サラシ、風を味方につける寒グレ攻略法
2000年ミレニアム(千年紀)の初釣りはいかがでしたか。私は、例年の釣行パターンでいけば新しい時代の年明けを離島の男女群島で迎えるはずでしたが、地元のさまざまなイベント参加のためあえなくごく一般的な正月を過ごすことになりました。皮肉なもので年末年始の天候は温暖で穏やか。グレの喰いも例年になく活発だったようで、男女帰りの釣友たちからは「60センチオーバーを釣った」、「クーラーに入りきらんかった」などと、うらやましいやら、悔しいやらの報告が返ってきます。
私の初釣りは新年から八日も経った山口県徳山湾からスタートしました。G杯チヌ中国予選決勝大会の下見にわざわざ出かけたのですが、結果はボウズ。嫌なスタートを切った1月18日、決勝大会の本番。1回戦を難なく勝ち上がるも出場を決める最終戦で両者チヌの釣果なし。結果はジャンケンで負けてしまいました。G杯出場のかかったジャンケンですからしびれにしびれ、気合いが入りましたが、非常に残念な結果に終わってしまいました。ジャンケンに負けたことよりもなぜ1匹が釣れなかったのか・・・。反省するところも多く、ほろ苦いスタートとなりました。
そんな年明けを迎えた私ですが、年末には久しぶりに隠岐へ釣行し寒グレ釣りを思う存分堪能しました。今シーズンの隠岐はグレの良型が好調で、40センチオーバーが数多くあがっています。この釣行から、水温が下がってからの寒グレ攻略法を私なりにイメージしてみます。
寒グレシーズンの山陰地方の海と言えば北西の季節風が吹き、シケ模様の日が多くなります。この寒波の合間を縫うようにして釣行しなければならないわけですが、山陰地方の波は、風が落ちてもうねりとなって打ち寄せます。磯の状況はいたるところから大きなサラシができ、足下はまっ白になってその流れは沖合にのびていきます。そして釣りには切っても切れない風。私がホームグランドにする隠岐や島根半島の磯で寒グレを攻略するには、まずこの二つの状況を頭にたたき込み釣りイメージを作っていくことから始まります。水温が下がってくると通常グレが喰ってくるタナはどんどん深くなります。特にこの地方のように潮流が穏やかで干満の差が小さい海域のグレは、撒きエサを撒いても上層に浮いてきにくいように思います。従って水温が18度の時にはウキ下2ヒロ、3ヒロでヒットしていたグレも、水温が14度まで下がると6ヒロ、7ヒロと深棚になっていくことが多くなります。仕掛け、釣り方のイメージは、強いサラシ、強い風、プラス潮流を克服し、コンスタントに6ヒロ、7ヒロの深いタナに付け餌を送り込むことを考えなければなりません。
仕掛けは図を参照してください。ここでは私がトーナメントなどで使用するものとはずいぶん異なります。ウキは2B以上の浮力があるものを使い、思い切ったガン玉使いをします。このガン玉を有効的に使用することでサラシ、風を攻略し深棚のグレをも攻略するカギとなるのです。ガン玉の大きさや位置はサラシの大きさ、風の強さや向きなど状況によって異なりますが、ハリス3ヒロの中に2段から3段に分けて打ちます。1点に大きなオモリを打つよりも、分散した方がハリスのなじみがよくトラブルも少なくなります。位置はウキの下30センチのハリスの部分に1個、さらに矢引きほどハリ側に1個付けてハリス2ヒロ部分には何も付けないことが最も多いパターンです。この2ヒロ部分をふかせることによってグレに誘いをかけるのです。全体の潮が速く底潮も流れがあり付け餌が落ち着かないようであれば、この2ヒロの部分にもガン玉を追加する場合もあります。状況は1日のうちにも刻一刻と変化していきます。ガン玉のサイズ、位置、個数を増やしたり減らしたりいろいろなパターンにチャレンジすることが大切です。その他仕掛けで注意する点はウキと道糸との接点です。私の場合はスナップ付きサルカンの16号またはFujiのSicラインスイベル1.0号を使って道糸の滑りを良くしています。ウキ止めには最近からアユ釣り用に市販されている目印糸を使用しています。素材が柔らかく道糸を傷つけにくく締まりも良いことと、ULガイドの通りもスムーズです。
寒グレのポイント設定は、水深のある潮止まりや潮目を徹底的に攻めます。具体的にはサラシの先端やその脇でできた潮目やよれが狙い目で、この部分はサラシの白い泡の流れが潮流や波、風とぶつかり合って海底に潜り込む流れを作ります。この流れを利用して深棚に潜むグレに撒き餌と付け餌を送り込むイメージです。またこの流れは、撒き餌と付け餌を同調させてくれる流れでもあります。
仕掛けの流し方は、自分が設定したグレのヒットポイントで、確実にタナが取れているかどうかに注意します。サラシの流れをよく読んで前述した潜り込む流れを早く見つ出し利用することが大切です。風やサラシに道糸が取られないように修正しながら流すことも必要です。私の場合はハリスの部分がなじむまで張り気味にし、なじんだのを見計らってやや多めの道糸を送り込み遊動部分を一気に落とすようにしています。ウキの頭が押さえ込まれ、なじんだことを知らせますので、その後余分な道糸を巻き取りウキが数十センチ押さえ込まれるくらい引き戻します。これはハリスが先行するように修正するためです。アタリが出るまでにこの作業を何度も繰り返します。アタリを待つときはあまり強い張りはかけません。どちらかというとウキに任せて流し込むイメージです。そのためには竿先から少し遊びの道糸を取っておくと良いでしょう。アタリが出れば竿先をウキの方へ向けて道糸が張るのを待って十分に食い込ませます。張りが強すぎるとグレが付け餌を離してしまうことが多いようです。海の状況をよく把握し、糸を張らず緩めずの感覚を自分なりにつかんでください。
ここでもう一つ注意することはサラシの流れに惑わされないことです。白く勢いよく流れるサラシの上の流れに惑わされてはいけません。グレが潜む6ヒロ、7ヒロのタナではそれほど流れがないことが多く、上層と下層の流れはかなり違います。ここでのガン玉使いは上層のサラシの流れを突破し、下層の本来の流れを釣るためです。ハリス2ヒロを完全フカセにするのも、さほど流れのない下層の潮を釣るためです。
最後にマキエですが、やはり比重のあるものを混ぜることが重要です。オキアミ生6キロを用意し、半分を細かく砕いて半分を粒のまま使います。強弱複雑な流れをするサラシに対し、まんべんなく効果を出すためです。これにマルキューのグレパワースペシャルを混ぜます。強風などでまとまりが必要の場合はグレパワー遠投を携帯します。
また、深棚攻略で私がよく使う方法にマイナスウキを使った沈め釣りやスルスル釣りがあります。年末の隠岐釣行でも何度か試してみましたが、私にはどうしても状況とイメージがマッチしませんでした。私の釣りイメージとしてこれらの釣法は、魚の活性が比較的よいときに効果が出るように思います。トーナメントでは状況がどうあれ最先端の釣法を駆使しがちですが、山陰地方の寒グレ釣りは、グレ釣りの基本に戻れるときなのかもしれません。