海の状況変化で戸惑い
-G杯グレ中国予選-in青海島
季節の移り変わりは早いもので、少し涼しくなってきたな・・・と思っていたら、なんだか朝晩にはコタツが恋しくなってきた。わが家では10月下旬ころにはコタツが登場しそうな雰囲気だ。
さて今年から本格的にはじめて、のぼせにのぼせていたアユ釣りも、この秋風と共にだんだんと気持ちがなえてくるもの。アユも産卵期を迎え、あれだけ追い星が黄色く色鮮やかだった魚体も黒ずんできて、はかない一生の終わりを告げている。気持ちが磯に戻れるのかどうか心配していたが、不思議といさぎよくアユ竿をおくことが出来た。人間というものは実に都合のいい生き物で、このころになると川の水も冷たくなり、川に立ち込んでいると「浜田でヒラマサが釣れたらしい」とか「ともしまで尾長グレが釣れたらしい」などと妙に磯の情報が気になり出す。まあ、楽しみの釣りのことだから、釣りに関してはどこまでも自分の気持ちに素直に正直に行こう。釣りたい魚を楽しく釣ればいい。
互いに刺激し合ってトーナメントに挑戦
もう一つ私を磯の方に強く向けさせるのは、シーズンに入ってグレ釣りトーナメントが始まるからだ。私が釣りに取り組む中で大きな目標としているものの一つだ。大きな予選を前に控え、クラブのメンバーたちが勉強会と称してわが家に集まってくる。大会会場となる磯の状況、仕掛け、撒きエサ、釣りイメージと過去の実績やデータ、最近の状況などを情報交換をしながら、一人ひとりが大会イメージを作り出していく。クラブ以外の人でもOKだ。今回も初めて挑戦する人や興味がある人たちが、メールなどで問い合わせてきて駆けつた。私の考えでは同じ志を持っていれば、所属するクラブが違っても、使う道具や出入りしている釣具店などが違っていても、みんな同じように情報交換し合って切磋琢磨していけばいいと思っている。このメンバーたちのトーナメントに向ける熱い熱い思いが、お互いを刺激してさらに気持ちをヒートアップさせる。この時放つエネルギーが釣り技術向上の源であり、釣りの楽しさを倍増させる。
10月の青海島に大きな変化
今年私たちが挑戦したのは10月15日、山口県青海島で開かれた「G杯グレ」の予選会である。この大会は、株式会社がまかつが主催する通称「G杯」の中国地区予選会の一つである。G杯グレについては、その大会方法やシステムを本紙10月号に詳しく掲載したので参照されるとよい。
1998年、本紙12月号のG1フィッシングでG杯予選での青海島攻略法を照会させていただいた。この時は、青海島周辺の磯をいくつかのエリアに分けて、その磯の特長や癖を照会しながら狙い所のポイントを解説した。あれから数年経った現在、当時の記事を読み返すにあたり何らかの修正を加えなければならなくなった。ここ数年の状況から、磯の状況が大きく変化してきているような気がするのだ。私などは所詮、青海島をホームグランドにしている釣り師ではないので、この予選大会が開催される10月にだけ釣行していてのデータなのだから、地元釣り師のみなさんから見れば「何を言っている」と笑い飛ばされても仕方がない。しかし確かに変化しているのだ。
私なりに感じていることは、
1.尾長グレの回遊が非常に多くなった。しかも40センチクラスがヒットしてくる。
2.青物の回遊も多くなってきた。
3.エリアごとに分析した餌取りの種類に変化が生じてきた。
4.ポイントによる釣りムラが大きくなってきた。
5.時間帯、潮流の状況で釣果に大きな差が生じるようになってきた。
このような状況があげられる。
