小島一文の
“G1フィッシング”

G1フィッシング

狙うならフカセで、隠岐はマダイの宝庫

 磯からのマダイ釣りが盛んな山陰地方。磯のターゲットとしては、全国的に人気が高いグレやチヌに劣らない。それだけ実績もあるということだ。マダイが狙えるポイントは離島の隠岐を含めて山陰海岸全域に点在する。

 マダイ釣の魅力は、ウキが入ったかと思うと一気に竿を引ったくるような強い引き。また、魚との真剣勝負の末、濃紺の海底からジワジワとピンクの魚体が見えてきたときのグレやチヌとは違ったなんとも言えぬ感動がある。
 そしてもう一つ、やはり「腐ってもタイ」だからであろうか。釣り味もさることながらマダイは祝いの魚としてみんなによろこばれ珍重される。釣り魚をお金に換算するのは、釣りに対する価値観からすれば論外だが、天然マダイとなれば時期を問わず魚市場の王様であることには変わりない。釣って良し、食べて良し、贈って良し3拍子そろっているのである。

 今年はマダイが好調だ。浜田の防波堤や隠岐の磯で90センチを超えるような大ダイが上がり話題になっているほか、まだ時期が早いというのに各地でマダイの釣果が聞かれる。今年はノッコミチヌと平行してマダイ狙いもしてみたい。本格的なシーズンに入る4月中旬ごろからは、またまた、ソワソワ、ドキドキ忙しくなりそうだ。

 この地方で磯からマダイを狙う代表的な仕掛けは「カゴ仕掛け」。カゴ仕掛けにもいろいろ工夫が凝らされ改良もされてきたが、底カゴオモリを使用した遊動仕掛け、タルカゴを使用した固定式の三点仕掛け、さらにはタルカゴ仕掛けに水中ウキを使用し遊動式にした通称「タッチャン仕掛け」なるものも開発され釣果を伸ばしている釣り人も多い。

 私がマダイを狙う場合の仕掛けは「フカセ」「G1タルカゴを使ったタッチャン仕掛け」「底カゴ」「三点」となんでもやるが、一番は「フカセ」次は「G1タッチャン」、「底カゴ」の順だろうか。「三点釣り」は私の場合、釣りイメージがタッチャンとほぼ同じなので手返しや取り込みなどデメリットを考えると最近はほとんど使用してない。前述の順番は1回の釣行の展開パターンといってもいい。最初はフカセから入って釣果がなければタッチャン、それでもダメなら底カゴと移行していく。
 その中でなんと言っても釣り味があるのは「フカセ」である。私は、条件さえ合えばマダイを狙うときであろうと「フカセ釣り」を最優先させる。あの強烈な引きの軽い仕掛けでのやり取りは、ダイレクトに体中を刺激し、離島で尾長グレに遭遇するのと引けを取らない。また、カゴ仕掛けで遠投し深みに潜むマダイをダイレクトに攻めるのもよいが、計算されたマキエワークで自分のテリトリーまでおびき出して掛けた魚の価値は大きい。いったんフカセで喰い出すと数が出ることも魅力だ。さらに同じ仕掛けに外道として何が喰いついてくるか分からない。時期や場所によってはグレやチヌ、ヒラマサ、イシダイ、スズキ、イサキと外道とは言っても豪華な顔ぶれだ。

マダイをフカセ釣で狙うにはいくつかの条件がある。

マダイは通常水深が20メートル以上の岩礁地帯を好んで生息しているが、このマダイをいかにして釣り人の手の届くところまでおびき出すかがカギになってくる。
 そこでまずポイント設定の条件は、水深は約8メートル以上、潮流が釣り座に対し沖の深みに向かって通ることである。また、同じポイントで竿出ししている他の釣り人がカゴ釣り(底カゴ・タルカゴ)をしていないことである。山陰地方の釣り場では、同じ島やポイントでカゴ釣りやフカセ釣りが混在している光景をよく見かけるが、このような状況ではどうしてもフカセ釣りは不利だ。遠投してはるか沖に撒きエサを打ち込まれてはフカセ仕掛けではお手上げ状態である。

