小島一文の
“G1フィッシング”

G1フィッシング

超遠投ふかせ釣法でG杯カゴ釣り選手権を制す

G1タルカゴの紹介。連載最終号

-中国地区限定:6月隠岐島前で開催-
 例年よりも早い春の訪れに釣人たちも心躍らせていたはず。桜の開花が10日も早く訪れたのだからきっと水温の上昇も早いと予想し、魚たちの動きも気になるところだ。しかし、辺りの陽気とは裏腹に周期的に襲来する春の嵐に釣人たちの足は釘付けになった。山陰地方は3月21日、寒冷前線が上空を通過したため各地で南寄りの強風が吹き荒れ、なんと松江、西郷で3月史上最も強い最大瞬間風速31.7メートル(松江)、31.5メートル(西郷)を観測した。その後もシケの日が多い。
 私は時化た海を恨めしく思いながらも無理な釣行は避けて3月17日、「がまかつ」の新製品発表展示会(広島市産業会館)に足を運んだ。なんと言ってもこの企画の売りは、がまかつ製品の竿がすべて伸ばした状態で展示してあることだ。磯をはじめ、鮎、へら、渓流、ルアーとあらゆるジャンルの竿を手にし振ってみることが出来る。1本数万円と高価なカーボンロッドだけに、選ぶ方も慎重になるわけだがこれなら納得するまで品定めが出来る。会場には社の販売スタッフのほかに、各ジャンルのフィールドテスターたちが控えているのでアドバイスも受けることが出来る。この企画で注文した竿には無料で自分のネームを刻み込んでくれるサービスもある。もちろんその他、ウエアーや小物類にいたるまですべての商品が展示してある。遠方にもかかわらず山陰地方からの来場者も多く、チヌ釣りの名手高園満さんや南康史さんの講演会、プレゼント抽選会などもあり会場は熱気で包まれていた。来年もこの時期に開催されると思うのでぜひ足を伸ばされるといい。

カゴ釣り師に朗報
 さていよいよシーズン到来となり、各種メーカー主催の釣り大会、釣りトーナメントも目白押しだ。
その中で今年私が最も注目しているのは「G杯カゴ釣り選手権」だ。この大会は中国地区に限定して開かれ、株式会社がまかつが主催する大会としては初めての企画となる。大会の詳細は未だ発表されていないが、期日は平成14年6月23日(日)、24日(月)1泊2日の磯泊まりで開催される予定だ。場所は隠岐島前一帯の磯。山陰地方に愛好者が多いカゴ釣り師を意識しての大会企画なのだろうか。ともかく「ふかせ釣りは性に合わん」とか「ワシはカゴ釣りで大型マダイの一本勝負だ」という釣人には、ここが出番だ。メーカー主催の釣り大会としては、私が記憶するところ初めての試みなので、
ぜひともこの機会にここ山陰のカゴ釣り技術を世にアピールするチャンスなのだ。大会会場となる
隠岐島前は磯から大型マダイやヒラマサ、イサキなどが狙える有数のポイントであることは、地元の私たちならすでに承知のこと。楽しみな大会になりそうだ。エントリーは4月下旬ゴロから各がまかつ販売店で申込受付が始まるので、最寄りの特約店に問い合わせてみよう。

 磯のカゴ釣りといえば山陰地方独特のウキとカゴが一体化した「タルカゴ」を使用する三点釣り、
たっちゃん仕掛け釣りと、全国的にはオモリと撒き餌カゴが一体化し、ウキと独立して底に沈め棚をとる底カゴ仕掛け釣りとがある。今回は私が最も得意とする「タルカゴ」を使ったたっちゃん仕掛け釣りをマダイ狙いのイメージでタックル選びから釣り方まで紹介する。
 前述したカゴ釣り選手権大会は「タルカゴ」、「底カゴ」どちらを使った釣りでもOKだが、私は山陰地方に適していると思われるタルカゴ仕掛けにこだわって挑戦してみたい。

