あの監督が泣いた

この度の敗退は監督が一番悔しかったのではないか

私はそう感じた

 

 

3年生にとっては最後のミーティング

「負けたのはおれのせいだ」・・・と敗戦の全責任を監督が負い

「勝たしてやることができずに申し訳ない」・・・と選手に頭を下げた

「自分の不注意でエースが肩を故障し、万全で大会を迎えることができなかった」と
悔しさをにじませた

レギュラーも、控え選手も、1年生も、親も・・・泣いた

 

 

私はこの監督の指導方針が好きだ

別におべんちゃらを使っているわけではないが・・・本音でそう思っている

何がすきなのか

そしてなにがすばらしいのか

それは監督の人間性だ

 

学生の競技スポーツにおいては
指導者の役割、影響は大きい

監督・指導者の人間性がそのままチームカラーになるといっても過言ではない

 

今の監督が宍道中学に赴任された4月
今の3年生たちも入学してきた

そして熱血指導を受けて
目標に向けて日々取組んできた

 

具体的に何がいいのか

指導者には一貫性と信念・・・軸をブレさせないこと

そして時には他の意見を聞いて
取り入れる謙虚さと柔軟性も求められる

 

まずは何か物事に取組む場合の入り口が大切なのだ

 

あいさつ、用具を大切にする、靴をそろえる

こんなことは家庭教育の範疇であたりまえのことだが・・・
それが今では難しい

特にチーム全体で取組むとなるとできそうでできないもの

そしてただ「あいさつ」といっていろいろな形があり奥が深い

形ではなく、気持ちだ・・・そこまで教え込むのは実際難しい

 

昨日から新チームの練習が始まった

まずはグランド整備、草取り、草刈から取組む

これは例年同じだ

 

そして、えこひいきしない

野球がうまい子も、控えの子も、みんな同じ

主力の選手にこそ下積みを経験させることで

チームの信頼を得る

学習態度や学校の決まりが守れない部員がいると

練習禁止命令が出て「宍道中学校野球部クリーンクラブ」として
みんなが練習している間は、学校内を掃除しなければならない

監督が「よし」というまでずーとだ

これはかなり堪えるようだ

 

監督の教えの中に

「試合に出られない仲間のためにがんばれる自分になろう」

「応援してくれている人のためにがんばれる自分になろう」

「期待される人間になろう」

そしてグランド内での全力疾走

「県一マナーのよいチームになろう」

というものがある・・・わたしも共感する

 

今年春の選手権、そして出雲地区大会

ともに1点差で悔しい負け方をした

しかし選手たちには悔し涙はなかった

私はこのとき「負けて悔しくないのか?」

「もっと感情をむき出しにしてもいいのではないか」

と疑問を持ったものだが

最後に見せたこの悔し涙でその疑問も吹っ飛んだ

 

ここで負けてしまったが

彼らはもっと高いところ、もっと先に目標をすえていたのだ

だから勝っても喜びはしゃぐわけでもなく

負けて激しく悔しがるそぶりを見せるわけでもなく

じっと先を見据えていたのだ

 

それも監督の理念、目標の据え方にあったと思う

一見、管理野球が過ぎてプレーが小さく見えることもあった

確かに監督は厳しい、怖い

子どもたちは監督の一挙手一投足にビリンビリンしている感じもある

 

しかしこれも何とか地区代表になって

もっと上の舞台でプレーさせたかったのだ

県、あるいは中国の舞台でこの子達が持っている最大の力を発揮させたかったのだ

その舞台でこの子達自身が試合を楽しむ姿を望んでいたのだ

 

そのためのプロセスであり

行ぅ瓠璽肇諷くまでは、細かいサインもある、管理もある、厳しい指導もある

監督はあえてそうしていたのではないか

 

そして子どもたちも信頼してみんなついて行った

3年生は11人

入部したときからだれ一人としてやめなかった

そして控えの選手はコーチャーボックスでベンチで大きな声を出し続け

レギュラーはその声援に応えようと全力プレーした

そのワンプレーワンプレーをだれが責められようか

本当にこの子達はよくやったと思う

そしてレギュラーも控え選手も関係なく流したこの悔し涙

3年間積み上げてきた一つ一つが

悔し涙の一粒一粒となって流れた

 

子どもたちはこの悔し涙の量だけ大きく成長する

勝負には負けたが

監督の理念と指導方針は正しかった

あらためて感謝したい

「ありがとうございました」

 

そしてこれからもよろしくお願いします

宍道中で県大会へ出場するまで

異動できませんよ

これはたぶん・・・間違いなく

部員も保護者も全会一致の願いでもある