各項目ごとにはそれぞれ関連しているものも多く、例えば青物が回遊すれば、アジなどの餌取りは少なくなるし、潮流などの影響が釣果に大きく影響すれば、おのずとポイントや時間帯によって大きく釣果に差がでるものである。この原因として私が想像するところは、山陰海岸に大きく影響している対馬暖流の接岸だろうと思われる。このことは、島根半島でもここ近年尾長グレが非常に多くヒットしてくる状況などとリンクする。この暖流の動きが大きく影響しているものと思われる。
過去3年間のデータ分析が物語る・・・
さて私もこのような状況を当てずっぽで言っているわけではない。最近3年間のG杯予選、前日行うGFG島根支部大会、それぞれのポイント別釣果を基にしたデータを分析してみた。するとおもしろいことに、前日GFGで多く釣果のあったポイントが次の日のG杯予選では全くゼロであったり。その逆にGFGでダメだったポイントから多くの釣果があったり、全く状況が読めなくなってきているのだ。また、G杯予選で1回戦、2回戦、3回戦と同じポイントを使った場合のデータを分析してみると、それぞれ極端に釣果が分かれた。例えば1回戦では、アジやコッパグレなどの餌取りだらけで全く規定のキープサイズのグレが釣れなくてジャンケン勝負。2回戦は潮目に青々とした良型グレが乱舞して2時間で一人5キロ以上の釣果。3回戦は序盤、撒きエサを打っても餌取りすら確認できないが、やがて深めのタナをキープしていると尾長グレがガツンときた。などという状況の磯がいくつもあった。こうなると98年、12月号で私が解説した青海島攻略法は全く過去のものであり、何の役にもたたないものになってしまっている。これを参考に青海島に乗り込んできた読者のみなさんにはお断りをしなければならないが、何せ自然相手のことゆえに勘弁していただきたい。98年ころまでは磯の癖を知っていれば、いつでもどこでも規定サイズクラスのグレであれば、かなりの量をキープできたものである。条件がそろえば、一投、一投グレがヒットしてきて、手返し勝負になることもしばしばあった。しかし今は辛抱の釣りになることが多い。
一回戦敗退
そこで新しい攻略法は?・・・となるところだが、正直なところ私もこの状況の変化に戸惑うばかりで、全くこの攻略法を見いだせないままここ数年が過ぎた。よい釣りイメージが出来ないからか、最近3年間の成績は悲惨なものである。現に今年のG杯予選は、前日GFG島根支部大会で優勝者を出した青海島の名礁「仏岩」で1回戦を戦い、お互い規定サイズぎりぎりを1匹ずつ持ち込んでの検量で、わずか10グラム差で敗退してしまった。10センチ未満のコッパグレに大型のボラ、過去に青海島ではお目にかかったことのないウスバハギの大群に手の打ち所がなかった。相手の選手は前半の朝マズメに尾長グレらしきアタリを2度バラシたらしいが、残念ながら私にはそのようなアタリは来なかった。
今の青海島は対戦場所となるポイント、または時間帯で全く先が読めないのである。対戦している2時間の間にも、潮の流れなどの変化によって展開が左右される度合いが大きくなった。勝負は時の運と言うが、状況と展開次第でどっちに転ぶか本当に分からなくなった。
尾長グレ対決に息をのむ
このことを裏付けるような対戦があった。敗退した私は、3回戦を今後の勉強のために観戦することにした。目当ては、地元の名手で昨年のG杯全国大会に出場経験を持ち、私たちのクラブとも交流のあるプレーヤーズの上田さんの対戦だ。相手はやはり地元の上田00さん。ポイントの磯は、ここも青海島を代表する1級磯「大山鼻」である。最近尾長グレがよくヒットするポイントでもある。私は小高い岩から二人の対戦を見つめた。高い位置からだと潮の状況や底瀬、撒きエサの沈み具合などよく分かる。図のような状況で対戦は始まった。前半戦、最初は撒きエサの筋に全く餌取りすら見えない。