メリットを生かしデメリットを補う「たっちゃん仕掛け」
 本誌ではすっかりおなじみになった「たっちゃん仕掛け」。私のカゴ釣りイメージでは、山陰地方の潮流や自然条件などの特徴からタルカゴを使ったこの釣り方が利にかなっていると思っている。
これまで数々の実績を見てもそのことを実証していると言える。
 緩い潮の流れや沖の潮だまりを直接遠投して狙う釣り方に「三点釣り」がある。
古くから山陰地方独特の釣り方として得意とする釣人も多かった。その過去の実績もすばらしい。
しかし、ハリスの長さを7ヒロ以上取り固定仕掛けで釣ることから、仕掛けの振り込み投入と大型魚の取り込みにかなりの経験と技術を要する。結局、緩い潮の流れを自然なエサの送り込みで深い棚から大型マダイを引きずり出す利にかなった釣り方も、このようなデメリット部分が重大な問題点となった。このデメリット部分を補う形で開発されたのが「たっちゃん仕掛け」なのだ。仕掛け図を参照していただきたい。早い話がふかせ釣りの延長である。深い棚を効率よく攻めるために遊動仕掛けにし、棚取りには潮によくなじませるための水中ウキをセット。タルカゴと水中ウキが絡まないように
パイプ天秤を使用したのがミソだ。固定式の三点仕掛けと全く同じ釣り効果があるといえばウソになるが、前述したデメリット部分は補うことが出来る。さらにこの仕掛けで釣っていて新しい発見もあった。それはふかせ釣りの基本である捲き餌との同調。風と潮が逆方向に流れても、水中ウキが底潮を確実にとらえて撒いた餌の方向へナビゲーションしてくれる。まさに超遠投ふかせ釣法の完成である。

竿は3号から4号を使用
 竿は3号から4号を選ぶ。長さは三点釣りをメインにする人なら6.3メートルと長目がよいが、私の場合はたっちゃん仕掛けなので体力に合わせて5.3メートルを使用している。1メートルの違いは竿を伸ばしたときに
かなり重量感に差が出るので、最初は仕掛けの振り込み投入を重視して5.3メートルがよいだろう。
3号にするか4号にするかは使用タルカゴの大きさが目安。3号ならタルカゴの(中)、4号ならタルカゴの(大)を使用する。私の場合は潮を読みながら足下にも大量の捲き餌を入れていくので3号竿にタルカゴ中のセットで狙うことが多い。4号竿は沖に多めに捲き餌をしたい場合か、主に底カゴ釣りの場合に使用している。

リールは遠投性を重視
 リールは遠投が出来るように大型径のスプールを持つスピニングリールが使いやすい。
最近ラインナップが増えてきたジギング用の大型スピニングリールにも注目している。遠投性、糸巻き量、巻き上げパワーと速度、どれをとってもカゴ釣りに向いていると言える。大きさは8号クラスの
道糸が200メートル以上巻けるものならOK。糸が巻けるからと言ってあまり小型のものを選ばない方がいいと思う。カゴ釣りの場合は大型の方が手返しなども早くスムースだ。

最初はナイロンからスタート
 道糸はナイロン製のものをすすめる。最近ではその強度と遠投性からPEラインを使用する釣人も増えているが、最初はナイロン糸でなれてからの方がよいと思う。私の場合は棚をスムースにとるために多めの糸ふけをとることから、磯などに絡みにくいナイロン道糸を使用している。夜釣りでのトラブルも少ない。ナイロンの特徴である適度な糸の伸びは大型魚の急激な締め込みを吸収してくれる。号数は6号~8号を200メートル。隠岐では大型に対応して8号を使用する。
 ハリスはフロロカーボン製の5号~10号。隠岐の夜釣りでは思い切って10号の使用をおすすめしたい。

小粒で潮受けのよいものを
 この釣りの重要なアイテムの一つに水中ウキがある。私が好んで使うのは小粒で潮受けのよいもの。小粒の方が投入時に絡みなどのトラブルが少ない。号数は0.5号~2.0号を潮の速さに応じて使い分けているが、私の経験上、隠岐を含めて山陰地方であれば1.0号オンリーでOK。グレックスのセラミック水中ウキが私がイメージする要件をすべて満たしている。

反転式改良で、攻める釣りが実現
 そして最も重要なアイテムがタルカゴだ。私が愛用するのは反転式に改良した「G1タルカゴ」。
以前にもこのコーナーで何度か紹介したことがあるが、捲き餌が100パーセント放出でき、投入着水時に少しブレーキを掛けてタルカゴの胴の方から着水させれば、自分の意図で撒き餌放出も可能である。
エサ取り対策や捲き餌の同調に効果がある。遠投性と視認性もよくまさに私の攻めの釣りイメージにピッタリのアイテムになった。
 また、タルカゴ内に付け餌を埋め込んで投入することも出来る。この場合でも付け餌を確実にタルカゴから放出することが出来る。