フカセ釣りを堪能するにはやっぱり隠岐

 これらの条件をいつも満たしてくれるということになれば、ここはやはり離島の隠岐だろう。隠岐のマダイの魚影の濃さは全国的にも群を抜いており、特に磯から狙える条件としては日本有数といっても過言ではない。1回の釣行でふた桁釣りも可能で、時には1m近い化け物のようなマダイも確認されている。そして隠岐なら潮どおしの良い出鼻や離れ磯だけではなく、条件がよければ島の周囲全域がポイントであり実績がある。まだまだ未開拓のポイントも残されており、前述のカゴ釣りの釣り人と混在することなく思いのまま自分のふかせ釣りが堪能できる。特に春のノッコミシーズンはカゴ釣りが敬遠しがちな底瀬の多いポイントや比較的水深の浅いポイント、湾内のポイントなどが狙い目だ。渡船の船長とよく相談し、混雑がない自分のグループだけで竿出しできるポイント選びをすすめる。何はともあれ隠岐なら島前・島後問わず、まずはフカセでマダイを狙ってみることである。

つぎにマダイのふかせ釣りのタックルについて。

 基本的には、グレ・チヌの延長と考えて良い。私の場合は山陰地方で比較的深いタナを狙うことの多いチヌ釣りや同紙3月号で紹介した隠岐の寒グレ釣りのタックル設定が基本になっている。この仕掛けをそのまま大型マダイに対応した太仕掛けにグレードアップさせる。竿は2号以上、リールは中型のスピニング、道糸4号以上、ハリス4号以上、ハリはグレバリなら8号以上と考える。
 この地方では、マダイの魚影が濃いことからグレ釣りやチヌ釣りの外道として大型マダイが喰いついてくることもしばしばだ。釣り技術プラス幸運のおかげで細仕掛けでも大型マダイを取り込めることもあるが、やはり大型マダイをターゲットにするならそれなりの太仕掛けが必要である。

タックル

 私のマダイふかせ仕掛けは図のとおり。 竿はがま磯を愛用している。このシリーズは非常に反発力が強くカーボンの特性を偉観なく発揮し胴に乗ってからの粘り腰が持ち味だ。表示されている適合ハリスの号数以上を使用して限界近くまでためきっても、まだまだ粘り腰を発揮して魚を浮かせるパワーがある。例えば1.5号竿ではハリス3号表示までだが、5号ハリスを使用しても竿が負けることはない。このパワーを持ちながら穂先の感度は抜群で、沈め釣りのアタリをとる時など繊細な釣りにも対応してくれる。魚の引きに合わせた段階的な竿への加重移行が実にスムーズで美しいカーブを描くのも特長だ。この加重していくときの感触がなんとも言えない魚からのメッセージとして体中に伝わってくるのだ。
 道糸は東レの銀鱗スーパーストロングを使用する。しなやかでリールへのなじみもよく浮かず沈まずの比重加減もちょうどよく、グレ・チヌからマダイなどの大物釣りにも愛用している。イエローカラーで視認性がよいのもありがたい。風、波、潮などの影響からフカセ釣りでは道糸は細ければ細いほど有利と考えられているが、同号数でも従来品と比べて強度アップしていることは、九州の離島遠征などで実証済みだ。ハリスの号数が1号くらい逆転してもバランス的には問題がない。
 ハリスは東レのトヨフロンスーパーL・EXを使用する。このハリスはフロロカーボン製にしてはしなやかで巻き癖がないのが特長。強くしこかなくてもそのままセットできる。また、直結する場合に道糸のナイロンとの相性もよく結び目がきれいに仕上がるのも強度につながる。これも遠征時の尾長グレとのやり取りで根ズレに強いことは実証済みだ。
 ウキは管付きウキの竹下ウキや峯ウキを使用する。浮力はマイナス負荷から1号負荷まで使い分けるが、マダイ狙いでよく使うのは5B負荷くらいのもの。このウキをセットし、遊動部分を一気に沈めるために2Bから3Bクラスの比較的大きなガン玉を1個から3個思い切って使う。これでも対応しきれないような早い潮流の時は、逆にマイナスウキを使ってウキごと沈め込ませる沈め釣りに切り替える。どのような状況で沈め釣りに切り替えるかは数字などで明確に表現できないので難しいが、人がジョギングしているくらいのスピードになれば沈め釣りをイメージする。
 マダイ釣りの場合は、自分が設定した深棚が確実に取れるかどうで釣果を分けるといってもよい。だからウキと道糸の接点にはなるべく余分なものは付けない。私はスナップ付きサルカンの16号をそのまま使用している。これは道糸の滑りが非常によいので棚とりが早くスムーズであるためだが、もう一つ重要な役割を果す。それはマダイが喰いついて強く引くとサルカンがウキ止めを通過してウキがフリーの状態になるからである。この原理は山元八郎氏が考案したなるほど仕掛けと同様であるが、ここでは魚の食い込みのよさよりも魚が逃げるときに影響するウキの抵抗をなくすことにある。喰いついた大ダイはものすごいスピードとパワーで逃げ走るが、このときウキがウキ止めにせかって仕掛けに与える抵抗の大きさは想像以上。強いアタリに遭遇したとき、ウキ止めが何ヒロもずれていた経験がある方も多いはずだ。また、1.5号以下のハリスで大ダイやヒラマサに引かれると、道糸フリーのままウキの抵抗だけでハリスがぶっち切れてしまうことがあるほどだ。このような状況からウキがフリーになることにより仕掛けへの負担を軽減し、なるべくマダイに違和感を与えないようにする。ウキ止めの作り方は図のとおりで、端の糸をやや長めにカットすことがポイントである。そうすることでサルカンの穴とのバランスがよく棚とりが確実にでき、竿2本以上の棚とりでウキ止めをリールへ巻き込んでも投入時のトラブルがない。
 以上はあくまでも私がイメージした仕掛け設定である。

