小島一文の
“G1フィッシング”

G1フィッシング

離島の夜釣りは太仕掛けで真っ向勝負

「デ、デカイッすねー」。同行の石橋淳一くん(平田市)が思わず叫んだ。2月10日、男女群島男島「五郎」午前7時5分のことである。今シーズン私のビッグ1になった尾長グレはジャスト60センチあった。釣り上げたばかりでまだ潮滴がしたたり落ちる巨グレは、朝日のシルエットとなって彼の目にどのように映ったのだろうか。私は体全身でその重量感を感じながらなんとも言えない充実感に酔いしれた。
 この時の私の仕掛けは、がま磯スパーインテッサ3号遠征、大型スピニングリールに道糸東レ・ミラクルハンド10号を150m、ハリス東レ・Lハード10号を2ヒロ、ハリがまかつふかせマダイ11号、竹下ウキ8B、ガン玉3B2個である。
 この時の釣りイメージはポイント図を参照。潮まわりは満月の大潮。午前4時頃に干潮をむかえていたので、釣り座を満潮時には水没していた低い箇所に移動してアタリを待った。潮の雰囲気から本流筋を狙いたくなる状況ではあったが、夜釣り・・・・マズメだということで磯際にこだわった。磯にあたってはね上がる本流の引かれ潮とサラシの壁を利用して、仕掛けと撒きエサを磯際にキープするイメージである。
仕掛けは最先端のグレ釣り仕掛けからは想像もできないような太く重たい仕掛けではあるが、私は男女群島の夜釣りと朝マズメをAM8時までと自分に言い聞かせてこの仕掛けを通す。この時のビッグ1はまさにイメージどおりに仕留めた私がいうところのG1(価値ある)な1匹となった。 今月は、離島夜釣り(マズメ)のグレ釣りについて、私の釣りイメージを展開してみよう。

太仕掛けへのこだわり
 グレ釣り師にとって60センチ超のグレを仕留めることは、あこがれであり夢なのであるが、これを「夜釣りの太掛けでとっては何の価値もない、掛けたらとって当たり前」という人もあろう。しかし私たちのレベルでは、まずこの夢のようなグレを実際に自分の手にするということが最重要であると思う。まずはこの手にその重量感。まずはこの目にその姿を焼き付けてほしい。そしてその感動を味わってほしい。そのための太仕掛けである。
年に1、2回の釣行で、あるかないかのほんのわずかなビッグ1のアタリを逃すわけにはいかない。
中途半端な仕掛けは禁物で、私は離島の夜釣り、マズメ狙いは前述の仕掛けから細く落とすことはない。逆にハリス12号、ハリ12号まで上げていく。中には12号ハリスをいとも簡単にブッチ切っていくヤツもいて、何度も痛い目にあっている。チモト補強にケプラーを使用する場合もあるが、硬いハリスと柔らかいケプラーとの相違違和感から、今シーズンはハリスにハリ直付けだけでやってみた。10号以上のハリスをハリに直接結ぶには、ちょっとしたコツが必要である。(結び方は別図参照)
 そしてこれだけの太仕掛けが3号竿でもつのかと思われる方もあるだろうが、私が使う「がま磯スーパーインテッサ」は別格だ。適合ハリスの上限が8号と表示されているものの私が使った感触では、上限を12号まで上げても十分絶えられるだけのパワーを持ち合わせている。穂先の感度、胴の粘り腰、元竿の強度、全体のバランスと反発力の強さといい文句のつけようがない。10号以上のハリスで竿の角度さえ保てれば60センチの尾長グレもアッという間に浮いてくる。軽量で持ちオモリしないのもいい。この竿以外なら4号以上の号数をおすすめする。

感度重視のこだわりをすててまずはタナのキープと付け餌の安定を考える
 私が離島の夜釣りで重要視している一つにタナのキープがある。トラブルが少ないシンプルな仕掛け設定はいうまでもないが、いつでも自分が設定したタナが確実にキープできて容易にウキ下変更が可能な仕掛けがよい。だからサラシや潮の流れが速い場合などは、オモリ負荷の大きいウキを使い、思い切ったガン玉使いをする。付け餌を安定させるためには水中ウキなども採用している。いつもこの連載で紹介しているグレ釣りイメージとは全く逆の発想をしているようだが、長丁場になる離島の夜釣りでは、小細工せずに基本にもどり集中力が長らく持続できる仕掛け設定が重要だ。離島の夜釣りでスルスル釣りや沈め釣りをすることはまずない。比較的波が穏やかで潮の流れが緩いワンドの中などを狙う場合でも、オモリ負荷の大きいウキを使うことが多い。ハリスに打つガン玉も2B以上を2個使用する。ハリスの長さは取り込みのことも考えて2ヒロ以内にし、ハリから上1ヒロは完全ふかせにする。ガン玉はウキ寄りの半ヒロから1ヒロ内に2段うちにする。ガン玉の打つ位置と個数には訳があって、この方が仕掛けのなじみが早くハリスのトラブルが少ない。遊動部分のタナとりもスムーズで、誘いかけたときの付け餌の動きもいいようである。
 また、狙うポイントにサラシや潮の流れがそこそこにあれば、さらにオモリ負荷の大きいウキを使い、水中ウキを使用することもある。私がよく使う仕掛け設定は図のとおりであるが、1号負荷以内なら竹下ウキ、それ以上は市販の管付きウキを使用している。ケミホタルとセットで販売していた「ケミフロートN」の2号負荷を愛用していたのだが、最近は店頭で見かけなくなった。管付きウキも20センチ以上の長いタイプはバランスが悪くトラブルが多いので使わない。水中ウキは1号から2号のものをよく使う。 オモリ負荷の大きいウキを使うもう一つの理由に、道糸、ハリスともに10号以上ともなると糸自体にかなりの重量があり、さらにこれが風や波の影響を受けてウキにかける負荷は相当なものだと考える。この太糸仕掛けを狙ったポイントへコンスタントに流し込むには、ウキから下の仕掛け設定を思い切って重たくするとが必要だ。
 釣りはじめは、遊動部分を1ヒロ(ハリスの長さによって異なる)とってトータル3ヒロくらいから釣りはじめる。アタリがなく付け餌が盗られなければ、どんどんウキ下を深くしてゆき、ウキに変化もなく付け餌が盗られるようなら浅くする。狙うタナは1ヒロから8ヒロくらいまで幅広く探る。餌盗りでもウキにきちんとアタリが出るうちは、そのままのウキ下で釣り続けることが多い。
  
