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メジャー大会は情報の源だ!

報知グレ大会

報知グレで悔しい3位

 11月17日、18日の両日、愛媛県宇和島市の日振島を会場に「第28回報知グレ釣り選手権、マミヤ・オーピーカップ」が開かれ本大会のシード権を取得していた私も出場した。この大会は当初10月17日から開かれる予定であったが、台風の影響で延期となりウイークデーの開催となった。私たちサラリーマン釣り師にとっては、ウイークデーを2日休んで釣りに行くのは、非常に困難なことである。しかしシード権を取得していることもあって、なんとか調整し出場できるように努力した。私の今の業務は休日のイベント開催や行事に出勤することが多いことから、その代休を取得して出場が可能になった。それにしても職場の上司や同僚の理解には感謝しなければならない。
 結果は、昨年の6位入賞を上回る3位。来年のシード権を取得することが出来たものの展開としては初のビッグタイトルに手が届きかけていただけに悔しい3位となった。試合は、低気圧の影響で北西の季節風が強まり、3回戦からは昨年同様、湾内の防波堤での戦いとなった。今年は規定サイズなしの10匹の総重量とルールー改正され、少しでも型のいいグレを狙う戦いとなったが、防波堤ではさほども差がつかず僅差で勝敗が決まる結果となった。準決勝は3人2組の計6選手が同じ防波堤に横1列に並んで競技開始。私たちの組は、わずか80グラム差の中に3人がひしめき、私は上位と50グラム差で敗れるとともに大変な審査員泣かせの検量となった。

全国には上には上が・・・

  さて、この報知グレ釣り選手権大会には今年で5回目の出場となるが、日程をやりくりしてでもどうしても出場したいわけは、大会のタイトルだけでなくもう一つ大きな魅力があるからである。その魅力とは全国の最新グレ釣り情報がこの大会を通して得られるからである。釣り技はもとよりウキ、糸、竿などのタックルの情報から釣行時のエピソードなど幅広い。タックルなど各主要メーカー所属の名人の出場も多く、普段地方にいる私たちにとっては新鮮な情報ばかりである。まさに「目から鱗が落ちる」連続なのである。また、ビデオや雑誌でしか見たことがないそれらの名人さんを身近に感じるのもこのときである。
 今回は和歌山の藤原義雄名人にいろいろお話を聞かせてもらった。本当に気さくな方で私たちにも親しく話しかけていただき大感激である。見かけには穏やかなイメージであるが、釣りに対する情熱は人並みならぬものを感じる。話の中で、「自分の仕掛けが海の中で実際にどのようになっているのか」について、今年は潜水具を付け実際に水中観察したのだという。「やろうと思ったことはとことんやらへんと、気が済まない性格ですねん」と本人がいうように、とにかく半端ではないのだ。私はいつも水中の様子をイメージという言葉で片付けてしまうが、藤原さんのように実際に水中で観察したデータがあれば、その言葉にも説得力がある。このことは雑誌にも紹介しておられるが、ご本人に会って直に話が聞けたのだからこの上ない収穫である。その他、若いころ1ヶ月の間、四国を釣り歩き一度も家に帰らなかった話や男女群島に出没する幽霊の話など、そのどれをとってもスケールの大きさには驚かされる。全国には上には上がいるもので、たかが山陰でちょっとよく釣るからといって井の中の蛙になってはならないとつくづく感じる。常に研究し情報を追い求めてこそ、また、それが釣りの魅力となっていくのである。

なぜインナーではなく外ガイドロッドなのか

 藤原さんとの雑談の中で、最近流行のインナーロッドの話題が出た。この大会出場選手の中にもインナーロッドを使用する選手は多い。インナーロッドの一番のメリットは道糸の穂先絡みのトラブルが全くないことである。あらゆる自然条件の中、短時間で結果を出さなければならないトーナメントでは、わずかな時間ロスが勝敗を分けてしまうこともあり、トーナメントでもインナーロッドを使う選手が多くなった。しかし、藤原さんも私も外ガイド仕様のロッドを愛用している。それはなぜなのか。それは、いくら各メーカーのインナーロッドが進歩したといっても外ガイドロッドにしかできないことがあるからだ。 その第1にあげられるのが穂先の感度である。私が得意とする管付きウキを使った沈め釣りは、ウキを沈めるとき、道糸を送り込むとき、アタリをとるとき、付け餌の有無を確認するとき穂先の繊細な感度が要求されるのである。例えば、浮いている管付きウキをゆっくりひっぱて沈め込むには感度の良い穂先でないとうまく沈めることができない。また、いったんなじんだ付け餌の有無を確認するにもインナー穂先では限界がある。
 第2には投入時や仕掛けを送り込む際の道糸の滑りにも差がでる。小さな軽い仕掛けを思いのポイントに流し込むには糸の滑りが重要になる。私は、インナーロッドのメリットを認めながらもやはりトーナメントではこれからも外ガイド仕様のロッドを使うだろう。インナーロッドにできて外ガイドロッドにできないことはなく、前述したようにインナーロッドにはできないが外ガイドロッドにしかできないことがあるのである。穂先が絡むトラブルは、使いこなしや集中力など釣り人側の努力で回避できる部分であると私は考えている。しかし、素材や構造、製法技術によるそのロッドにしかできない性能があるのだ。藤原義雄さんは「がまかつ」のフィールドスタッフであるが、同じ「がま磯」を愛用する私も共感する部分が多かった。同じ外ガイドロッドでも、「がま磯」の穂先感度は抜群であり、竿の号数が1.25号から1.75号に大きくなってもその穂先部分の感度はほとんど変わることがない。今の私の釣りにピッタリマッチするアイティムの一つなのである。
 道具というのは、あるメリットを生かそうとするとその反面デメリットも生ずるものであるが、そのデメリット部分を補うために釣り技術を磨き、その他の道具を考案し使いこなしていくのである。人間付き合いもそうであるように、道具との付き合い方も悪いところを責めるのではなく良いところを活かし、悪いところは自分の良いところで補い、かみ合ってこそ大きな力が発揮できるのだと思う。

 本大会は今年も天気にたたられたが、主催者や大会役員、選手の協力で無事名人戦まで終了できた。選手権で優勝した山中雅尋選手(大阪府)が矢部卓名人(岡山県)に名人位をかけて挑戦したが、矢部名人が見事初防衛を果たした。
 報知グレ釣り選手権は、現在たくさんあるグレ釣りトーナメントにあっても、その先駆け的存在であり、最も歴史のあるトーナメントである。報知の名人位は、私が手にしたい夢のタイトルの一つであり、なんとしてでも山陰に持って帰りたい。

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