小島一文の
“G1フィッシング”

G1フィッシング

G1フィッシング連載スタート!

平成7年5月号 大社沖防波堤でチヌ釣り

 仕事柄、年度末の3月は何だか慌ただしくなかなか釣行予定が立てにくい。休日でも地域やPTAなどの会合や行事に時間を取られるものだ。

 3月15日土曜日久しぶりにフリーになった。早速、釣友に情報を訪ねると大社湾でチヌが好調とのこと。天気予報は北東の風が強く時化模様の予報を出しているが、大社湾は風裏になるためむしろ好条件となる。ポイントは毎年この時期に実績を出している「第2沖防波堤」に決定した。

 今回同行してくれたのは情報を提供してくれた出雲市の勝部博文君、同市の佐藤勝典さん。佐藤さんと一緒に釣行するのは今回が初めてだが、話をしてみれば高校の先輩と言うことで、すぐに意気投合。釣りを通してしての人との出会いも釣りの楽しみの一つだ。

 「第2沖防波堤」は勝部君が得意とするポイントの一つだ。ここは渡船がないので、勝部君たちは共同で手漕ぎのボートを購入するほどの熱の入れようである。当日はこのボートに便乗させてもらった。

 この時期のチヌ釣りは午後に時合いが到来することが多いので、この日は午後からの釣行となった。正午過ぎに到着すると既に南東端に2人、北西端に2人竿を出していた。私たちは実績のある北西側に向かった。ここでは過去にもチヌを釣り上げたことがある。テトラの先端には先客がいるので、少し内側のテトラに足場を決めて、三瓶山向きに竿を出すことにした。この方向は追い風で釣りやすい。

 図のような仕掛けをセット。仕掛けにはなるべく余分なものを付けずにシンプルになるように心がけている。
 チヌ釣りは底近くを攻めることが多いことから、遊動部分がスムーズに行き、自分が設定した棚がちゃんと獲れているかどうかが釣果を左右する。ウキと道糸のジョイント部分には市販のFujiから出している「sicラインスイベル1.0」を使用している。通し穴は0.7ミリと1.0ミリがあるが大きい方がより通りがいいように思う。これはなかなかの優れものでほとんどトラブルがない。

 通し穴が大きければウキ止めにも工夫が必要だ。図のように1.5号のフロロカーボンハリスを20センチほど使って作る。締めるときにはつばを付けて滑りをよくすると道糸を痛めない。2本の糸を同時に締めないとうまくできない。私はウキ止め糸を歯でかんで、道糸の方を両手でピーンと引っ張り加減にしてゆっくり締め込むようにしている。また、耳を長めにカットする理由は、ウキが確実に止まることと、棚を深く取ったときにウキ止めをリールに撒き込むと投げたときに糸が引っかかって飛びを妨げるが、この方法だと糸はスムーズに出て行く。私はどんな釣りでもこの方法でやっている。ゆるみも少なく棚の変更も容易に出来てトラブルが無い。

 それから今回は大きめのハリを試してみた。以前は小バリを使うことが多かったが、ハリハズレのバラシが多いことと、大きめのオキアミを2ヒキ抱き合わせて付けるのに大きいハリの方がエサが飛びにくいからである。ハリの大小だけがハリハズレの原因だとは思わないが、ノッコミチヌに関しては大きいエサで目立たせた方が釣果がいいように思う。アブミの10号というとチヌバリの4~5号に匹敵する大きさだが軸が細いのでそんなにごつく感じない。ハリス1.2号の細糸でもバランスはよく結び目に違和感はない。

 次にマキエだ。半日の量としてオキアミ生3キロにマルキューのオカラだんご2袋、チヌパワー1袋の集魚剤を混ぜる。この配合は、今回の「第2沖防波堤」もそうだが島根半島や隠岐でノッコミチヌを6ヒロ前後の棚で狙う私の釣りイメージにピッタリだ。比重がある割に杓離れがよく遠投が利く。だんご状で投入しても着水音が小さくチヌに警戒心を与えない。すぐにばらけて拡散し濁りを出す。それでいて中に配合されている比重の重たい部分がちゃんとイメージした棚までエサを運んでくれる。大切なことは自分のマキエがどのくらいの比重でどのように沈み流れるのか、自分のイメージを持って意識しておくことだ。そうしないと自然条件に応じた仕掛けのセッティングやマキエの投入点が設定できない。