捲き餌にチヌ用のムギコーン
 タルカゴに詰める捲き餌はオキアミボイルがメーン。ボイルは海水に浸して水分を十分含ませる。
さらに私はマルキューからチヌ用の配合エサとして出している「ムギコーン」をオキアミ3キロに1袋の割合で加えている。これは視覚効果で魚に興味を示させるためとエサ取り対策にある。もう一つはタルカゴにオキアミを詰める際にオキアミの隙間を埋め、締まりをよくするためでもある。こうすることで詰めるときにオキアミの水分が抜けずに遠投性もよくオキアミの沈みもよい。半日の量としてオキアミボイル6キロ、ムギコーン2袋を用意する。
 付け餌にはマルキューのくわせオキアミ半ボイルLを使用。沈みがよく身がしっかりしているので
遠投時にもハリから外れにくい。私の場合は図のように2匹抱き合わせか、さらにエサを大きく
見せるためにハリに刺さないオキアミを2匹追加して、市販のエサ巻き糸で巻いて対応している。
エサ巻き糸を使用すると食いが悪いという人もあるが、エサがハリから外れていないかどうか不安な気持ちになるようだったら巻いた方が絶対にいい。

50メートル以上確実に遠投
 仕掛けはこれでOK。後は仕掛け投入をマスターすればこの釣りは、ほぼ完成したと言ってもよい。仕掛けのトラブル無く50メートルがコンスタントに投入できるようにトレーニングしよう。私は昔、三点釣りをしていたなごりから、付け餌を手に持ち、海に背を向けて構え、竿じりを腰にあて、後ろに腰をひねって投入している。その他、G1タルカゴに付け餌を埋め込んでオーバースローで投入する方法がある。どちらにせよ少々トレーニングが必要だ。人の少ない防波堤や宍道湖のほとりなどで、
タルカゴに水分の含んだ米ヌカを詰めて練習するのもよい。このときに着水寸前に道糸にブレーキをかけ、仕掛けのトラブル防止とタルカゴから撒き餌さがこぼれないことを確認するとよい。
着水後一呼吸おいて道糸を引っ張ったときにスーッと捲き餌が放出されれば100点満点だ。

潮の流れがあればウキ止めなしでどんどん糸を送り込む
 トラブル無く仕掛けが着水していれば、たるんだ道糸がススーッと一定の張りを持つ。
それは、水中ウキが潮をとらえて確実に棚をキープしている証拠である。潮に引っ張られれば
少しずつ道糸を送り込んでやる。私は、ほどほどの潮流があればウキ止めを付けずにフリー状態で
どんどん道糸を送り込んでやる。
 逆に潮の流れが緩くほとんど動かないようなときは、一定の棚を決めてウキ止めをセットしタルカゴに任せるように流し込む。こうしないと根掛かりのトラブルになったり、確実に棚がとれていなかったりのする場合が生じる。

釣果アップは手返しアップ
 カゴ釣りで一番気になるのは、明らかに付け餌がとられて無いと思われるのに、やっぱり仕掛けを流し続けている釣人が多いことだ。常に付け餌がハリに付いているかどうかを意識しながら釣ることが大切だ。付け餌がアタリもなくとられているようなら、どんどん手返しのサイクルを早くしよう。手返しが早くなれば撒き餌投入も多くなり効率的に魚をおびき出すことが出来る。エサ取りが多い場合や、逆に付け餌が一向にとられずに手返しのサイクルが遅いときには、足下からもコンスタントに撒き餌を入れてやると効果的だ。このときの撒き餌は、サラシなどをうまく利用してなるべく沖に流れるようにしよう。

道糸の走りがたまらない
 この釣りの醍醐味は、道糸が潮流を受けた水中ウキに引っ張られていくときの何とも言えぬ期待感と、マダイが食いついた瞬間の道糸の走りだ。フリーで流しているとまずはアタリが道糸へダイレクトに伝わり、後にG1タルカゴを一気に消し込む。このときがアワセを入れるタイミングだ。そしてカゴ釣りによく見かける置き竿はもってのほかだ。竿は常に手に持ち、リールは常にオープンベールが基本。メーター級の実績がある隠岐島前の釣りだけに、いつでも記録物が食いついてくることを想定した備えが必要となるだろう。さて、第1回のカゴ釣りチャンピョンはだれの手に・・・。

長い間ご愛読いただきありがとうございました
 平成9年5月号から始まったG1フィッシングは、この号をもって最終回となりました。
まる5年間という長きにわたり、読者のみなさまにご愛読いただき本当にありがとうございました。
この期間は私の釣り人生にとってもたくさんの経験とたくさんの人との出会いがあり、充実した日々を送ることが出来ました。この連載に取り組んだことは私のかけがえのない財産となりました。 また、たくさんのアドバイスをいただいた諸先輩方や釣り仲間のみなさん。取材などでご協力いただいた各地の渡船店や釣具店、各種関係メーカースタッフの方々には大変お世話になりました。紙面を借りてお礼申し上げます。これからも価値あるG1な釣果を目指して大好きな釣りを続けていきます。どこかで出会ったら気軽に声を掛けてください。ありがとうございました。

 

釣りは 少年の 心で・・・

 
G1フィッシング  小島一文

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