二人とも付け餌が残ったまま上がってくる状況が続いた。私が一回戦対戦した仏岩は、そんなに離れていない場所なのに、これほどに状況が違うのだ。前述で示したように場所も違えば潮流、時間帯も違うのだから当然といえば当然ではある。やがて沖の潮目に青物が出だした。この状況を判断してか上田00さんは沖の潮目狙いを足下のサラシ狙いに移した。ウキ下は3ヒロ前後か。すると狙いどおりアタリが出た。取り込んだのは35センチはあろうかという尾長グレだ。狙いの展開、撒きエサ、足元への仕掛けのなじませ方などさすがだ。
今度は左側に入っていた対戦相手の上田00さんが大きく竿を曲げた。かなりの良型だ。竿の反発力をうまく生かして丁寧に取り込んだのは、何と40センチクラスの尾長グレだ。するとまた上田00さんが竿を曲げている。小気味よい締め込みは確かにグレだ。しかし何度もシメ込まれたあげくハリスが飛ばされてしまった。思い直してハリを結び直し同じパターンで足元になじますとまたすぐアタリ。しかしこれも残念ながらハリスを飛ばされてしまった。時合がきたのかまたまた上田00さんも大きく竿を締め込まれている。これもかなりの良型だ。1匹目と同じように丁寧に丁寧に足元まで寄せてみるとまさしく40センチクラスの尾長グレだ。「アッ」、姿が見えた途端、竿が大きくはじかれた。どうやらチモトでハリスが飛ばされたようだ。「これはすごい」、過去の青海島とは思えない良型尾長グレ対決となった。
後半戦に入ってポイントを入れ替わってからは、潮流が早くなり二人ともグレのアタリが遠のいた。時々青物が竿を引ったくるが、最後まで餌取りらしい小魚は姿を見せなかった。結局、お互いに前半戦で仕留めた尾長グレが1匹ずつ。勝負はその魚体から一目瞭然。上田さんが悔やまれたのは何度かのバラシが痛かった。
このように過去とは大きく状況が変わってきた青海島ではあるが、グレはまだまだ野性味たっぷりだ。魚影も濃く、良型尾長グレの回遊も魅力たっぷり。勝負に関しては先が読みにくくなったとはいえ、よりゲーム性が高くなったと思えばよかろう。今回の大会で得た教訓は、尾長グレに対応した太仕掛け対応だろうか。トーナメントといえばやたら細仕掛けに頼る傾向にあるが、青海島のグレはまだまだ産だ。2号クラスの道糸、ハリスで良型尾長の一発狙いから口太狙いの数釣りまで対応したい。
山陰勢の健闘を祈る
今大会では、山陰地方からもたくさんの釣り師たちがG杯全国大会出場を目指して挑戦した。年々参加者も増え、特に20代、30代の若い人たちの挑戦は喜ばしいことである。今回、その中から4人の選手が見事3回戦を勝ち抜いた。全国へ出場するには、11月7日、隠岐島前で行われる決戦大会において、さらに3回戦を勝ち抜かなくてはならない。隠岐開催だけに是非ともこの地元選手たちには勝ち抜いてほしい。他地区会場で勝ち抜いた他の地元選手たちも含めて山陰勢の健闘を祈ろう。
G1フィッシング番外編
平成13年度G杯グレ中国予選大会:青海島会場優勝者:宮廻裕さん(島根県出雲市:G1トーナメントクラブ)の対戦リポート
今回使用したマキエは1回戦分として40センチバッカンの半分にオキアミ生3キロ、配合エサはマルキューの「イワシパワーグレ遠投」、「グレパワースペシャル遠投ふかせ」、「活性起爆剤グレ」を各一袋ずつ混ぜ合わせ、もう半分の仕切りバッカンの中には磯際釣り用及びエサ取り対策としてオキアミ生2キロ、オキアミ半ボイル1キロの原形のものを混ぜ合わせて使用した。通常、私はグレ釣りの場合、オキアミ3キロに対して配合エサ1袋の割合でマキエを作るが、今回は一回戦分のマキエの量がツケエを含めて40センチバッカン1杯と制限されていたことと、約半分の量をオキアミ原形のままを準備したことから、配合エサの割合に対してオキアミの量を少なめ、遠投性を重視した。
