小島一文の
“G1フィッシング”

G1フィッシング

これからでも遅くない隠岐のノッコミチヌ

 みなさんゴールデンウィークの釣りはいかがでしたか。今年のゴールデンウイークは曜日の組み合わせがよく多い人では9連休、10連休なんて人もあったのではなかろうか。そしてこの時期、山陰地方は天気も安定し水温も上昇、磯釣りのゴールデンシーズンはさあ、これからである。

10年前はだれもいなかった

 私のここ数年の釣行パターンは、4月上旬から隠岐島前方面のノッコミチヌ狙いに絞られる。今年も4月8日、9日の山陰峯友会の大会にあわせて隠岐島前へ釣行した。釣果は後ほど紹介するとして、今年の内海はここ数年とはちょっと様子が違う。それは海藻の発育が大変よいことである。よいと言っても過去3年間が暖冬などの影響で海藻の生育が悪かったからで、むしろ私が本格的に島前の内海を開拓しだした10年前の状況に戻ったという感じだ。その風景はなんだか懐かしささえ感じる。
 当時内海の磯にはほとんど人影がなく、閉ざされた感じで淋しくさえ思えた。また、渡礁する時期も島根半島などで十分ノッコミチヌを堪能したゴールデンウィーク後半か開けてから本格的に釣行したものだ。渡船はマダイやグレ狙いの外海を目指した釣り人で賑わい、そんな釣り人をかき分けながら内海に独りポツリと降ろしてもらっていたことを思い出す。

4月上旬-中旬、今年はまだ早い

 さて今シーズン初めての隠岐島前釣行となった前述の山陰峯友会大会であるが、全体の結果は型、数ともに上出来であった。最長寸が54センチで数は15人の参加者全員に何がしかの形でチヌの釣果をもたらした。1人の最高釣果は5匹にとどまったが、過去何度となく隠岐島前で大会を開催している山陰峯友会でも参加者全員安打は初めてのことではなかろうか。やはり隠岐の実力を見せつけたと言ったところだ。そして1日目に渡礁して実績のあったポイントへ初日釣果のなかった会員を優先的に渡礁させるなど、大会とは言え技術交流と親睦をかねた大会だけに、チームワークのたまものと言ってもよい。
 このように大会は天候にも恵まれて大成功に終わったのだが、私がこの2日間の釣りで感じたことは「まだ早い」ということである。まだチヌのノッコミ時期には早いと言うことである。海面水温は11度から12度くらい。島根半島よりも1,2度低く昨年同時期に比べても1,2度低い。今年の冬は積雪も多くここ数年よりも厳しい冬であった。そして前述しているように海藻の生育も非常によい。今大会で釣果が集中したのは養殖筏がある日の津港の周辺だけに限られたが、初日私と釣友2人は西ノ島側にも偵察に入った。雉が鼻から扇子、峯竹さん辺りに渡船をすすめてみたが、かなり沖合の深いところから海藻が密生していて船さえ磯に近づけることができなかった。仕方がないので船を戻し文鰐窟対岸の文鰐窟ウラという昨年好調だった磯を試してみた。しかしどうだろうチヌどころか魚らしい魚の気配が全くなかった。2人で半日大量の撒き餌と仕掛け投入を繰り返したが、1度もウキにアタリがなく、付け餌も取られることがほとんどなかった。「まだ早い」。
 これまでの経験とデーターからこのままで終わるとは考えがたい。むしろ本来のノッコミ時期に戻ったという感じである。ズバリ狙い目は、この号が発売される5月中旬から下旬がチヌのノッコミのピークではなかろうか。隠岐島後なら6月下旬まで狙える。

ここ数年不調だった磯が狙い目

 狙うポイントは、過去に実績がありながらここ数年不調だった磯が狙い目である。例えば海士側の中ノ島では、小三郎、堤鼻、堤ウラ、奥座敷、須賀鼻、居島など。西ノ島では、峯竹さん、扇子、雉が鼻周辺、まんじゅう、タキビ周辺などである。水温が上がってこれば海藻が回復したこれらの磯には、必ずチヌが産卵のために戻ってくるはずである。
 ポイントの設定は、必ずしも水深の深いところにこだわらず風や潮など自然条件をうまく利用しながらチヌを喰わせるヒットポイントを設定することである。内海のほとんどは、左右に歩いて移動できる場所が多い。風をできるだけ背にするように、また、できるだけ撒きエサと付け餌が長らく同調させやすい条件で仕掛けを流せるように足場を選ぶことである。

