新記録だ!宮川明名人、6期、名人位に在位
3年連続3位も新記録?
「第30回報知グレ釣り選手権、マミヤ・オーピーカップ」が10月14,15日の両日、愛媛県宇和島市の日振島諸島、戸島、遠戸島の磯で開催され、私を含め島根県から4人が出場した。
各地からトーナメンター集結
私がこの大会に出場し始めたのは、平成6年の第24回大会からで今年で7回連続の出場になる。このコーナーで紹介させていただくのも今年で4回目になるが、グレ釣りトーナメントの中では最も歴史があり、過去の名人位獲得者にはそうそうたるメンバーが名を連ねる。近年各種メーカーなどが主催するグレ釣りトーナメントも多く開催されるようになったが、この大会の良さは、新聞社主催により各釣具メーカーなどの隔たりがないことである。今年出場した46選手の顔ぶれを見ても実に13府県からの出場で、何らかのメーカーのインストラクターやフィールドテスターを務めるトーナメンターたちが顔を揃える。だから思いもよらぬ名人同志の対戦がいとも簡単に実現したり、そんな名人たちと私自身が実際に対戦するチャンスもある。そこにはグレ釣りの最新テクニック、最新情報が満載されており、毎年が新しい出会いと感動を生むのである。報知グレはその歴史とタイトルの格式もさることながら、そこに集まる仲間たちとの再会、新しい出会いを求めて、わたしが大切にしている大会の一つでもある。
この大会に出場するには、新聞広告にしたがいハガキで申し込むシステムになっているが、応募者多数の場合は抽選による。過去の名人、前回の6位までの入賞者はシード権があり、無条件の出場と大会1回戦のシード権が与えられる。私は前年3位のシード権があり今大会は2回戦からの対戦となった。
今年の日振島周辺の磯はまだ水温が高く安定しないのか、その日によって場所、釣果に大きくばらつきがあるようだ。主催者と浜崎渡船の船長たちも、何とか良いフィールドを選手に提供しようと頭を悩ました。結局、初日の1回戦は日振島本島の北磯と決定する。渡船の抽選割りで設定されている南磯に対して裏磯と言った感じは否めないが、普段あまり釣り人が入らないせいか、すいこぶる魚影は濃い場所である。40センチオーバーもヒットしてくるので油断は出来ない。
今年もシード権獲得
1回戦の結果、釣果はあまり良くないようである。釣果なしで抽選になった組やわずか1匹の釣果で勝敗を分けた組もあるようだ。私の2回戦の相手は、28回大会で優勝した山中雅尋さん(大阪:チームグレ日和)。当時名人だった矢部卓さん(岡山:無名人)と名人戦を戦ったが惜しくも敗れて準名人となった名手である。
私たちが対戦しようという磯では、同じクラブの吉野功くん(出雲市:G1トーナメントクラブ)が1回戦を戦っていた。誇らしげな顔ですぐに彼が勝利を収めていることがうかがえたが、それもそのはずなんと46センチの立派な口太グレを仕留めての勝利だ。3人の対戦にもそれぞれに釣果があり、ここの磯は期待がもてることを確信。私の対戦も場所取りのジャンケンに勝って前半有利に試合を運び勝利を収めた。
苦しかったのは3回戦。この試合を勝てばベスト6で来年のシード権が取れる。相手は初出場の三好晴功さん(京都:撤秋会)。前半2-7と大きくリードされ、一度はあきらめかけたが、残り15分に時合到来、ターボエンジン全開で11-12まで追いつき重量差で何とか勝ち上がった。
3年連続3位に
初日が終わり出場選手全員で懇親の席が設けられる。この場で初日の成績が発表され準決勝の対戦が抽選で決まる。たくさんの選手の中からこの場に呼び出されることは大変名誉なことであり、この場に立つことが同志に認められる証でもある。抽選の結果私は、白石和典さん(愛媛:チームアクア)と五嶌一喜さん(和歌山:紀州グレ釣研)との対戦が決定した。