ツケエはオキアミ生、オキアミ半ボイル、マルキューの「スーパーハードグレ」、そして今回の秘密兵器である磯エビのムキミに味の素をまぶしたものを使用した。磯エビのムキミは1尾ずつ頭と尾を取り、皮をむいて作るため、かなり根気のいる作業である。このエサは身が締まって硬く、小粒で食いも良く、また、色も透明であるため、エサ取りにかなり強いと思われる。
仕掛けは別図の通りであるが、最近、私は自重のある円錐ウキとナビを組み合わせた2段ウキ仕掛けのスルスル釣りで好釣果を得ている。この仕掛けで、激流、大サラシ、超深ダナ等の場合を除いて、ほとんどこの仕掛けで対応している。ナビはあくまでも仕掛けの入りをチェックするためのものであり、アタリは親ウキの円錐ウキで取っている。この釣り方で重要なのは道糸のコントロールであり、これがうまくできないと軽い仕掛けでは仕掛けを狙いのタナまで入れるのが困難となる。私の場合、風が強い時などは、糸フケをあまり出しすぎると道糸に抵抗がかかり、仕掛けの入りが悪くなるため、少しずつ道糸を出して、張らず緩めずの状態で仕掛けを流すようにしている。また、投入する距離、潮流や風等の自然状況で仕掛けの入り方が違うため、ゴム張りガン玉の大きさと数及び針の重さで頻繁に調整することとしている。ジンタン5号を1つ足しただけでも、ずいぶんと仕掛けの入り方が違うものである。
一回戦は鼻繰岩というあまり潮通しの良くない磯で対戦した。朝一番、マキエはオキアミの原形のみを足元に少しずつ撒き、磯際に潜む良型グレを狙った。しかし、第1投目からアジとサバの入れ食いとなり、苦戦してところ、対戦者にキープサイズのグレを先に釣り上げられてしまった。いつもなら、ここで焦ってしまい、自分のペースをつかめずに、敗北するパターンであるが、自分を落ち着かせるように言い聞かせて釣り続けていると、待望の当たりがあり、キープサイズを釣り上げた。この時のサシエは磯エビのムキミである。その後、規定サイズに満たないグレをポツポツ釣り上げるが、なかなか規定サイズを超えるグレが針掛かりしない。キープしたグレは対戦者より少し小さい型であったため、このままでは負けると思い、遠投勝負に切り替えた。しばらく遠投を続けていると、前半終了間際に規定サイズぎりぎりのグレを釣り上げた。結局、場所替りした後半は両者とも釣果がなく、この規定サイズぎりぎりのグレで一回戦を勝ち上がった。
2回戦は平家台という一級磯に上がった。ここでは、ボラや青物が回っているせいか、しばらくサシエが残る状態が続いた。そこでガン玉を追加し、竿1本半ぐらいまでタナをいれると当たりがあり、前半で尾長グレの30センチオーバーを含め、4匹キープし、2回戦を勝ち上がった。
3回戦は赤瀬という超一級磯に上がった。この磯は青海島で現在のところ私の一番好きな磯である。 2回戦で行われた対戦で好釣果という情報が入っていたので、楽しみにして磯上がりした。試合開始直後は足元を攻めていたが、なかなかグレが釣れないので、沖の潮目にマキエと仕掛けをダイレクトに投入して攻めると30センチ前後のグレが入れ食いとなった。釣れるタナはナビが少し入った竿一本ぐらいであると思われた。結局、その後も釣果を伸ばし、運良く優勝というおまけ付きで3回戦を勝ち上がることができた。
今回、勝ちあがれた原因は、1回戦で釣り上げた規定サイズぎりぎりのグレを釣って勝ったことに尽きる。もし、そのグレを釣っていなかったら、1対1となり重量差で負けていた可能性が高い。たとえ、そのグレがとても小さくても私にとっては価値ある1匹であったことには間違いない。