて仕掛けのコントロールがしにくい時こんな事がよくある。「えー、それはヒラマサじゃなくってただの餌取りでは・・・」という人も多いと思うが、ヒラマサは餌取り名人なのである。

 水族館での実験 私が本格的に磯釣りをはじめたころ大田市の竹下努名人を慕って「竹下釣り道場」(私が勝手に言っている名称)が開かれ、機会あれば釣りの勉強をしていたものである。ここで竹下名人からヒラマサの習性について興味深い話を聞いたことがある。ある水族館でのこと、そこの館長の案内である実験をしたというのである。その実験というのは、二つの大きな水槽があり、一方にはヒラマサ、もう一方にはブリが放してある。次にオキアミ20匹のそれぞれに、つま楊枝の頭を数ミリ折ったものを仕込んで、それを双方の水槽に10匹ずつ放り込んだ。すると双方共すさまじい水煙を立てたかと思うと一瞬のうちにしてオキアミをたいらげてしまったという。さて問題はその直後である。ブリの水槽の方はなんにも見あたらないのに対して、ヒラマサの水槽の方にはさっきオキアミに仕込んでおいたはずのつま楊枝の頭が、仕込んだ10個すべて浮いてきたというのである。あんな小さなものをヒラマサは一瞬のうちに識別して吐き出したというのである。これには当時の竹下名人も驚いたそうであるが、すぐに釣りの実践の中での疑問がいくつか解けたと言う。やはりヒラマサは餌取り名人であったということ、そして良型のヒラマサは決してハリを飲み込まないと言うことである。この実験の最後に館長が「ブリの方は数日後でないと出てきませんよ」と、ブリは完全にオキアミと一緒に飲み込んで数日後排泄物として出されることを説明してくれたそうである。姿形は似ていても、これだけ魚の習性が違うのだと言うことも参考になる貴重な実験である。

 私はその話を聞いていたので、いつもヒラマサ釣りの時はこの実験の話をイメージしながら釣りをしている。こうして出てくる答えは、グレやチヌ釣り同様、いやそれ以上に撒き餌と付け餌との同調、そしてヒラマサが餌を食ったときの抵抗を少なくする感度の良い仕掛け設定が要求されるということである。

撒け餌と同調させやすいG1タルカゴ

 私がヒラマサ狙いで最もよく使う仕掛けは、タルウキ仕掛けである。このタルウキ仕掛けも前述した撒き餌と付け餌の同調、仕掛けの感度を重視してずいぶん進化した。その一つにタルウキの改良がある。G1タルカゴはステンレスの天秤を組み合わせてスライドするように工夫されていて、使い方次第では撒き餌を出すタイミングをコントロールできるので付け餌と同調させやすい。すぐ出すことも、少し仕掛けがなじんでから出すこともこちらの思いのままである。出したいときに100パーセント確実に出せるのもG1タルカゴならではの特徴だ。しかし、せっかくG1タルカゴを使用しているのに、従来のタルウキと効果が変わらないような使い方をしている釣り人をよく見かける。まずは投入である。ウキが着水する寸前に手元で道糸を操作し、少しブレーキをかけてやることがポイントである。こうすることでタルの中の餌をわざと出さないように着水させるのである。この操作が確実に出来るようになれば、仕掛けの絡み防止にもなり、G1タルカゴを使って他との釣果に歴然とした差がでること間違いなしである。後は潮の速さや風の影響を計算して撒き餌を出すタイミングを調整していくのである。風が強くて仕掛けがなじむまでにウキが横滑りするようなときは、ハリスの部分が完全になじんだのを見計らってから道糸を引いてタルの中の撒き餌を出してやるとうまく同調する。

 セッティングはタッチャン仕掛けとの組み合わせによってウキ止めなしのスルスル、水中ウキのセット、アタリウキ、ハリスウキ、ナビのセットで喰い渋るヒラマサに多いバリエーションで対応できるようになった。 ふかせ釣りが理想 「同調・感度」を追求すればやはり行き着くところはふかせ釣りにある。カゴ釣りでにぎわう釣り場では、ふかせ釣りはどうしても不利になる事が多いのだが、警戒心の強い大型ヒラマサ、特に自己記録になるような大型ヒラマサを仕留めるには、ふかせ釣りが有利であると思っている。それだけふかせ釣りにはメリットが多いのである。

 まず「同調」。撒き餌、仕掛け共に足下から潮にのせてやるので常に撒き餌の中に付け餌がある状態を保ちやすい。それだけヒラマサがヒットする確率が高いというものである。カゴ釣りには遠投してもとれにくいボイルオキアミを使うことが多いが、ふかせ釣りでは生オキアミを使用することが多い。喰い渋るヒラマサには柔らかい餌の方が食い込みがよいようである。撒き餌は生オキアミ主体にし、風が強いときなどはグレパワースペシャルなどグレ用の集魚剤を混ぜる。

 次に「感度」。ふかせ釣りは余分なものをほとんど付けないシンプルで軽い仕掛け設定がしやすい。私の場合は、道糸とハリスを直結してハリ、クッション、ウキをセットしただけの極めてシンプルな仕掛けで対応している。グレ釣りの仕掛けをそのまま大型ヒラマサ用に号数アップしたものであるが、ウキはグレ釣りに使用する竹下ウキのレギュラータイプを使う。同調を考えれば状況によっては、マイナスウキを使った沈め釣りをすることもあるので、釣りイメージはグレ釣りとほとんど同じである。

 ふかせ釣りの魅力は取り込みにもある。あの強烈なスピードとパワーを余分なものが全く付いていないシンプルな仕掛けで取り込むというのであるから、その引きはダイレクトに釣り人の筋肉を刺激する。同じサイズのヒラマサでもカゴ仕掛けで味わう釣り味と、ふかせ釣りで味わう釣り味とでは一味も二味も違うものである。ヒラマサのふかせ釣りは、これからのシーズンが狙い目である。渡船でにぎわう磯を避けて、自分の足で確保したポイントで思う存分その強烈な引きを味わってほしい。

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