小島一文の
“G1フィッシング”

G1フィッシング

磯ふかせ釣り入門

ノッコミチヌ狙いで基本をマスターしよう

45センチの魚体に驚き、感動
 今年の冬はアッという間に通り過ぎ、辺りはすっかり春めいてきた。日の光り、風の臭い、景色の色など毎年繰り返される春の様子だ。磯釣りを長年やっている私たちは、この時期が来るとチヌのノッコミシーズンがやってきたことを感覚的に察知する。
 私が本格的に磯のふかせ釣りに取り組んだのは、昭和61年春のことである。大学を卒業して帰郷したのがこの年で、最近部屋を片づけていたら当時、生まれて初めて釣ったチヌの魚拓が出てきて懐かしく思った。魚瀬の一級磯カブ島での釣果で、あまりの引きの強さに無我夢中にやり取りしたことを思い出す。付け餌が残るからと固定ウキ仕掛けを徐々に深くしていき7ヒロもとっていたものだから一人で取り込めず、たまたま居合わせた釣人にタモですくってもらった記憶がある。磯に横たわる45センチの魚体がなんと大きく見えたことか。この感動は初心の気持ちとして今も忘れられない思い出の一つだ。

磯ふかせ釣り入門はノッコミチヌ狙いから
 さて私がそうだったように、これから本格的に磯釣りをはじめようと言う人には、この春のノッコミチヌをターゲットに取り組むとよい。海の状況も季節風が吹き荒れる秋から冬のシーズンよりも、比較的天気が安定して穏やかな春のシーズンが釣行しやすい。また、いわゆるノッコミ。産卵のために浅場の磯に群れで接岸してくるこの時期のチヌは、比較的釣りやすいと言われている。本来警戒心の強いチヌの習性が急に変わるわけではないが、好ポイントといわれる実績のある磯(産卵の条件に適している磯)にはチヌが群れで来る。それだけヒットチャンスが多くなる。最近は、ますます難しくなってきたと言われる磯のチヌ・グレ釣りではあるが、ふかせ釣りの基本をマスターしてまずはノッコミチヌをゲットして自信をつけよう。

まず悩むのは道具選び
 これから本格的に磯釣りをはじめようと言う人がまず悩むのが道具選びだ。たくさんあるメーカーやグレード、号数、種類の中から適したものを選ぶのは至難の業である。ここでは、私なりに山陰地方を中心にこれから磯のチヌ・グレのふかせ釣りを始めようと言う人のためにタックルをコーディネートしてみよう。

いい物はいい。上級モデルで磯釣りの魅力を体感
 竿の号数は1号から1.5号がよいだろう。最初に1本持つなら中間の1.25号がおすすめだ。チヌなら50センチオーバー、グレでも40センチ級の引きに適応する。竿の長さは磯ふかせ釣り用として5.3mと5.0mが主流でラインナップされている。たかが30センチだがこの30センチの違いには一長一短がある。長い方が少しでもハリスが長くとれる。また魚をかけてからの竿の反発力も長い方が最大限に生かせる。最後のタモ入れも有利だ。短い方は操作性の点で有利だ。竿を伸ばしたときの持ち重り感もずいぶん軽くなる。体力のない人や長時間の釣りにはよいだろう。その操作性の良さから最近のトーナメントシーンでも5.0mを使うトーナメンターたちが増えてきた。私ならこの1本「最初だから何でもいいや」と思う人もあるだろうが、磯竿は信頼のおけるメーカーのものを選びたい。特に釣りは漁ではないのだから1匹の魚を取り込む中にも楽しみと醍醐味を味わえるものがよい。私が最初に1本持つなら「がま磯グレ競技スペシャルⅡ1.25号5.3m」だ。価格的には定価57,500円(チタンガイド)と高価なものだが、使い込めば使い込むほど満足していただけるはずだ。竿全体のバランスがよく操作性は抜群だ。軽い仕掛けでも遠投が可能で外ガイドによる道糸の送りもスムースだ。魚が掛かってからの竿への加重バランスと、竿の胴に乗ってからの粘り腰と反発力は他のメーカーにない独特な感触がある。竿を立てて竿の角度を十分に出し「がま磯」が持つ竿の潜在能力を十分に引き出してほしい。グレ用としてネーミングされているもののチヌ狙いにもベストマッチで、隠岐遠征などで50センチオーバーのチヌをターゲットにしても余裕で渡り合える。竿の長さは最初5.3mを経験しておいた方がよいと思う。