竿1本分の遊び糸が巨グレとの勝敗を分ける
 「磯際を流しているケミホタルがフワフワーと海中に入り込んだと思ったら、次の瞬間いきなり竿に来て、はいそれまで」というバラシは、私も過去に何度もあじわった。せっかくの太仕掛けも竿がのされてしまってはひとたまりもない。そこで重要なのは竿先からウキまでの遊び糸を常に出しておくことである。竿1本分の糸フケを常に出しておけば、ウキにアタリがあってアワセを入れたときにちょうど竿が立った状態になり、のされることはない。巨グレがヒットし、このまま竿じりを腰にあてながら角度を保ていれば、かなりの高確率で取り込むことができる。私はこの方法、仕掛けを流しているときの遊び糸だけで、グレを掛けてからはほとんど道糸を出すことなく63センチまでの尾長グレを仕留めている。糸フケを出しながら仕掛けを磯際にキープするには、ある程度のテクニックが必要だ。それは太い道糸の特長をうまく利用することにある。竿からウキまでの遊び糸の重みを利用して仕掛けをコントロールするのだ。磯の形状によっては道糸を磯にはわせたり、風で引っ張らせたりもする。太いナイロンは、ある程度腰があり細糸やPEラインのようにすぐに磯に引っかかることはない。あとは長い竿を上下左右に最大限操作し、ウキから下の状態を常に頭の中にイメージしながらアタリを待つのである。そうすることでパンパンに張った釣りイメージではなく、張らず緩めずのグレに付け餌を喰わすためのソフトな張りイメージもできるのである。ここでお分かりいただけるのは、巨グレをとるための太糸使用、オモリ負荷の大きなウキの使用、思い切ったガン玉使いや水中ウキの使用、そして遊び糸を出した仕掛けの操作とやり取り、これすべてがトータルバランスとなっていることである。

レバーブレーキは使わない
 私はレバーブレーキを使わない。何度か使おうと試してみたが、どうしても使いこなすことができなかった。自分のイメージよりも道糸を出しすぎて失敗することが多く、そのあげく、竿の角度や竿さばきまで迷いが出て自分のスタイルを崩したしまったことがあった。現時点では、リールのON・OFFの逆転とオープンべールでのフリーで対応している。そして離島の夜釣りでは、逆転の代わりにフロントドラッグを使用している。大型リールの逆転はハンドルのトルクが大きく非常に危険だ。夜釣りで身の動きが制限される中で操作を少しでも誤れば、指の骨を折るなどの大けがをしかねないので注意が必要だ。フロントドラッグの調整はある程度の経験が必要だが、自分の使う竿の限界を知り、限界の一歩手前でジリジリと道糸が出るように調整すること。この調整は陸の上でもできるので、普段から自分の使う竿とリールの相性をチェックした上で、体に覚え込ませておく必要がある。そうすることでどこでも正確にセットできるようになる。もちろんアタリを待つときは、常にリールはオープンベールの状態にしておく。糸が太いだけに、万が一魚に引きずり込まれないための身の安全のためでもある。離島を甘く見てはいけない。

巨グレは思わぬところに潜む
 夜釣りのポイント設定だが、これが意外にも昼間には見向きもしなかった場所で巨グレがヒットしてくることが多い。特に産卵時期の夜の尾長グレは水深が浅く、あまり潮通しのないところを好んで回遊するようである。それも磯際や瀬伝いに入ってくるといわれている。だから釣り座は、ハナレ瀬や出鼻なら沖向きよりも大きな島の水道筋や灘向きを狙う。そしてどの磯でもワンドがあれば見逃してはいけない。大きなワンドなどは自分の釣り座の対岸も絶好のポイントになる。ゴロタ石の多い浅瀬などは磯際にこだわることなく仕掛けを流してみてもおもしろい。

 2月11日、「デ、デカイなー」「ハ、ハイ、デカイッスねー」今度は石橋くんと二人で叫んだ。同じツアーの釣り人が65センチの尾長グレを釣り上げていたのである。60センチを越えてからのグレは、1センチ、1センチ大きくなるにつれてその迫力はすごいものがある。体高と幅が、私が釣ったグレとは比べもにならない。男女群島をはじめ離島には、70センチ超のグレも潜んでいるというから、その夢はまだまだ果てしない。

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