小島一文の
“G1フィッシング”

G1フィッシング

チヌの入れ食いに、マダイも…

隠岐島前・三度

磯釣りをはじめるなら今の時期がチャンス

 5月は穏やかな天候にも恵まれて各地でよい釣果が聞かれたようだ。磯釣り師の我々にとってこの5月というのは、年間を通し最も狙い魚を定めやすい時期なのかもしれない。天気の安定、水温の上昇、魚の産卵時期、餌取りの有無など秋磯よりもむしろ釣りやすい状況が揃っていると言える。特にこれから磯釣りを始めようという人は、5月を中心とした4月~6月のこの時期に取り組まれることをおすすめする。やはり魚が釣れなければ興味もわかないし、自然条件もこの時期なら比較的釣り人に優しいだろう。

フェリー客の多さにビックリ

 さて私の5月の始動は、ゴールデンウイークの3日から始まった。昨年同時期に隠岐島前西ノ島町の三度に釣行してチヌやマダイを爆釣したので「今年も・・・」という思いで渡船ダイキン(松尾丸:08514-6-1260)を予約した。ダイキンは大型高速船で人数が揃えば七類までのチャーターもOKだ。定員は30人、所要時間は1時間30分を見ておけば十分だろう。ダイキンの船長は脱サラして渡船業を始めただけあって、サービス精神旺盛できめ細かなサービスは釣果を抜きにして気持ちのいい釣りを約束してくれる。もちろん三度周辺の磯にはめっぽう詳しい。3日は当初、七類までのチャータを予定していたのであるが少々うねりが残って来られないとの連絡。結局私たちは七類からのフェリーで島前へ向かうことにした。それにしてもフェリーの乗船客の多さには驚いた。帰省、観光、釣り客で船の中は通路や階段の踊り場まで人や荷物でいっぱいになった。私も過去何度かゴールデンウイーク中にフェリーに乗船しているが、これほどの乗客の多さは初めてだ。隠岐人気はすごいものだ。
 知夫里島「来居港」にフェリーが着くと乗船していた釣り人のほとんどが降りていく。港には島前3島の渡船のほとんどが舳先を岸壁に着けて釣り人を待つ。慌ただしく釣り人が行き来したかと思うとほんの数分で積み込みを完了し、大海原へと走り出した。私たちが今回目指すのは西ノ島の西岸「三度」の磯である。

超1級磯「ハギリ」へ

 渡船は赤灘から次々と釣り客を降ろしていき北に走らす。渡礁場所は船長に任せていたのであるが、幸運にも昨年爆釣した磯「ハギリ」で船長のコールがあった。「ハギリ」と言えば三度でも超1級磯にランクされる釣り場で、釣り人たちが憧れるポイントである。私自身は昨年につづいて2度目の渡礁になるが、過去の実績は磯で釣れるすべての魚種において、数、型ともに記録的な釣果が確認されている。ベテラン釣り師たちは、いくら釣果が悪くても「ハギリに渡礁できたのだから・・・」と満足したものだと口を揃える。
 今回私たちの狙いは、チヌとマダイ。チヌについては昨年初めて渡礁したときに「こんな水深のある荒磯で、しかも潮が非常に早いところに本当にチヌが居るのか」と戸惑ったものであるが、昨年の実績があるだけに私は自信満々に仕掛け、撒き餌をセットして釣り始めた。仕掛けは図のとおりであるが、撒き餌にはオキアミ生6キロにマルキューのチヌパワームギ1袋を加え、その他、別のバッカンに海水に浸したオキアミボイルを用意した。付け餌はオキアミ生、オキアミボイル、マルキューのくわせオキアミスパーハードを使う。

長丁場の釣り、まず狙い目は

 チヌの狙い目はポイント図のA付近から足下の壁を釣る。本流が磯の鼻をかすめて「大神立岩」の方向に流れるその引かれ潮に流すのがベストだ。ここでチヌ釣りに関して注意する点は、最初から出鼻をかすめる本流に撒き餌を入れないことである。ここに撒き餌を入れるとチヌはどんどん沖に出ていってしまい、結局効率の悪い釣りになってしまうことが多い。ポイントの地形から低い鼻付近からいいサラシもあり直接潮筋に撒き餌を打ちたくなるものだが、最初は我慢してAの足下狙いに徹することである。これが「ハギリ」での数釣りのコツであると思う。仕掛けは足下の壁際からサラシ、本流の壁を丹念に攻める。ウキ下は5ヒロから7ヒロとやや深めに設定し、状況に応じてはウキ止めをはずしてスルスル釣りでタナを探るようにするとよい。