ドラッグ性能で選ぶ
 リールは小型スピニングリールを使用する。主要メーカー、ダイワ、シマノ共に3000番クラスがよいだろう。磯ふかせ釣りにはドラッグ性能にレバーブレーキ機能を持ったリールを使う釣人が多い。レバーでON・OFFの切り替えが出来るなど、ブレーキ機能も高性能になり技術進歩がうかがえる。魚を掛けてからの道糸の逆転が実にスムースだ。しかし私の場合はこの便利な機能が逆に仇となって、自分のイメージしている以上に道糸を出し過ぎてしまうことから普通のスピニングリールを使用している。ドラッグ機能は使わずハンドルの逆回転だけで魚の引きに対応している。ブレーキはベールの横に指を添えて止める。
 メーカーに要望したいのは、最近よく使うようになった1.75号、2.0号クラスの細道糸に対応した糸巻き量スプールの開発だ。本体が3000番クラスで1.75号の道糸が150mいっぱいに巻けるスプールバリエーションがほしい。
 私の考えでは、リールは竿でためて竿の反発力で魚が浮いてきた結果、余った道糸を巻き取る道具と考えているのでそれほど上級モデルは必要ない。問題はレバーブレーキを使うかノーマルを使うかだけ。自分のスタイルが決まるまでは、どちらのタイプのリールでもいいので初級モデルでまずは試してみよう。

2号の驚きパワー、そして2号で喰わす
 道糸は2号からスタートしよう。トップメーカーの道糸品質は非常によくなった。山陰地方でチヌ・グレのふかせ釣りなら2号が標準でよいだろう。2号ならワンランク上の2.5号のハリスまで強度バランスOKだ。リールスプールへのなじみ、糸の送り出し、風・波・潮への抵抗も程良く一番扱いやすい号数といってもよい。巻き量は150mが標準だ。道糸は1回の釣行で終了後に10mずつカットして切り捨てる。私の場合は5回の釣行を目安に新しい道糸と取り替えている。私が好んで使用しているのは、東レ銀鱗SS2号または東レ銀鱗SSトーナメント2号。ナイロン糸は紫外線による劣化があるので、1回巻いたものは使用回数が少なくても半年から1年経てば新しいものに巻き替える。
 ハリスはフロロカーボン素材が主流だ。吸水性がゼロで劣化にも強い。比重が高く沈みが早いのが特徴だ。比較的深い棚を狙うことが多い山陰地方のノッコミチヌ狙いには好都合だ。最初に用意する号数は1.5号、1.7号、2.0号、2.5号くらいでよいだろう。最近はチヌ・グレをやたらと細ハリスで攻める傾向にあるが、最初はあえて太仕掛けで挑戦してほしい。特にビギナーは2.0号で食わす努力をしてほしい。そして掛けた魚を確実に取り込んでほしい。トータルバランスのとれた2号の糸は驚くほどの強度を発揮する。私は東レトヨフロン・スーパーL・EXを好んで使用している。フロロカーボンにしてはしなやかで柔らかく非常に扱いやすい。ハリなどへの結びもスムースだ。

深棚攻略に有利な管付きウキ
 磯ふかせ釣りのタックルの中で一番種類が多いのがウキだろう。だからビギナーはどれを使ったらよいのか迷うところである。山陰地方の釣りで私がおすすめするのは管付きウキ。なぜ管付きウキがよいのかを詳しく説明しようとすれば、山陰地方の海の状況や自然条件から始まり管付きウキが持つ特徴を一つずつ解説していかなければならない。ここでは竿の長さ以上の深い棚をとるときに、管付きウキの方がウキ下を早く確実に確保しやすいことを上げておこう。特にノッコミチヌ狙には重要な攻略法の一つとなる。ウキの浮力はガン玉B1個からB5個くらいのウキを2本ずつ合計10本くらいあればよいと思う。ウキの浮力表示だが、これは統一性がないので注意。ガン玉Bは約0.55グラム、2Bは0.75グラムなのでB×2個=2Bではないことを知っておこう。私はご存じのとおり大田市の竹下努氏手作りの「竹下ウキ」を愛用している。このウキは大田市の林釣具店、桜江町のつりたつ、松江市の天狗堂などで購入することが出来る。チヌ狙いには全長16センチ~18センチのB1個~3個くらいの浮力のものを好んで使用している。

