新製品テストで痛感ふかせ釣りの基本の基本とは
鳥取県海士島のチヌ釣り
最近おどろいたことといえば、何と言ってもアメリカニューヨークで起きた同時テロ事件だろうか。
事件があった晩は残業をして帰宅し、テレビをつけてみるとちょうど事件が発生した直後。
映画のワンシーンでも見ているような映像が目に飛び込んできた。
最初は何が起こっているのかわからない。
もっと小さなビルに小型セスナ機が衝突したくらいに思っていたが、
それがニューヨークマンハッタンを象徴する貿易センタービルに
民間のジャンボ機が二機続けて衝突すると言うからショッキングだ。
私は2年前実際にこのビルの展望台に上ったことがある。
二つ並んでいることからツインタワーとも呼ばれ、まさにアメリカを代表するビルだ。
「信じられん!」。その後の報道で同時テロ事件と分かり、
全世界を巻き込んだ大きな国際問題として発展している。
私たちの日々の生活には何の変わりもなく平常どおりの営みが続けられているし、
ましてや釣りに何の関係があるのだろうかとも思う。
しかしよく考えてみると、今アメリカでは報復する方向で全世界が動き出している。
私たちが住む日本でもこの支援体制に国際協力するというのだから
まんざら無関心ではいられない。
いつ攻撃の鉾先が日本に向けられるやらも、全く日本は安全だとは言い切れないだろう。
ただ私は思う。ただ釣り好きなおじさんが思うレベルのことではあるが、
何で同じ地球上の人間がこうも憎しみ合うのか。
無差別に殺し合わなければならないのか。
全くその理屈が分からない。
今までの歴史、宗教、思想、民族いろいろあるだろうが、
だからこそ今までの歴史を見返って二度と人と人とが争わない平和がほしい。
最も単純でシンプルなことだから人間ひとり一人の意識で必ず出来ることだと思う。
私たちも無関心ではなく、こうした危機感を持ちながらも人を思いやり自然を尊重する
気持ちを持って日々の生活を送りたい。
地球上が平和だからこそ、私たちもこうして楽しい釣りが続けられるのであるから。
さて、ついこないだまで暑い暑いと汗をぼろぼろかきながら生活していたのが
嘘のように涼しくなってきた。
9月半ばだというのに「寒い、寒い」と人々のあいさつに交わされるようになり、
朝晩の冷え込みで辺りの景色も、海もグーッと締まってきた感じだ。
夏枯れ気味だった各地の磯からは、グレやチヌの便りが聞かれるようになってきた。
9月23日、毎年、年1回開催される釣り餌メーカーのマルキュー株式会社の
山陰地区モニター懇親会が鳥取市「海女島」(あもうじま)で行われ私も参加した。
この模様は本号にも掲載されているのでご覧いただきたい。
懇親会と言ってもただ釣りをして終わりというわけではない。
マルキューからは山陰地区の担当インストラクターである峯享男名人、
大阪支店長の佐藤さん、山陰地区営業担当の山野さんらが駆けつけ、
新製品の特徴を説明した上で今後の参考にと意見交換などがもたれる。
そして、地区のモニター同士と言っても普段はそれぞれに活動していることもあり、
こういう機会に釣り技術の交流を図れるのも有意義だ。
私が配合餌にマルキュー製品を信頼して使う理由は、
まず第1に環境に優しい天然素材100パーセントだからだ。
ただ作って売るだけの経営理念ではなく、
自然や魚相手に商売をさせてもらっているという観点から、
常にそれらを主眼においた商品開発が釣り人にとってもうれしい。
こんなエピソードを聞いたことがある。
今、会長で前社長の中村氏は商品説明をするのに
チヌパワーをバクバク食べて見せたというのである。
説明を受けていたインストラクターやモニターたちは、
驚きとともにその心意気と自信に感動したというのである。
研究スタッフは、よく釣れる餌の開発とともに海中で分解するまでの時間や
生態系に与える影響などを様々な視点から研究している。
このデータをビデオに収録し釣り人たちにも環境保全やマナーの理解を求めている。
マルキューの社員や物品には「感謝」と言う言葉や文字がよく使われているが、
「お魚さんに感謝」、「自然に感謝」、「釣り人に感謝」が
会社の理念に浸透している現れだろう。
私たち釣り人も「お魚さんに感謝」、「自然に感謝」の気持ちを持って
釣りを楽しみたいものである。
今回マルキューが新製品として持ち込んだのは、チヌの配合餌「銀牙」(ぎんが)。