2日目は、前日の釣果を考慮して遠戸島のナカバエと言う磯が使われた。結果は五嶌さんにダブルスコアーに近い大差で破れ、私は重量差で3位。昨年、1昨年に続いて3年連続の3位ということになる。
負けてなお勉強。名人戦を観戦
敗退した私は、決勝戦、名人戦を観戦することにした。レベルの高い対戦を観察することは、自分の釣行を何十回、何百回重ねることに匹敵するほどの経験になる。決勝戦は福良元宏選手(徳島:徳島名礁会)と五嶌選手が対戦し、匹数で見ても15-14と息詰まる熱戦を福良選手が制し名人への挑戦権を得た。
名人戦の会場は、遠戸島の本床の奥。たくさんのギャラリーが観戦するなか始められた。宮川名人は場所決めのジャンケンに勝って潮の動きのある左側のポイントを選択。狙いが的中して開始早々から次々にグレを取り込んだ。私も含めて大方のギャラリーがワンサイドゲームを予感させたが、福良選手は1ラウンド後半から徐々にヒットパターンをつかみ、不利なポイントにも関わらず5匹の釣果をあげた。その差は4匹。良型も含まれているので2ラウンドの巻き返しも十分可能になってきた。案の定、2ラウンドが始まると好ポイントに入った福良選手の追い込みが始まった。1匹、また1匹と差を縮めていき途中では同匹数になる白熱した展開になってきた。今度は反対に、良型をキープしている福良選手に対して「名人ヤバイ」の声がギャラリーからささやかれた。しかしここからが宮川名人の勝負強いところだ。前半勝負と読んで規定5キロ(1回の対戦)の撒きエサを前半に多く使い、イメージどおりに釣りこなせない歯がゆさを見せた場面もあったが、わずかな潮の動きをとらえて匹数で13-11と福良選手を引き離した。福良選手は終了15分前に40センチオーバーのグレらしきアタリを痛恨のハリス切れでバラシ。追加することができなかった。
だれもが息をのんだ検量。最初に量った福良選手の天秤ばかりは、宮川名人のグレを掛けてもピクリとも動かない。「同重量だ!」。ギャラリーからざわめきが起こった。「同重量の場合は現名人が防衛すること」という大会規定により、宮川名人は通算6期目の名人位の座を獲得し、志賀氏、立石氏の5期を抜いて史上最多となった。
仕掛けの張りすぎは禁物
全般に感じたことはグレの動きが非常に鈍いこと。撒きエサに対して縦の動きが少なく、ある一定のタナで横の動きをしながら餌を待っている感じである。このことは釣り方にも即反映されてくる。決勝、名人戦を戦った選手は、仕掛け投入前に撒きエサを入れ、比較的軽めの仕掛けを投入して追い打ちの撒きエサを入れる。いわゆる付け餌をサンドイッチにし、撒きエサと付け餌が同じスピードで沈むイメージだ。仕掛けがなじんだ後は、さらに付け餌の重みでジワジワとウキごと沈めていくパターン。ここで繊細なのはアワセのタイミング。アワセが早いと口先でオキアミをくわえただけのグレはほとんど針に乗らない。あるいはハリハズレでばらす。だからウキに反応があっても、これでもか、これでもかと言うほど仕掛けを送り込んでいく。この釣りイメージだと仕掛けの強い張りは厳禁。私らの言葉で表現するならば「あますような釣り」とでも言おうか。宮川、福良、五嶌各選手とも円錐ウキを使った釣りだが、糸フケを多く取り付け餌に引っ張らせるようなイメージの釣りパターンが多かった。風や潮の変化は、ガン玉の号数、打つ位置をこまめに変えながら対応していたようである。いずれにしてもウキを中心としたタックル全体を、かなり使い込んだレベルの高い釣りが展開されたことは言うまでもない。