小島一文の
“G1フィッシング”

G1フィッシング

山陰地方で競技思考の釣り大会を…

G1カップチヌ釣り大会in隠岐

山は鮮やかな緑に染まり、水辺はギラギラと太陽光が反射する。山陰地方も新緑の季節と移りゆく。特に今年は5月に入ると真夏日のような暑さに見舞われ、むしろ雨が恋しくなるような状況が続く。海や川、湖の水温もどんどん上昇してきて魚の動きも活発になるときでもある。さて、今年のゴールデンウィーク。まずまずの天候に恵まれてたくさんの釣り人が繰り出したに違いない。みなさんの釣果はいかがだっただろうか。
ゴールデンウイーク前半の4月29日、緑の日。私が会長を務める「G1トーナメントクラブ」(以下G1・TC)は、「第2回G1カップチヌ釣り大会in隠岐」を主催開催した。この大会は、山陰地方で競技思考の高い大会を開催しようとG1・TCクラブ員が一丸となって企画したものである。競技思考といってもいろいろな意味にとらえられがちだが、そこには広い地域のたくさんの釣り人との技術交流が大きな目的となっている。こうした大会を足がかりに一人でも多くの人が釣りトーナメントに関心を持っていき、またトーナメントでよい結果が出せるようにと願うものである。釣りを楽しむ上で釣りトーナメントがすべてではないが、釣りを楽しむ一つのジャンルとして釣りトーナメントに取り組むのもよかろう。山陰地方を舞台に開催されることが少ないこの釣りトーナメント。いきなり各メーカー主催の、しかも初めて行く他県会場の釣り場に乗り込んで行くにはかなりの勇気が必要なものだが、まずは地元で雰囲気だけでも経験してほしいという思いもある。

念願かなった「隠岐」開催
 この大会は今年が2回目。第1回となった昨年の大会は、試行的に近場の大社湾幕島周辺の磯で開催した。参加募集も特に公募せずに、私たちと交流のある釣りクラブに呼びかけてクラブ交流会のような形で開催した。これまで山陰地方では、ある特定の団体やクラブ単位での釣り大会が主流の中で、複数のクラブ員同士が交流をもてるこのような大会は新鮮でまだ数が少ない。
第1回大会終了後、参加者たちは一同に喜び「ぜひ来年も」という声が聞かれた。私たちは、この大会の反省もふまえながら「これならば出来る」という手応えを感じたものである。反省点としては、釣り場の規模、渡船のシステム、釣果のムラなど競技思考を取り入れる中で何点かクリアーしなければならない課題もあった。そこで、私がかねてから思いをはせていた隠岐での開催を提案した。G1・TCのクラブ員たちも「ぜひ隠岐でやりたい」とその思いは一致し、昨年の秋頃から念密な計画を進めてきた。
 私が目を付けたのは、隠岐島前の内海の磯。少々の時化にも対応し、ポイントが豊富で比較的釣果のムラも少ない。渡船のシステムも私たちのここ数年の釣行から、釣り人のニーズに応える形で、幅広く対応してくれるようになった。具体的には1日の日帰り釣行が可能になったことなどにより、船を完全にチャーターすれば出港時間や納竿時間をこちらの希望通りに対応してくれる。今までの実績をもとに「但馬屋・ふたまた丸」(08514-2-0437)と「崎野渡船・浜吉丸」(08514-2-0572)を採用した。最初は二つの違う渡船を使うことによる不安もあったが、当日は何のトラブルもなくスムースに運営することが出来た。この大会が実現し成功したのも両渡船の船長の理解と協力によるものと感謝している。

60人規模で開催
 今回はG1・TCのメンバーを含めた招待選手30人のほか、残りの30人を本誌広告欄や当クラブのホームページなどで公募した。その結果、申し込みは早々に予定の60人に達し、若干の調整を加えて63人のエントリーとなった。招待選手には、私たちがトーナメントなどで知り合い、その後親交を深めている名手たちが顔をそろえた。グリップにサメ皮を採用したトーナメント用捲き枝シャクを考案し、マルキューカップグレ2年連続全国出場を果たすなど福山市を代表するトーナメンター湯川武さん。昨年G杯チヌ2連覇を達成し、岡山の若手NO1の呼び声高い南康史さん。そして広島からはG杯チヌなど多数の全国大会出場経験を持つ中西毅さんの3氏を迎えることになった。そのほか各氏に同行して岡山、福山、広島からトーナメント経験豊富な釣り師たちが集まり、結局山口県を除く中国4県からの出場を得て、私たちが当初予想していた以上の広域的な大会規模となった。

