隠岐・島前、マダイのフカセ釣り
三原憲作名人とTV取材
テレビ取材
5月8日、9日、あの三原マジックの三原憲作名人がテレビの取材で訪れるというので大田市の林能伸さんと共に案内役で同行させていただいた。狙いは隠岐・島前のチヌ。7日午後、三原氏と取材スタッフ3人と境港で合流。この日のうちに現地に入り、8日早朝から取材開始の段取りである。三原氏とは、G杯グレで決勝戦を戦うなど同大会で何度もお会いしている間柄である。
全国を釣り歩く三原氏だが、意外にも隠岐釣行ははじめてという。「さあ、明日はどこを攻めようか。何にもわからんからそっちにお任せだよ」と、三原氏と取材スタッフ。さっそくふたまた丸の若船長に相談するが、前述のように今年の内海のチヌは全く読めない。ゴールデンウイークにはたくさんの釣り人が入ったらしいが、場所によって釣果にむらがあったようだ。知り尽くしたホームグランドといっても場所の選定にはかなりのプレッシャーがある。
結局、当日は南西の風が強いという気象条件、最近の実績など船長のアドバイスもあって西ノ島文覚窟の南対岸に決定した。
今回の取材は、三原名人がキャスター役になり地元の釣り師と竿を出すという設定。1本目は林さん中心で、仕掛けエサ、場所の紹介をしたうえで二人の釣る状況をカメラが追う。さらにスタッフの一人はウエットスーツに着替え、水中カメラでかけた魚の動きを捕らえると言うので、こちらのお手伝いを私がすることになった。
文覚窟では半日攻めてみるが、今年のノッコミチヌを象徴するかのようにチヌのアタリが無く磯替わりをすることになった。2、3匹ならなんとかいけるだろうとタカをくくっていた私たちの考えは甘かった。迷いに迷ってつぎに渡礁したのは、中ノ島(海士町)日ノ津港内の「牛馬海岸」。ここでは、マダイの40センチ級が良く釣れるが、肝心のチヌのアタリがない。「隠岐のマダイ釣りにタイトルを変更しようか」などと話していた矢先、林さんに待望のチヌが喰いついてきた。それもジャスト50センチ。続いて三原名人にも53センチのチヌが喰いついてきた。厚みのある重量感たっぷりの隠岐のチヌにさすがの三原さんもやや興奮気味。三原さんはチヌを手に満面の笑みをカメラに向け、無事1本目の取材が終了した。
宿に入って最終日の打ち合わせ、「それにしても隠岐はマダイの魚影が濃いですね」とスタッフ。私たちは「そうですね。磯からマダイを狙うには、隠岐は日本一かもしれませんよ」と、思わず調子に乗って言ってしまった。「よーし、明日は外海でマダイ狙いだ」と、三原氏も気合いを入れる。民宿にある大ダイの魚拓を何枚も見せられては、当然といえば当然。特に今年は例年になくマダイが好調。売り言葉に買い言葉ではないが、最終日、2本目の取材は、不安定なチヌ狙いを変更して「マダイのふかせ釣り」に決定した。
ポイントは西ノ島の「冠島」。マダイの魚影は抜群に濃く、潮通しも良いことからマダイのふかせ釣りには絶好のポイントだ。磯に上がってすぐに足場などを確認する。潮は海に向かって左から右方向。肉眼でもその流れがすぐに分かるほどよく通している。私は「これならいける」と直感した。
2本目の取材は私がメイン。磯の右側先端に釣り座を取らせてもらって図の仕掛けをウキ下6ヒロにセットして釣りはじめた。第1投目、タナがなじんだかなと思った途端ウキがスパッと消し込まれた。竿を立てるとそこそこの手応え、「もうきましたよ」とスタッフに声をかけて取り込んだのは、40センチ弱の本命マダイ。湾内のマダイと違ってピンク色の魚体にブルーの斑点が鮮やかでまぶしい。続けて2投目にも同サイズのマダイがヒットしてきて幸先良いスタート。三原さんもスタッフも一様に驚きを隠せない。「すごい」の一言だ。私の釣りがすごいのではなくて、隠岐のマダイの魚影がすごいと言っているのだ。全国を釣り歩く三原さんにしても「ここはすごいところやなー」と舌を巻く。その三原さんにもマダイのアタリ。続いて潮上にはずれて竿を出していた林さんにも強烈なアタリ。これが本日最長寸となった58センチのマダイだった。なんとこの日はアタリがあればすべてマダイ。私もこの後、56センチ、52センチ、45センチを追加し、午前10時までに3人のマダイの釣果は12匹となった。スタッフは早々にいい映像がとれてほくほく顔。私たちもガイド役としてのプレッシャーから解放された。
しかし私は「こんなもんじゃない」と内心思っていた。数はそこそこ出たものの、マダイのサイズとしてはまだまだこんなものじゃない。この日も撒き餌が利きだしていったん餌取りが気になる時間帯があったが、その餌取りがスーッと姿を消した時があった。きっと80センチを越すような大ダイがうろうろしていたに違いない。私はひそかに3号ハリスを5号ハリスに替えて大ダイのアタリを待っていたが、とうとう喰いついてはくれなかった。
マダイのふかせ釣りのアドバイスとしては、まず撒き餌を絶やさないこと。4月、5月の昼釣り用の撒き餌の配合は、半日の量でオキアミ6キロにマルキューのチヌパワームギ1袋。これにやや水を多めに入れて柔らかく仕上げる。この撒き餌を絶え間なくコンスタントに撒くのがコツ。仕掛けは、6ヒロ以上のタナが確実にとれる仕掛け設定が必要だ。この日もそうであったが、潮の流れが速かったり上潮と底潮が違う方向に流れる場合など、マイナスウキやガン玉を付けて浮力調整しウキごと沈め込ませる「沈め釣り」が効果的である。特に私が得意とするのは、浮力ゼロの管付きウキを道糸の操作で沈めていく方法。流れに対して少しテンションをかけてやると自然に沈んでいく。いったん沈んだウキは潮の流れに任せてやればよい。マダイ釣りもチヌやグレ釣りと同様撒き餌との同調が大切なのである。この釣り方で撒き餌の帯の中に付け餌を送り込んでやればかなりの確率でアタリがあるはずである。
私の仕掛けに対し三原さんの仕掛けは、ハリスウキを使用した2段ウキ仕掛け、特にハリスウキは潮を受けやすくするため上部が受け皿のような形をしていてナビの役目をしている。ハリスウキをガン玉で沈めていくと潮を受けてどんどんタナまで沈んでいく。軽い仕掛けにもかかわらず深いタナを取る効果的な方法である。しかも底潮を読む。これで私の仕掛けと同じようにマダイのアタリを出した。たとえ仕掛けは違っていてもそれぞれの仕掛けを使いこなすことによって、同じ条件を釣りこなすことが出来るというよい例である。隠岐の海でも自分の道具を信頼して自分のイメージどおりに釣りこなした。
これが三原マジックなのか・・・。