 マダイ釣りで一番大切な棚をとるということに関しては、円錐ウキなど他にもよいウキ、よい仕掛けパターンがたくさんある。例えば最近流行のハリスウキやナビを使った2段ウキ仕掛けなどは、潮に同調させやすく実に利にかなった仕掛けだと思う。また水中ウキなどを併用して確実にタナをとる方法もある。重要なのは、自分が設定したタックルを状況に応じて使いこなすことである。

撒き餌と付け餌

マダイのフカセ釣りの撒きエサは、オキアミを主体に比重のある配合エサを使用している。オキアミは時期によって生とボイルを使い分けているが、これからの春の時期には比較的餌取りが少ないので生オキアミ主体でいく。しかしボイルも必ず用意するようにしている。私の配合パターンは、昼間の6時間としてオキアミ生6キロにマルキューのチヌパワームギを1袋配合する。チヌパワームギは比重があって深いタナにも効果がある。押し麦を多く配合しているので集魚効果抜群である。この押し麦はチヌだけではなくマダイやグレ、ヒラマサなどにも効果があるようだ。押し麦は扁平な形状からきらきらと光りながら沈むので視覚的にアピールする。釣ったマダイの胃袋からは撒いた押し麦を何度も確認している。その他臭いによる集魚効果もある。魚の嗅覚は犬やネコよりもさらに何倍もよいと言われているので、配合エサを有効に使えばかなり遠く深い海底からマダイをおびき出すことができる。
 さて必ず用意すると言っていたボイルだが、ボイルは配合エサと混ぜてしまうと水分を吸い取られて撒いても海面に浮いてしまうことが多い。あげくの果てにはカモメのエサに終わってしまうのがおちだ。そこでボイルオキアミ3キロを別のバッカンに海水をたっぷり入れて浸しておくようにする。これを前述のマキエの3:1くらいの割合でパラパラ撒いてやる。原型のままなので配合エサを混ぜたほど遠投は効かないが、カップが深い柄のしっかりしたしゃくを使えば結構遠投もきくものだ。私はオキアミを原型のまま撒く場合はがまかつの「まき柄しゃく遠投」を使用している。このカップの部分は、はんだごてを使っていくつか穴を開け、海水に浸したオキアミがすくいやすいようにしている。グリップの部分にはケミホタルが装着できるようにしてあるので、夜釣りで便利だ。
 ボイルを撒く理由は、餌取りが多いときなどボイルを付け餌に使うためであるが、餌取りが少なくても潮が極端に速いときや100メートル以上流すとき、超遠投するときなどは、ハリから外れにくいボイルを使用している。このほかの付け餌としては、マルキューの「くわせオキアミスーパーハード」や「くわせオキアミ半ボイル」などエサ持ちのよい加工したものも用意している。
  撒きエサの撒き方は、足下に少量ずつ絶え間なく撒くのがよい。自分が狙う潮筋にいつも撒きエサが存在しているイメージだ。