 私は図のように勝部君たちよりも更に内側に足場を取って、ウキ下を4ヒロ半に設定して約15メートルほど沖に投入した。ウキ近くにマキエを5、6杯多めに打つ。潮は防波堤特有の左右に流れる潮だ。時期も時期だし少し時間を長目に流していると、ウキにアタリがないまま餌がとられている。どうやら小フグの仕業らしい。本来ウキにアタリがないまま付け餌をとられる場合は、ウキ下を浅くするのがセオリーだ。しかしこの時期のチヌは底近くを狙った方がヒットする確率が高い。最初はガン玉3Bを1個打っていたが、図のような位置に2Bを2個打って、逆にウキ下を5ヒロに深くした。これは仕掛けを張り気味にしても早くハリスをなじませる目的と、横風があるのでウキの浮力をおとして風の影響を少なくするためだ。狙うポイントは同じ15メートル付近だが、更に遠投して着水と同時に手前に引いて沖からハリスを張った状態で流し込む。5ヒロの棚設定はテトラや捨て石と砂地の境目やカケアガリの底付近をはわせるイメージだ。

 引き戻したウキの手前付近に潮流を計算して5.6杯の撒き餌を打つ。仕掛けがなじむとウキが安定するので、ここですかさず道糸修正も兼ねて誘いを入れる。
 2回ほど付けエサが残ってきたので今度は少し時間を長目に流してみた。するとウキにゆっくりアタリがでた。竿先を前に突き出すように少し送り込んでウキが視界から消えるのを待って竿を立てる。午後3時、待望のチヌは37センチあった。スーパーインテッサの反発力に応えるにはやや物足りないサイズだが、エサ取りを交わして誘いを繰り返しイメージ通りに喰わせた。まさに「G1」な1尾だ。

 今度は勝部君にアタリだ。これはいい締め込みを見せている。やはり41センチの良型に勝部君も満足そう。続いて佐藤さんも29センチを取り込んだ。この後もポツポツアタリが続いて、私が29センチから37センチを4尾、勝部君が41センチと39センチ、佐藤さんが29センチと26センチ、合計8尾の釣果で納竿した。

 今回の勝部君と佐藤さんの釣果はいずれも「ボケ」エサを使用したものだった。私も4尾のうちの後の2尾は「ボケ」エサで仕留めたもの。正直言って「ボケ」エサははじめて使用してみた。生き餌だし確かに食い込みはいいようだ。ただ気になったのは、「ボケ」エサは絶対という固定観念からか仕掛けの操作や撒き餌がルーズになりがちだ。どんなエサを使おうと基本は同じであり常に自然条件に気を配り、攻めの釣りイメージを持つことが大切だ。

 それから、エサ取りの状況に合わせて手返しのリズムを変えることだ。エサ取りが多いときは手返しのリズムを早くして、海の中に付けエサの付いた状態をいかに長くキープできるかが釣果を分ける。当たり前のことかもしれないが、以外と付けエサが無くなっている状態で流し続けていることが多い。

 エサが残っているかどうかは、誘いをかけたときの竿先から伝わる感触や、ウキに出るシグナルを意識していればだんだん分かってくるものだ。
 手返しが早くなればマキエの手数も多くなるので効率よくチヌを寄せられる。エサ取りが寄るのを恐れて、中途半端に撒くとかえってエサ取りだけの活性をよくする羽目にもなりかねない。エサを多めに用意して撒き餌を十分に撒き込みたい。
 試していたハリについても、釣れたチヌが小型だったにも関わらず、4尾ともすべてのみ込んでいた。イメージしていたとおりの結果に満足だ。今シーズンは、このハリのサイズでやってみたいと思う。

釣行日 平成9年3月15日
時間 正午から午後6時
釣り場 簸川郡大社町「第2沖防波堤」
天候 曇り時々雨
風向 北東
風力 強い
波高 0.5m
水温 14度
狙い魚 チヌ
釣果 チヌ 41.0センチ~26.0センチ
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