小島一文の
“G1フィッシング”

G1フィッシング

夏の日、日振島で良型グレ乱舞東レカップで全国切符手中

 暑い、暑い! 梅雨明け前だというのに軒並み30度を超える日が続き、夏本番も記録的な猛暑となった。陸上はこのように連日暑いのに、海底の中はどうやら例年よりも水温が低いというから自然とは不思議なものだ。表面水温と海底水温とではかなりの温度差があるようだ。その影響かどうかは確かではないが、釣れる時期に釣れる魚が釣れなかったり、釣れなくなるはずの魚が釣れ続いたり今年の海の中は予測がつかない。漁師さんたちの話を聞くと「今年は魚が1ヶ月遅れとる」といった。

四国は各地でグレ好調

 そんな中、東レカップ・グレ2000・中四国大会が7月16日、愛媛県宇和島市日振島周辺の磯で開催された。前日の15日は、中四国の東レフィールドスタッフだけの予選会が行われることとなっており、私も予選に出場するため14日夜に現地入りした。日振島には各種の大会などで何度となく訪れてはいるが、7月に釣行するのは初めてだ。こんなに暑いのにグレは釣れるのか。釣れてもコッパグレだけではないのか。不安がよぎる。自らの予選会出場と一般大会の運営スタッフとしての役割もあるので来てはみたものの、プライベートなら何もわざわざこんな時期に来ないだろうと思いながらも、船長に最近の釣況を尋ねてみた。すると思いもよらぬ答えが返ってきた。「グレは好調ですよ。型も40オーバーがけっこう混じります」と返ってきた。「よーし!。これなら期待がもてる」と気合いが入る。

どうしても手に入れたい全国キップ

 予選会に出場したのは、中四国の東レ・フィールドスタッフ18人。抽選により2人1組になって番号の若い順番から渡礁する。私は鳥取県東伯郡の広瀬清美さんと3番目におりることになった。第1ラウンドは日振本島6番近くの「門」。ジャンケンに勝った広瀬さんが沖に向かって右側を選択し、私は6番寄りの小高い位置に足場をとり午前6時頃から釣り始めた。今回の検量規定は23センチ以上のグレ10匹の総重量。18人の内、上位2人が全国キップを手にすることができる。一般大会に比べればかなりの高確率ではあるが、何せ実績と経験を持った強者たちばかり、ここで上位を獲得するには並大抵のことではない。ありとあらゆる条件がそろい運も身方にできなければ勝つことが出来ないものだ。私は最近の釣況情報から「40センチオーバーをキープできなければ全国はない」と、最初から型狙いに絞った釣りイメージを描いていた。今年私は、目標にしていた大会でことごとく全国キップを失っていたので、このキップはどうしても手に入れたい。今年最後のチャンスだ。

セオリーが裏目に出ることもある

 図の仕掛けをウキ下2.5ヒロ~3ヒロに設定してまずはセオリーどおり足下から攻めてみる。しかしすぐにキタマクラやコッパグレが撒き餌に姿を見せはじめた。ウキ下を浅くして規定前後のグレを釣るのは簡単なことだが、これでは勝負にならない。すぐに遠投に切り替えた。撒き餌はサラシの根本に打ち込んでおいて、仕掛けをはるか沖に遠投し、良型が出そうな距離とタナを探り込む。このような型狙いの釣りイメージでは、グレ釣りのセオリーである撒き餌と付け餌の同調が、必ずしもよい結果をもたらすとは限らない。日振島でのパターンとしては、むしろ撒き餌のオキアミや配合エサの粒など固形物がとどかなくて、撒き餌のエキスや臭いだけが、かすかに効いているようなピンポイントで大型がヒットしてくることが多いように思う。潮の流れをよく読んで、平面でいうと足場からどの距離でヒットしてくるのか、断面でいうと海面からどの深さでヒットしてくるのかを立体的にイメージして釣り込んでいく。撒き餌と近すぎると餌取りやコッパグレの餌食になるし、離れすぎると何にも見向きもしないし、まさにピンポイントを探り当てるようなイメージだ。数よりも型を狙わなくてはならない現代のトーナメントでは、セオリーだけでは勝ち上がれないことも知っていなければならない。