取り込み

 マダイふかせ釣りの醍醐味はクライマックスとなる取り込みにあるといってもよい。マダイ独特のピンクの魚体が浮いてきて感動するのもこのときだ。 マダイのアタリはウキを消し込んだかと思うとアッという間に道糸が走り手元にガツンと来る。大ダイならここでとてもじゃないが止めきれるものではない。アタリを待つときは必ずリールのベールをオープンにして構える。レバーブレーキ付きやドラッグ付きのリールで道糸が出せる状態にしていても、やはりベールはオープン状態で道糸がすぐにフリーに出せるようにしておく。フリーで走らす理由は、マダイが逃げるときに余分な抵抗をかけたくないからだ。マダイは抵抗を感じ危険を察知すると海溝や底瀬などがある深みに逃げ込もうとする。このとき瀬ズレでバラシの確率が非常に高くなるからだ。

 私の場合は大ダイのアタリがあればまず道糸をフリーにし沖に走らせる。70センチ以上のマダイの走りは想像以上のスピードとパワーで、出ていく道糸は、リールのスプール付近で真っ白に見える。その糸の出が少し緩くなったときが最初にマダイの走りを止めるチャンスである。しかしこのときすぐにスプールをおこして止めるのではなく、リールを巻く手で道糸を竿ごとつかみ竿でためてみる。竿でためきれずまた、のされそうになれば、そのまま手を開放して再び道糸をフリーにしてやる。この動作を3回も繰り返せば、たいていの場合はマダイを自分の方に向けることができる。魚がこちらを向きジワッと寄って来るようであれば、このとき初めてリールのベールをおこし道糸を巻きにはいる。マダイは、逃れようと必死に全力疾走してきたのでかなりの体力を消耗しているものだが、ここで油断は禁物である。リールは常にOFF状態でいつでも逆転できるように備えておき、竿の弾力を十分活かしながら徐々に魚との距離を詰めていく。ウキが海面を切ってジワジワとゆれながらマダイの魚体が現れ、海中をピンクに染めはじめるといよいよクライマックスである。
 タモ入れは、パートナーがいればすくってもらうのが無難だが、いつも同行するとは限らないので、一人でタモ入れすることも想定する。
 一人ですくうには、タモ枠はできるだけ直径が大きく軽量で頑丈なもの、タモの柄は全長が5メートル前後の軽量で持ち重りのしないシャキッとしたものがよい。タモ枠はチタン製の1本ものに超したことはないが、直径60センチともなれば持ち運びにかさばるので、私は昌栄という会社が出している「ウルトラフレーム」の60センチ枠を使用している。この枠は超ジュラルミン製でチタンよりも軽く強度があり、4つ折りタイプだが従来の折りたたみ部分を改良しぶれや曲がりが少ない。
 タモの柄は、がま磯タモの柄スペシャル5.0メートルを使用している。夜釣りは、タモ枠にケミホタルを装着すればライトの灯りを借りなくてもすくうことができる。一人ですくうにはある程度経験が必要だが、なれてこれば人にすくってもらうよりも早く確実に取り込むことができるようになる。

 磯からのマダイフカセ釣りは、マダイの魚影の濃いこの地方の釣り人の特典といってもよい。釣りは漁ではなく趣味の世界でありゲームなのであるから、せっかくのこの特典を生かさな手はない。結果が出るまでのプロセスを楽しむために、フカセでマダイ釣りの魅力を堪能してほしい。

釣り方(実釣から)