餌取りが多い

 初日の5月3日は午後1時から釣り開始。この日は南西のうねりが残り図のC地点は波が打ち上げる状態。Cからはサラシが「大神立岩」方向にのびているが潮はほとんどと動いていない。まずは作戦どおりAの足下に絞って釣り始めた。撒き餌をするとしばらくして餌取りが姿を見せはじめる。ウマズラ、スズメダイ、フグがその正体。時々ウキにアタリが出て竿に乗ってくるのはウマズラ。そこで、軽い仕掛けを変更し、ウキを浮力の大きいものに変えてハリスに2Bオモリを2段に分けて打った。ウキ下は6ヒロ。足の遅い餌取りと見極めて付け餌を早くタナまで落とすイメージだ。付け餌もオキアミボイルを使用する。撒き餌は足下だけに打ち仕掛けはやや沖目に離して投入しタナがなじむのを待った。すると待望の本命が喰いついてきた。釣り始から意外と手こずってようやく40センチ級を1匹取り込んだ。そしてポツリ、ポツリとチヌのアタリ。だんだんチヌの喰いがたってきてB地点からサラシの壁を狙っていた稲村吉郎さん(八束郡宍道町)が大きく竿を曲げた。取り込んでみるとらくらく50センチオーバー。夕マズメには、40センチ級のマダイが混じるなど潮が動いていないのにサラシの流れだけでそこそこの釣果が出るのは、さすが「ハギリ」だ。夜釣りでは太仕掛けに変更してこれにもチヌやマダイのアタリが何度かあり取り込んだ。今回は2泊3日の磯泊まりという長丁場なので、深夜は仮眠を取ることにした。

大型クーラーがすでに満タン

 明けて2日目、5月4日午前4時、仕掛けを投入してみると本命潮の「大神立岩」方向に潮が流れはじめていた。Aから足下に仕掛けを投入するとイメージどおり左方向に引かれていく、さらに流すと引かれた仕掛けがCからできるサラシの壁にぶちあたって大神方向に流れていく。
 本命潮になって磯が急に活気づいた。入れ食いとまではいかないがアタリがあればチヌかマダイが喰いついてくる。不思議なことに朝マズメを過ぎて日が昇っても昨日あれだけ気になった餌取りの姿はまったく見られない。何度か連続で付け餌が付いて上がるので、昨日とは逆にガン玉のG3をハリから2ヒロのところに1個打ち、ウキ止めをはずして軽めのスルスル釣りでタナを探っていると、またチヌのアタリが戻ってきた。釣れるパターンを見つければもうこっちのもの、3連チャン、4連チャン、5連チャンと毎投ごとに本命のチヌが喰いついてくる。2人とも大型クーラーの1個目はもう満タン。2個目のクーラーにも魚が収まりはじめた。

自然の不思議、恐ろしさを体験

 さらに3日目となる5月5日。4日の状況から、この日も預けた物でもとって帰るかのように、入れ喰いになることを期待しながら仕掛けを振り込む。しかしこの日の潮は、大神方向から突っ込んできて「オイヤ鼻」方向にゆっくり流れた。何と驚いたことに仕掛けを打ち返しても打ち返してもまったく付け餌が取られない。重ための仕掛けで根がかりするほどに付け餌を沈めてみてもA~Cの周辺ではまったく魚らしい気配がなくなっていた。なんと自然は不思議なんだろう。初日の餌取りの多さ、2日目のチヌ、マダイの入れ食い、そしてこの日の状況。自然とはなんて計り知れないものなのだろうか。

そしてクライマックスは・・・

 朝マズメから約6時間たった午前11時、ようやく潮流に変化が現れた。鼻を巻いてオイヤ方向に流れていた潮が西方向の真沖にゆっくり流れはじめた。7ヒロのタナで攻めていた稲村さんに3日目初めてのアタリが出た。40センチ級のチヌだ。そしてまたすぐに連続ヒット。潮の流れが変わってチヌが戻ってきたのか。そして納竿時間残り1時間。クライマックスがやってきた。ゆるんでいた潮が2日目と同じ大神方向に流れはじめた。私たちは釣り座をBに立ち、ウキ下6ヒロで本流に直接仕掛けを放り込んだ。するとどうだろう今までの沈黙を破って、仕掛けがなじんだっかと思うとウキが水煙をたてんばかりの勢いで消し込まれる。クライマックスを飾るにふさわしい、まさにチヌの入れ食いである。午後1時タイムアップ。2人の大型クーラーはそれぞれ二つとも満タン。2人の釣果はチヌ、マダイ合わせて70匹を記録した。

このページのトップへ