磯替わりに賭ける

 「門」では、40センチどころか25センチが精一杯だ。距離、タナ、方向と、できる限り広範囲に攻めてみるが、規定サイズの23センチから25センチを20匹ほどキープして磯替わりの9時が来た。ルールでは、必ず9時の磯替わりで前・後半の組と磯を入れ代わらなければならない。私たちは3番目になので、さらに番手の多い方向に磯替わりするはずだ。
「この磯代わりに賭けよう」。
 1番目が日振の9番へ。2番目が12番へ。私たち3番目は良型口太グレが期待できる地の1番から13番までの大きなワンドに入ってきた。「いいぞ、いいぞ」。期待に踊っていると船は「四角」にホースヘッドを向けた。「よし、いける」。「四角」は初めて上がる磯だが、5月下旬に開催されたマルキューカップグレ中国予選で、同じクラブのメンバーが渡礁して優勝したポイントだ。クラブの勉強会でこのときの状況を聞いているので、だいたいの様子はつかんでいる。今度は私にポイントの選択権があるので、私は水深のある東側の船付けをポイントに選んだ。すぐに撒き餌を入れてみるが、ここはわりと餌取りが少ない。驚いたことにコッパグレの姿もほとんど見あたらない。やがて止まっていた潮が動き出した。潮は私の釣り座に対し左沖から突っ込んでくる。ポイントの前方には頭を出した瀬が大きく立ちはだかる。おまけに風は潮とほぼ同じ方向から吹いてくるので、沖を流そうとしても道糸がすぐに前方の瀬に当たってしまい、ヒットポイントに付け餌を長らくキープすることができない。そこでひらめいたのは、サラシを利用するということ。前方にある瀬にうねりがあたってサラシがでる。潮流とサラシの接点は潮目となり絶好のポイントだ。よいとは分かっているが非常に釣りにくい。この潮目を狙うには、前方の瀬をまたいで向こう沖に仕掛けを流さなくてはならない。道糸を瀬にくわれてしまわないか。グレをヒットさせても取り込むことができるだろうか。非常にリスクも多い。

サラシを利用したピンポイント釣法

 図のように左前方沖に30メートルほど遠投し、余分な道糸を巻き取りながら付け餌をなじませる。次に正面の瀬からできるサラシにウキをぶつけるようにコントロールする。撒き餌はウキを追わずに、あえてこのサラシから潮目に効くように瀬の向こうに打った。すると仕掛けはサラシに押されてほんの一瞬潮目にとどまった。道糸が瀬にひっかかるぎりぎりまで仕掛けを送り込むと竹下ウキがジワジワッと入っていった。「アタリだ」。糸フケをとりながらカチッと合わせると確かな手応え。すぐに良型だと分かる重量感だ。ヒットさせた位置が位置だけに取り込みがうまくできるか心配だ。余分な糸を出さずに竿の角度を注意しながら耐えていると、グレは左側の深みに逃げてくれた。竿の角度を保ってやや強引に足下まで寄せると間違いなく40センチーオーバーであることを確認し慎重に取り込んだ。この釣りパターンが的中して次々に良型グレがヒットしてくる。やはり「四角」は型がいい。納竿の午後1時までに35センチ~45センチのグレをに7匹キープ。「よし、これで勝負になるぞ」と、検量を楽しみに船に乗り込んだ。
 検量の結果私は、10匹で7,650グラムを釣って2位となり、念願の東レカップグレ2000の全国キップを手に入れた。優勝したのは、G杯チヌやJFTグレなど各種大会で上位入賞の実績を持つ吉田賢一郎さん(岡山県)が10匹で8キロを釣って実力を見せつけた。吉田さんは「日振の9番」と横島の「ニシバエ」での釣果。特に「ニシバエ」では50センチ近い良型をキープし優勝を不動のものにした。全国大会は12月、大分県鶴見の磯である。ロイヤルカップが開催される磯として知られているが、釣行するのは初めてだ。また新しい目標ができて、秋のシーズンを迎えるのが楽しみである。

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