完全磯代わり2ラウンド方式
 午前2時、集合場所となった七類港に出場選手が集まってきた。受付と同時に抽選をし乗船する渡船と渡礁順が決まる。G1・TCのメンバーたちが案内して、渡礁順が後の選手から速やかに荷物を渡船に積み込んだ。大きな大会運営では、渡船の乗り降りをスムースに行うことが重要なポイントとなる。トーナメント出場の場合、なるべく荷物をコンパクトにまとめる工夫も大切で、経験のある人の道具立てを参考にするのもよい。そして自分の持ち物に大きく名前を入れておくことも重要。とにかく荷物のトラブルは、トーナメントでは特に避けなければならない事柄である。開会式終了後、予定どおりの午前3時に七類港を出発した。心配していた天候も良好で釣果の方にも期待がもてる。
 今回のポイント設定は、私が当日の風向きを考慮してピックアップした中ノ島(海士町)の西海岸37カ所を採用した。過去の実績からチヌの魚影がすこぶる高い好ポイント群だ。まず午前6時~午前10時までの第1ラウンドは、A船(浜吉丸)が1~17番、B船(ふたまた丸)が18番~37番のポイントへとポーター(G1・TCの役員:大会には参加しない運営に専念)の指示で渡礁。一般の釣り人が先客として入っていた場合は次へ飛ばしていく。2人1組又は3人1組が渡礁後、磯のセンターラインを設定してジャンケンを行いジャンケンで勝った方がポイント選択の優先権を得ることとした。
 そして第2ラウンド。第1ラウンドが終了した午前10時、全員が一旦納竿し各渡船に乗り込み磯替わりする。第2ラウンドでは基本的に、A船の1番、2番の選手が第1ラウンドでB船の1番、2番の選手が渡礁していたポイントへ入る完全磯替わり方式を採用した。簡単にいうとA船,B船が前半、後半でポイントを入れ替わる方式である。第2ラウンド、各磯でのポイント設定は、第1ラウンドでジャンケンに負けていた選手が、今度はポイント選択の優先権を得る。各選手にはOOページに示したものと同じポイント図をあらかじめ配っておき、何番がどの磯にあがるのかを明確にしていき、ポイントによる不信感が生じないように気を配った。山陰地方では渡船の磯割りシステムが確立されていないことから、クジによる磯割りになれていない人も多いが、トーナメントではこれが当たり前。場所や時間、同行者など限られた条件での釣りにもなれていくことが大切だ。

 

厳正な審査
 本大会の審査部門はチヌ総重量の部、チヌ大物賞の部、マダイ大物賞の部、グレ大物賞の部を設定。あくまでも競技思考のチヌ釣り大会ということで、チヌ総重量の部に最大のウエートを置いた。そしてこの部門の優勝者には、各参加者から納めていただいた大会費を配分して10万円相当の賞品(がま磯スーパーインテッサGⅢ1.25-53)が送られた。私たちG1・TCの運営スタッフの中にも「あまりにも高額すぎて偏っていないか」との意見も出たが、競技思考というこだわりからあえて勝者を賞賛するという意味において上位に高ウエートをおいた配分にした。
 それゆえに検量には細心の注意を払わなければならない。誰もが納得のいく検量審査でなくてはならないのだ。量りは一つのものを使い、デジタル式に10グラムまで数字で表示されるものを採用した。魚は水切りのため大きな四角いざるに入れてもらい、運営スタッフが呼びかけて迅速に検量が行われた。

56.5センチの大物も
 検量の結果、チヌ総重量の部は6ヒキ9,440グラムを釣った三原浩さん(天狗会:松江市)が優勝に輝いた。三原さんは第1ラウンドで「堤奥の奥」で50センチオーバーを含む4ヒキの釣果をあげ、第2ラウンドでも2ヒキの釣果と安定した実績で他を圧倒した。準優勝に入ったのは立石進さん(平田市)。立石さんは、4ヒキの釣果で8,000グラムという高重量を記録し、さらに第2ラウンドでは「シダ奥」に入り大物賞に輝く56.5センチのビッグワンを引き出していた。全体の釣果は、チヌが52ヒキ、50センチ以上が5ヒキと隠岐の実力からすればまだまだこんなものではないが、ポイントや時間などの制約がある中でこの実績は大会成功に値する数字と評価してもよかろう。

第3回G1カップ開催決定
 G1・TCは、この4月29日を「G1カップの日」と定めて毎年開催することをこの大会の閉会式で発表した。参加者の中には「来年も必ず出場するから声をかけてほしい」と早くもエントリーの意思表示があるなど、主催者としては喜ばしい反応が続々と返ってきている。釣りがうまくなくてはだめだとか。まだ経験が浅いからとか。自分一人で出場するのは不安だとか。そんな心配は一切いらない。少しでも関心がある人は、今すぐにでも行動を起すべきである。まずはそういう気持ちが持てることがその人の素質であり、次に直ぐ行動に移せることが、また、その人の素質であると私は思う。今、高い釣り技術はなくても、こういう取り組む姿勢が持てる人こそ、釣りでも人生でも本当に向上して伸びていける人だろうと思う。

この大会に協賛いただきありがとうございました。東レフィッシング、マルキュー、グレックス、天狗堂釣具店、林釣具店、ヒットライン釣具店、但馬屋(ふたまた丸)、崎野渡船(浜吉丸)、小町屋商店、竹下努、湯川武、柳楽定伸、谷口学(順不同:敬称略)

G1カップ、釣りトーナメントに関する問い合わせは
G1トーナメントクラブ事務局
〒693-0065
島根県出雲市平野町20-1-B(メンズヘア・マキノ内)
fax :0853-25-3883

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