「チヌは底狙い」水深は3mもあれば十分

 また、「チヌは底狙い」というと水深が5ヒロも6ヒロもある深いポイントを設定しがちであるがそうではない。その反対に「チヌを浮かせて釣る」というと5ヒロも6ヒロもある中層を狙うのだと思いがちだが、ここで私がイメージするのはそうではない。チヌの習性からチヌは海底にあるエサを補食することが多い。そんなチヌに警戒されずに付け餌を喰わすには、やはり付け餌と撒きエサを海底に運び込むことをイメージする。だから状況に応じては、水深が2ヒロから3ヒロしかないような底が青白く透けて見えるようなところでもポイントになるわけで、チヌは海底をはうようにして水深の浅い場所にも入り込んでくる(浮いてくる)と私はイメージしている。私の場合、この時期隠岐島前内海のチヌ狙いは、狙うポイントの水深に応じていつも底狙いである。ウキ下は2ヒロの時もあれば8ヒロ以上の時もある。例えば6ヒロで底狙いをしていたが、餌取りが多くて付け餌がもたない。こういう場合はカケアガリ手前の水深3ヒロ地点にポイントを切り替えたり、さらにワンドの奥の水深3ヒロ地点まで移動して攻めてみたりするとよい。このときは当然6ヒロのウキ下を3ヒロまで浅くし、海底に照準を合わせる。

ハリス2号でトータルバランスを考える

 仕掛けで注意する点は糸の号数。チヌ狙いだからといって細仕掛けは痛い目にあう。特に今年は藻が多いので、掛けたチヌのほとんどが藻に入り込んでしまう。ここ数年、なんなく切れていた藻も今年は発育がよく、そう簡単に切れてくれない。自己記録更新を狙うならハリスは2号をおすすめする。また、道糸は横潮の多い内海の釣りで風などの影響を考えると細ければ細いほど良いが、それでも2号が限度だろう。私はこの春新発売された東レ・銀鱗スパーストロングSSチヌを使用している。この道糸は巻きぐせがほとんどなく仕掛けの飛び、操作性が非常によい。100m巻きだがチヌ狙いには十分で強度も申し分ない。ハリはハリス2号とのトータルバランスを考えて単軸・太軸のものを選ぶ。私は、がまかつのふかせチヌ、競技チヌの3号~5号を使用している。大きなハリを使う理由は付け餌に使うオキアミのサイズがLLだからで、2匹抱き合わせに付けて大きく見せるようにしている。ハリの色は通常オキアミカラー、フグやカワハギなどの餌取りが多ければ白を使用する。

チヌの力を利用して藻から脱出

 藻に逃げ込んだチヌを取り込む方法は、チヌの力を逆にうまく利用するとよい。藻にせかってこれ以上よってこないようなら、糸を徐々に緩めてもう一度チヌに引っ張らせる。沖に逃げるチヌの方向をよく見て藻と道糸との接点に角度ができるように竿を操作して、ある程度沖に走らせたらもう一度寄せてくる。この繰り返しで藻を切りうまく取り込みまでもっていく。最初に、藻にひっかかったからといって強引に引っ張ると、ハリが外れたりチヌの体力を消耗しすぎてチヌの力を利用することができないので注意が必要だ。

遠投自在な撒きエサをたっぷりと

 撒きエサは量を十分に用意したい。また配合エサをうまくブレンドして遠投ができるようにしておくことも重要で、撒きエサと仕掛けの遠投力が内海の釣りを左右すると言ってもよい。この遠投力があればこそ、まだだれも攻めていない秘密のポイントを開拓できることにもなる。
 最近の私の配合パターンは、半日分としてオキアミ生3キロ~6キロ+チヌパワームギ1袋(マルキュー)+オカラだんご1袋(マルキュー)+チヌドリップ1袋(マルキュー)である。この配合は比重があり底狙いをイメージしたものであり、遠投も可能である。付け餌にはオキアミ生、ボイル、くわせオキアミスパーハードL(マルキュー)で、この3種類は必ず用意している。量は、1日の釣りはじめや他の釣り人が磯あがりした気配がない場所などで、最初にチヌを寄せる場合は多めに用意し、最初の1時間から2時間、チヌのアタリが出るまでは、大量に途切れなく撒き餌を入れるようにしている。

 さあ、このコーナーを読んでからでもまだ遅くありません。G1なビックワンを狙って再度挑戦してみましょう。

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