黒っぽい斬新なパッケージデザインとネーミングが直ぐに目に飛び込んでくる。
さっそくオキアミ生3キロに銀牙を1袋を混ぜ合わせてポイントの海女島へ持ち込んだ。
オキアミは細かくつぶさないようになるべく原形をとどめるように手でほぐしながら混ぜ合わせた。
理由は、餌盗りが多いときは餌盗りの関心を捲き餌に向けさせるため、
わざと大きく目立たせるために原型のまま使う。
付け餌をカモフラージュするという考えだ。
私の撒き餌作りの基本は「素手で混ぜ合わせる」ことである。
いくつかの餌を配合する場合やオキアミを細かくつぶす場合などには
、スコップや器具などを使う場合もあるが仕上げはいつも素手で確認するようにしている。
利点は水の加減がしやすくムラのない完璧な捲き餌に仕上がること。
冷たいとか汚れるとか言う人もあろうが、
よく釣るための作業だから私の場合は何の苦にもならない。
海水などを汲んで横に置いておき時々手を突っ込めばOK。
これは真冬でも実行している。
さて新製品の銀河はチヌの配合餌にしては細かい粒子に仕上がっている。
吸水性がよく遠投性に優れている。
比重はチヌにしては軽い感じもするが、
流れ方をよく観察すると細かい粒子が煙幕となってかなり深い棚までスロープを作った。
これなら中層から下層へ広範囲の棚が探れそうだ。
チヌを視覚的に刺激する押しムギも配合されている。
においは独特で少しツーンと鼻を突くような酸味が感じられるが、
いやみな感じはなくチヌが好みそうなにおいだ。(あくまでもイメージとして)
「今の時期に・・・、チヌの新製品とはなー」と思っていたが、製品を使ってみて納得。
ここ山陰地方でも秋チヌ狙いにバッチリだ。
春のノッコ期、海底付近の底棚をダイレクトに攻める私の釣りイメージでは、
高比重のチヌパワームギ、オカラだんご、チヌパワーなどを中心に使う。
しかし秋の餌盗りの多い時期にはチヌを浮かせて釣るのが得策だ。
浮かせると言っても警戒心の強いチヌを上層まで浮かせるのには無理があるが、
このスロープ状に流れる銀河は下層から中層にグッとチヌを引き寄せる。
峯名人は2.5ヒロのハリスにジンタン5号から3号を2段打。
0.5ヒロから1ヒロの遊動部分を道糸で取ってウキ止めをセット。
風の影響や上潮、底潮を計算して捲き餌を投入。
3ヒロ前後の棚をキープして捲き餌と付け餌を見事に同調させた。
その両隣に峯氏の指導を受けながらマルキューの佐藤支店長、
営業の山野さんと3人の競演。山陰モニターの面々もタジタジである。
両型のチヌ、大アジ、ジベサ、手のひら級のマダイでアッという間にクーラーは満タン。
次々にチヌを引き寄せた。今回の実釣で多数のチヌの釣果があった。
しかし全員にチヌの釣果があったというのに、何と私だけチヌの釣果ゼロ。
これにはいくつかの反省点もある。まず一番重要なのは捲き餌と付け餌との同調。
ふかせ釣りの基本中の基本であり永遠のテーマと言ってもよい。
この基本が間違っていたのだ。チヌが釣れた棚はほとんど中層の3ヒロ前後。
中層を中心にスロープ状に広がる「銀牙」の実力を証明して見せた。
しかも上層に群がるダンダラ(石鯛の稚魚)が中層に浮いてきたチヌに
恐れて付け餌を追っていかない。
この撒き餌の特徴にマッチした仕掛け、釣り方をした人にチヌの釣果があったわけだ。
私は狙う棚が深すぎた。
釣り始めた序盤には30センチ級のジベサ(ハマチの稚魚)、
30センチから40センチ近くはあろうかという大アジが、ほどよく竿を曲げて楽しませた。
ここで私は、どうしても固定観念から「チヌは底棚」がイメージとして離れない。
竿1本分のハリスを完全フカセ。
ウキ止めなしのスルスル仕掛けで釣っていたが、浮力5Bのウキ、
落とし鉛に2B2個の段打、道糸にウキ止め、
ハリからウキ止めまでを5ヒロから6ヒロにセットして底棚狙いに切り替えた。
餌盗をかわすために捲き餌から遠く離して投入、
棚をキープしてから撒き餌付近に同調させるイメージだ。
しかし結果は外道のフグ、時々気持ちよくウキを消し込んだかと思うと、
この棚でもジベサや大アジが竿を絞り込んだ。
これらも釣れるペースは今ひとつ。
この状況から棚とりと捲き餌、付け餌との同調が重要であることをあらためて痛感。
よく分かっていることなのに固定観念は時として視野を狭くし、イメージすべてを狂わす。
固定観念は釣りには厳禁と反省しきりだ。