ハリは魚との接点
 ハリは魚との接点であり最も重要な道具の一つだ。これも種類が多い。最初は信頼のおけるメーカーの最もシンプルで代表的なハリを何種類かに絞り各号数を用意しよう。私が磯のふかせ釣りに2種類だけ持っていけるとしたら「がまかつ」の「A1トーナメントアブミ」1~5号と「寒グレ」4号~8号を用意する。チヌにはトーナメントアブミの3号、4号をよく使う。

シンプル・イズ・ベスト
 そのほか何点か小物が必要だ。管付きウキを道糸にセットするには「fuji」の「Sicラインスイベル1.0号」、または小型のスナップ付きサルカン。ウキがハリスの方にずれないようにするクッションには「グッレクス」の「ジャスパーミニ」。ガン玉は「ヤマワ産業」の「ゴム張りガン玉」G5,G3,B,2B,3B,4Bを用意する。ウキ止めにはハリス1.5号を使って道糸に結び付ける。
 磯ふかせ釣りにはたくさんの小物が開発されているが、最初からあれやこれやたくさん持っていても使い方が今ひとつ分からなかったりして迷うばかりだ。ここはやはりシンプルなのが一番いい。ビギナーにありがちな不安材料の一つに「遊動仕掛けがうまく棚に落ちていないのではないか」というもの。管付きウキは道糸との接点が海中に入り込んでいることから道糸の遊動が実にスムースだ。風や波の影響も受けにくい。道糸とウキとの接続部にはラインスイベルのみ。ここに余分なものをつけないことが重要だ。よく見かけるのは、ウキ止めにせからせるためにセル玉などを入れている釣人だ。これでは道糸の滑りが悪く、せっかっくの管付きウキの利点が生かせなくなる。

キーワードは深棚攻略
 山陰地方のノッコミチヌ攻略法のキーワードは「深棚攻略」。釣りイメージはポイントの水深を知り、まずはウキ下を底狙いに設定して攻めることだ。ずいぶん決めつけたような言い方だが、水深約6m~12mのポイントをウキ下4ヒロ~7ヒロの底狙いでの釣果が実に多い。今までの実績やデータがそう物語っているのだ。

撒き餌の配合も深棚攻略の高比重のあるものを用意する。

◎基本配合パターン(半日:約6時間の量)
オキアミ生3キロ~6キロ+「マルキュー」チヌパワームギ1袋
・押しムギなどが大量配合されており高比重で山陰のノッコミチヌ狙いにピッタリだ。
・オキアミは小粒のものをなるべく潰さないように混ぜ合わせる。

◎遠投がしたいとき
オキアミ生3キロ+チヌパワームギ1袋+オカラだんご1袋
・オカラだんごを配合することにより配合餌の割合を多くする
・オカラだんごはシャク放れを良くし、遠投が可能
・さらに遠投が必要な場合はオキアミを細かくつぶすと良い

◎餌取りが多いとき
オキアミ生3~6キロ+チヌパワームギ1袋+オカラだんご2袋
・オカラだんごは水を加えるとふくれて、かなりの増量効果がある
・オカラだんごは上層で煙幕状に広がるので2層分離の撒き餌効果がある

◎チヌの活性が低いとき
オキアミ生3キロ~6キロ+チヌパワームギ1袋+チヌドリップ1袋(またはチヌにこれだ1本)

【付け餌】
◎スーパー生
・解凍したときの質感は抜群である。遠投にも対応
◎くわせオキアミスーパーハード・LまたはビッグL
・身持ちが良く餌取り対策によい
・Lサイズ以上を2匹がけにして付け餌を大きく見せると効果大
・海水に浸かると白く変色し、視覚的にアピール、他と差が出る釣果アップ

 さてこれで準備OKだ。さっそく春の陽気に包まれた磯に出かけてみよう。ノッコミチヌ狙いでトレーニングを積んで、次は梅雨グレ、秋チヌ、寒グレとステップアップしていき、磯ふかせ釣りの魅力を深めていこう。

1.銀鱗に輝くチヌは磯ふかせ釣りのターゲットとして人気が高い
2.私が始めて釣ったチヌの魚拓
3.がま磯の美しい曲線美。ここからの粘り腰と反発力が魅力
4.道糸2号-ハリス2号の強度は驚くほどだ
5.管付きウキの利点を集積した竹下ウキ
6.ハリは魚との接点。信頼できるものを
7.たくさんの種類がある小物も厳選して使いたい 

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