小島一文の
“G1フィッシング”

G1フィッシング

イメージフィッシングで勝ち取ったG杯全国大会出場切符

H9G杯チヌ中国決戦(阿多田島)

 去る、平成9年4月22日。平成9年度のG杯全国がま磯(チヌ)選手権大会の出場者を決定する中国地区の最終予選大会が広島県大竹市の宮島、阿多田島周辺の磯で行われた。
 この大会には昨年各予選を勝ち抜いた26人の選手たちが参加した。昨年の予選は西中国予選1部(100人参加)同二部(60人参加)東中国予選(100参加人)それぞれ参加者の1割の割合で勝ち抜いた精鋭たちである。
 私も西中国予選2部に出場して6人のなかに勝ち残り今大会に駒を進めていた。今回はこの模様をレポートします。

 午前4時、あいにくの雨が降りしきる中、受付が始まる。それぞれが抽選して対戦相手が決まっていく。私は最後から二番目のクジを引き、久安さん(福山市)という29歳の方と対戦が決まった。

 今大会のルールは、
対戦はマンツーマンの勝ち上がり方式。13人が勝ち残る2回戦は、最終組が3人で対戦する。2回戦で相手に勝てば全国大会の切符が手に入るが、最終組は3人の内2人が当確となり中国の全国出場枠は7人である。

 1回戦、6時30分~9時30分 3時間。2回戦、11時30分~14時30分 3時間で1時間30分経過(3人の場合は1時間)したところで相手と場所を交代する。
 場所の決め方は、抽選により決定した組み合わせの順番に船頭が磯を決定する。磯上がりすると、まず対戦相手と境界線を決めておく。そしてどちらを選ぶかは、クジの若い方に優先権がある。
 審査方法は、抽選時に配布された割りばし以上のチヌの総重量で決める。資源保護のため、釣ったチヌはスカリなどで生かしておいて、検量後に放流する。予選レベルでは今回初めての試みだが、死んだチヌは検量外になるので、いつもと勝手が違って気を使った。今後はこのようなスタイルが主流になるだろう。

 午前5時30分、26人の選手が2隻の渡船に別れて港を出た。われわれの船は宮島方面に向かい、私は最後に「茶の子」という磯にあがった。
 「茶の子」は過去にも何度かあがったことがある。一昨年の平成7年5月には同じく予選大会で2時間に30匹以上のチヌを釣り上げたことがある。宮島では一級磯だ。
 一回戦は、最初、フグの猛攻で手を焼いたが、23センチから35センチのチヌを10匹ものにして10匹対3匹で検量するまでもなく勝ち上がった。ルール通りすぐにチヌを放流していったん渡船に乗り込み港に帰る。

 私は最終くじを引いていたので2回戦は3人で対戦する組だ。相手は下久保さん(広島市)中村さん(広島市)の2人。下久保さんはG杯チヌ優勝、同グレ準優勝の経験を持ちそのほかの競技会でも上位にランクされる強豪だ。また、中村さんもG杯出場経験を持ち地元で磯の状況などを熟知した強敵だ。 午前11時、宮島手前の「可部島」にギャラリーと共に上がる。 図のように境界線を決定して、クジの若い下久保さんから場所を決めた。午前11時30分競技開始。私は、中央の大名岩というポイントから釣り始る。

 ここで少し今回この大会に出場するために描いていた私のイメージと作戦を説明しておこう。
同じチヌ釣りといっても、山陰海岸とは全く違ったイメージだ。それに競技ということで、限られた時間内に相手選手に勝なければならない。普段のプライベートな釣りイメージや考え方は通用しない部分がある。
 例えばマキエだ。バッカン40センチにパンパンに詰め込んだものを競技時間3時間でまききる。マキエは2回戦まで勝ち上がることを想定して前日から作っておく。今回使用したマキエは、オキアミ生9キロ、集魚剤にマルキューのオカラだんご6、チヌパワー3、グレパワースペシャル3を大きな練り箱に一緒に入れて混ぜ込む。想像を絶する量だが、これで40センチのバッカン2杯分である。前日から作っておくのは、混ぜて時間をおいた方がオキアミと集魚剤とのなじみがいいことと、当日のあわただしい日程でもあわてることがない。チヌ釣りにグレパワースペシャルを使用したのは、釣れる棚が浅いことをイメージしていつもより比重を軽くしてみた。
 仕掛けも競技に対応している。図の仕掛けだが、ハリスを6ヒロとって道糸と直結し、ハリスの中にウキを通す。針を交換してどんどんハリスが短くなっていっても、クッションになるウキゴムをずらしていけば、いちいちハリスを交換することなく、いつも同じ棚がキープできる。この仕掛けなら固定、誘導、スルスルと自由自在だ。
 そのほかにも瀬戸内海のこの地方独特のものがある。この日は大潮まわりで干満の差が3メートル以上あること。釣れるチヌは2,30センチ代の小型が数多く釣れること。状況に応じては水面までチヌが浮いてくることなど、山陰地方とは全然違う状況だ。

 最初に「三角」に入った中村さんがヒットさせて口火を切った。すぐに下久保さんも釣り上げ、一人出遅れの状態。私は、一回戦で、ヒットしたチヌが1ヒロから2ヒロで釣れていた状況から、ウキから下を2ヒロにし、ウキ止めなしのガン玉なしの軽い仕掛けでスタートしていた。しかし、付け餌がとられることなくアタリもない。そのうち中村さんが2匹追加した様子。そこでクッションのゴムを1ヒロ上げてウキから下を3ヒロにした。その3ヒロの中間にガン玉5号を1個打った。するとすぐにヒット。その後もう1匹小型を追加して、さらに1ラウンド終了間際に40センチを釣って3匹。下久保さんは後が続かず最初の1匹のみ。中村さんは順調に伸ばして5匹。
 1時間後、場所を交代して2ラウンドに入るが、アタリが止まり全員が苦戦。それでも、下久保さんが2匹と私が1匹追加して、中村5匹、小島4匹、下久保3匹、魚の大小もあるので全く勝負の行方は分からない混戦となった。

 最終ラウンドでもチヌの食い気がなく餌取りもいない状態。ガン玉をBに変えて底まで付け餌をもっていくがアタリすらない。考えられるありとあらゆる方法を駆使し、何とかそれぞれ1匹ずつ追加して競技終了。スカリを持ち寄ってみると、チヌのサイズはみんな似たり寄ったりで検量するまでもなく釣った匹数で勝負がついた。
 私は中村さんに負けたものの下久保さんに勝ち何とかぎりぎりで、2年連続2度目のG杯チヌの出場権を得た。

 私が、競技に限らずいつも心がけていることは釣りイメージを持つこと。競技では相手となる選手のホームグランドが会場になることが多く、その釣り場を釣りこなし、その相手に勝つには並大抵のことではない。その場所や過去の大会のデータ、釣り人の情報などを材料に自分の釣りイメージを創り上げていくことだ。私たちサラリーマン釣り師が、下久保さんたちのように年間200日以上も釣行するという、プロのような人と互角に対戦するには、毎日イメージの中で釣行する事が大切だ。イメージなら海のシケも気にせずに年中無休の365日釣行だ。こうした毎日のイメージフィッシングの積み重ねが勝利を呼び込だと思う。

 一口に全国大会というものの、昨年の西中国予選から2年がかりのイメージ・トレーニングでやっと手に入れた、まさに「G1」な切符である。

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