 そこで実釣例として平成11年5月上旬にあの三原マジックでおなじみのグレ釣り名人三原健作氏と隠岐島前・西ノ島の冠島へ釣行した時を実況してみたい。この様子は平成11年7月号にも掲載しているが、フカセでマダイの数釣りができた。
 ポイント図を参照していただきたい。この日は午前6時の渡礁。晴天で海も穏やかな絶好のコンデション。潮は釣り座から正面を向いて左から右へゆっくりと流れていた。足下からは正面に向かってサラシが出て、その潮とぶつかって潮目ができている。まずはその潮目から狙ってみる。仕掛けは基本の遊動仕掛けでハリからウキ止めまでを6ヒロ取り最初はオキアミ生を付け餌にして流してみた。
 一方、三原氏は円錐ウキの三原ウキにハリスウキをセットした2段ウキ仕掛けで私と同じポイントを流した。ハリスウキのすぐ下にジンタンの5号をセットしてあり、浮力調整し仕掛けがなじむとナビがタナとりの役目をするようだ。一見、私の管付きウキ仕掛けと円錐・ハリスウキを使った2段ウキ仕掛けとでは、全く違う状況で違うターゲットの魚を狙っているように見えるが、三原氏と私は同じ条件のポイントを攻めるのに、各々の釣りイメージで仕掛け設定した。
 さて結果はどうだろう。私の仕掛けは潮目になじむと1投目からアタリが出た。40センチ級のマダイがヒットしてきた。そして続けて2投目も同じサイズがヒットしてきた。私よりも少し遅れて投入した三原氏にもやはり潮目に仕掛けがなじむとウキが入り道糸が走った。型は小さいがマダイの入れ食い競演である。
 たとえ仕掛け設定は違っていても、それぞれの仕掛けを使いこなすことによって、同じ条件を釣りこなすことができるというよい例である。
 午前8時を過ぎると左から右へ流れていた潮が速度を増してきた。弱いサラシを押しのけて磯の鼻をかすめ小森方面に回り込む。潮は足下の磯に当たって反転流となり小さな渦を巻くほどだ。私がイメージする沈め釣りの目安であるジョギングするくらいのスピードを超えたように見えた。こうなるといままでの私の基本パターンの仕掛けではイメージどおりに棚になじんでくれなくなる。糸を出しすぎると道糸が取られ過ぎて潮筋から外れてしまうし、糸を張りすぎると遊動部分が取れずに仕掛けが浮いてしまう。ここでまず私が考えるのは、そのままの仕掛けにガン玉を追加してウキの浮力をころし、なじむとウキが沈み込むように設定する。こうしてやや張り気味に流せば仕掛けはどんどん深く潜っていく。アタリは道糸の走りや竿先でとる。マダイのアタリは強く明確に出るので喰いつけば竿が引ったくられる。しかしこの仕掛けにも限界がある。オモリの設定が微妙で重たすぎるとマダイのタナを通過してしまうし、軽すぎると十分にタナになじまなかったりする。特に今回のように渦を巻いて複雑な流れをする場合やマキエの筋に餌取りが入っている場合などは、いっそのことマイナスウキを使って最初から仕掛けを沈め込んでしまう。本流のグレ狙いなどで私がよく使う手だが、潮が速い状況でしかも複雑な流れをする場合は、マキエと同調させるのに沈め釣りは効果抜群である。

 この日もこの釣りイメージが功を奏した。ハリスには一切ガン玉を付けない完全ふかせ状態。潮筋には餌取りがちらちら見えるのでマキエの筋からやや離した位置に仕掛けを遠投してウキを沈め込む。マキエの筋に潜り込めばあとは潮に負けないようにリズムよく道糸を送り込む。7,80メートル流した地点でアタリが出た。コツコツッと前アタリがあって一気に竿が引ったくられた。大ダイとまではいかないが50センチ級がタモに収まった。フカセ釣りの場合、このサイズになれば十分引き味も堪能できる。ピンク色の魚体もきれいだ。
 さて三原氏もこの潮の変化に対応した。いままで使用していた中通しの円錐ウキから三原カスタムと呼ばれる円錐と同じ型の管付きウキを取り出した。このウキにそのままハリスウキを付けた状態で流しはじめた。ハリスウキの下には先ほどよりもやや重ためのガン玉を追加したようだ。三原氏も仕掛けがなじんで潮目や渦の中に巻き込まれるとウキごと海中に潜り込んでいく設定にしてある。三原氏は道糸のとおりがよい管付きウキの利点をここで利用したのだ。すると三原氏にも同じ地点でアタリが出た。海の状況が変わったここでも仕掛けの使いこなしと自分の釣りイメージをいかにかみ合わせることが大切なのかを実証して見せた。

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