道具を信じ特徴を使いこなす
マルキューカップで全国へ…。 ~ マルキューカップ優勝! ~
最近の山陰地方の海といえば天候が不純で、自分の休暇と 天気がなかなかまち合わず思い通りの釣行が出来ないで イライラしている方も多いのではないか。海の方も例年とは 少しちがって、ノッコミチヌが早くから釣れ出したかと思うと 同じ時期にグレの良型が釣れたり、早くからマダイの大物が 釣れたりとスロースターターの釣り人を慌てさせた。日御碕の トモ島では見たことのない渡り鳥が飛来するなどこれも異常と いえば異常なのか、自然は本当にわからない。 今シーズン初めての競技会に参加 昨年のG杯グレ全国大会を終えて競技会から遠ざかっていたが 5月30日開催の「’98マルキューカップグレ釣り選手権大会 中四国地区予選大会」にエントリーした。この大会は5月30日、 31日、愛媛県宇和島市の日振島を舞台に連日行われる大会である。 1日150人限定で申し込み受付し、第1日目の上位3人、 第2日目の上位3人がそれぞれ12月に行われる全国大会に駒を 進めることが出来る。 エントリーするにも運を試される時代 最近の競技会はエントリーするのも大変だ。年々競技思考が 高くなり今や各メーカーや団体が主催する競技会は予選会で100人 を越す規模がほとんどである。予選を突破するのはますます狭き門 になるのはご承知の通りであるが、目指す大会に出場しようと思っても 運営上人数を限定されるのでエントリーできない場合がある。 申し込んだ時点でまず振るいにかけられるわけである。 マルキューのこの大会の場合は、自分が希望する日(30日か31日) を指定しハガキで申し込む。応募者多数の場合は抽選で決定される。 両日300人定員のところ560通の応募があったというからまず ここで出場できるかどうか運を試されるのである。 私が所属する同じメンバーの中でも当選した者、落選した者といて 明暗を分けたが、申し込みをする段階から何気なくとりあえず出して おこうといった安易な気持ちではなく、仕事や家事用務などの 日程調整をし、大会日に照準を合わせて取り組むことが自分に 運を引き寄せることになるのだと語り合った。 9匹の総重量で勝負 運良くエントリーできた私は、会場となる愛媛県宇和島市「日振島」 へ向かった。日振島は今までに幾度となく訪れているが、 10月11月の秋のシーズンばかり、この時期にグレ釣りに 向かうのは初めてである。 この大会のルールは、25センチ以上のグレ9匹の総重量で順位を 決定する。9匹というのは中途半端な数字だと疑問に思う方も おられるだろうが、主催者のマルキューは「9」という数字に こだわりを持っているのである。なかなかユニークな発想だ。 ウキを信頼し特徴を使いこなす 私は高知県の選手とともに日振本島の独立バエ「アカシバエ」 にあがった。この磯は初めてだ。若い番号に優先権があったので私が 先に海に向かって右側に釣り座を取った。潮は左から右に 流れているのが一目瞭然だったので最初に潮下の有利な方を取ったわけだ。 足下のサラシの付け根に撒き餌を打ってサラシの切れ目に 出来た潮目を狙った。エサ取りはキタマクラとカワハギが多い。 撒きエサの中から仕掛けを合わせると付けエサはひとたまりもなく アッという間に盗られてしまう。潮上から撒き餌と離して仕掛けを なじませ潮目に送り込むとフリーにした道糸がスルスルーと 張ってゆくアタリがでた。狙いどおりグレの28センチがきた。 同サイズがすぐに喰いついてきて2尾目をキープしたが、 このサイズではとても上位は狙えないと判断した。 いい潮が通すので沖合30メートル付近にある底瀬辺りに遠投し、 撒き餌が効くか効かないかの際を探るように流し込んだ。この作戦では、 私が愛用している竹下ウキの本領発揮である。トップがかすかに 海面に出るか出ないかに浮力調整してあるこのウキは、 潮目に入ると自ら潜っていき撒き餌の漂う棚まで付け餌を送り 込んでくれるナビゲーションの役割を果たすのである。また意図的にも 道糸を操作してテンションをかけてやることにより、速い潮や横潮、 または横風の影響を受けることなく狙いの棚に軽い仕掛けを送り込む ことが出来る。その秘密は、ウキのスタイルにある。(図1) そろばんの珠のように張り出しているカーブに秘密があり、 潮や水圧を受けて引っ張ると潜っていく構造になっている。 この特徴を使いこなすことによって様々なフィールドで結果を 出せるわけである。 狙いどおり沖に大型潜む 潮上に遠投した仕掛けが、自分の正面から潮下に流れるのを見計らって、 道糸修正を行う。(図2)同時に付け餌がウキより先行して 流れるイメージができあがる。(図3)大きく扇状に流れていた 仕掛けが潮に乗り潮目に入っていく。この辺りからウキは潜って しまっているので道糸の変化と竿先でアタリをとる。 潮の流れにリズムを合わせながら道糸を送り込んでいると、 バラバラーと道糸が走った。道糸を手で押さえて小刻みに 2度カンカンとアワセを入れる。「この重量感。グレだったら 間違いなく40センチオーバー」と確信しながらリールのベールを 起こして取り込みにかかった。タモに収まったのはやはりグレの 46センチであった。この遠投釣法が的中して40センチオーバーを5尾、 その他30センチ代で9尾を揃えた。 さあー、納竿の午後1時が来て帰りの船に乗り込んだ。 「この釣果なら上位へいくんじゃないか」と期待でワクワクしてきた。 港に帰ると各選手たちがつぎつぎとグレを検量所に持ち込んでくる。 良型の40センチオーバーもちらほら見受けられる。全体に良く釣れている。 私は検量の結果9キロをオーバーした。どうやら今まで検量した 中ではトップのようである。検量カゴに納められた魚はそのまま 順位ごとに並べられる。まるで港のセリ市の風景を見ているようだ。 つぎつぎに選手が帰ってきてめまぐるしく順位が変わっていく中、 私の検量カゴはとうとうトップのまま動くことがなかった。優勝である。 マルキューの「9」にこだわるルールが身方に・・・ 検量の結果2位は地元の國松 節さん(宇和島市)が8キロ代。 3位はあの湯川杓の湯川武司さん(福山)が7キロ代であった。 共に私のグレより一回り大きい50センチ近い口太グレを釣りながら 規定の9尾には足りない7尾しか釣果がなかった。もし5尾の総重量 だったら負けていたかもしれない。型も数も狙いの中に入れて いなければならないシビアな戦いだったわけである。「9」 にこだわって釣りをし、「9」にこだわった本大会のルールが私に 大きな勝利をもたらしたのである。4期連続して出場していたG杯も 昨年の予選で敗退し、全国規模の大会出場が途絶えかけていただけに この勝利は本当にうれしい。マルキューはエサのメーカーなので タックルの主要メーカーである「がまかつ」だけではない「シマノ」、 「ダイワ」などに所属する名手たちと対戦するのが今から楽しみである。 秋に向けてまた大きな・・・G1な目標が出来たのである。