魚影の濃さは別格・肥前鳥島で爆釣モード
浦島太郎になっちゃった
1月、2月の山陰地方の磯釣りはシケの日が多く制約が多い我慢の時である。渡船の休業期間がある地域や隠岐へのフェリーが1日1便となるなど、磯から釣り人を遠のけてしまう。しかし私にとって、この時期こそが年間を通じ最も本能をかき立てられる時きでもある。そう、男女群島など九州の離島で大型尾長グレの最盛期を迎えるからである。私が九州の離島に参戦しだしてもう10年になるが、一度味わったらもうやめられないのがこの釣りである。グレの魚影、サイズ共に、そりゃーもう桁外れなのである。その中でもやはり男女群島はだれもが認める横綱級だ。渡船も年々大型・高速化され少々シケていても回復の兆しがあれば欠航することはない。それだけに連日釣り人が入って釣り荒れを懸念する向きもあるが、それでもやっぱり「男女は男女」。60センチを超すようなビックサイズにはお目にかかれなくても、40センチオーバーのグレをふた桁も釣れば、私たちにとっては大満足なのである。それがである。今シーズン初めての離島遠征で夢のような出来事に遭遇したのである。竜宮城の浦島太郎になったような気分を味わった私は、こっちに帰っても当分の間興奮が冷めやらずドキドキして困った。
夢の肥前鳥島へ
釣行日は1月28日、29日の2日間。今年の冬は大きな寒波が入ったり出たりで天候状況が心配。28日の早朝は島根県西部にも積雪があるなど、道路は圧雪凍結状態でノロノロ運転が続いた。しかしどうだろう。高速道路に入り山陽方面に抜けた途端、晴天のぽかぽか陽気。風も穏やかだ。もちろん雪などない。それでも心配で途中、渡船店に電話で確認すると「凪になりました。小島さんのグループは鳥島に向かいますからなるべく速くきてください」と返事が返ってきた。同行のメンバーたちに伝えると「よっしゃー」、「すげー」とそれぞれにリアクションを見せた後、それからは気合い入りまくり状態である。私を含めて今回のメンバーは、まだ鳥島に渡礁したことはない。今までに釣行した人の話や雑誌の記事などから「男女群島よりもさらにすごいところ」という認識は、だれでも持っている。だれもが一度は行ってみたい島なのである。特にこの冬場のシーズンに渡礁するには、よほどの凪状態でなければならないし、たくさんある許可船の中で鳥島に向かってくれる船に乗り込めるとは、本当にラッキーである。思ってもみない幸運に、みんな気合いが入らないわけがないのだ。
ポーターが2人いて安全
今回お世話になったのは、男女の許可船の中でも「釣らせる船長」と評判の高い「ばらもん」(電話0956-58-4901)。今シーズンから息子の若船長が誕生して2隻体制でやっている。鳥島組はその若船長に案内してもらうことになった。午後5時。12人の釣り人を乗せて船は出港した。所要時間約4時間。エンジンがスローになったので急いで支度して船外に出る。ポーターに「鳥島に来てるのか」と訪ねると「はい、北岩に着けようとしています」。すると船長から「小島さん4人準備して」と1番目にコールがあった。北岩は磯全体に海苔が生えヌルヌル滑ってスパイクがきかない。ポーターからドンゴロスが手渡され、これを敷いて足場を確保する。夜の磯渡しにもかかわらず手際よくスピーディーだ。バラモンはいつも2人のポーターがいて、彼らがてきぱきと渡してくれる。山陰地方の渡船では考えられないことだが、手ぶらで桟橋の上を渡るようなもので意外と楽である。
中途半端な仕掛けは禁物
さあ、憧れの鳥島に渡礁した。この先、もう二度と上がることができないかもしれない。一生に一度のことかも・・・。天候が変われば直ぐに撤収かも・・・。などと考えながら直ぐにマキエの準備、仕掛けの準備に取りかかる。
まずマキエは、オキアミ生3キロにジャンボ4キロをやや海水を多めに入れてシャーベット状に解かしていく。私は夜釣りの場合集魚材は加えないことが多い。新鮮なジャンボがシャーベット状に解ける時に発する光を利用するためである。この光は集漁効果を高めると思っている。それと離島の夜釣りは、まず磯際から攻めることが多いのでマキエを遠投する必要がない。
次に仕掛けは図の通りである。男女群島はもとより離島の夜釣りでは中途半端な仕掛けは禁物。とにかく太仕掛けで攻めるようにしている。過去には12号ハリスを一瞬のうちにぶち切られた苦い経験があるからだ。それならばもっと太仕掛けでと思われるが、竿、リール、道糸、ハリなど仕掛け全体のバランスを考えた結果この仕掛けに落ち着いた。サラシが強い時や潮が速い時は、水中ウキや時には15号の丸オモリを使用して磯際に止めて釣るような場合もある。今回鳥島では潮流が緩く海も穏やかだったので図の仕掛けで対応した。また、手返しを速くするためにハリスをいつもより短めの1ヒロにし、付け餌のなじみも速くするために2Bのガン玉を1、2個付けた。はじめは遊動部分を2ヒロとって3ヒロで釣りはじめた。
1投目から爆釣モード
渡礁して10分とかからずに釣りを開始する。これが本能というのだろうか。辺りからグレの気配がして、いてもたってもいられないのである。体が自然に急がすのである。前述のマキエを足下の磯の上に撒く。マキエは波の上げ下げで海中に吸い込まれるように撒くのがよい。マキエの音を魚に警戒されることもなく、狙いの磯際に効かすことができる。また、磯がジャンボの光で光っているので、次のマキエの目標点になったり道糸のふかし具合の目印にもなる。
マキエが海中に広がるのを身を乗り出して注意深く追っていると、撒いたジャンボが「ギラ、ギラ」と海中で踊るのが見える。何やら魚が反転しているようなのである。すると第1投目のウキがジワジワーっと海中に入っていった。竿を立てるとギュー。なんと第1投目から40センチをはるかに超える尾長グレがヒットしてきた。さあ、ここからである。私が本来持っていたのだろう狩猟本能をかき立てられたのは。1匹目をナイフでしめて、次の仕掛けを投入するとすぐにアタリだ。また次ぎも、また次ぎも、また次ぎも・・・。型は40センチ級であるが尾長グレの入れ食いである。途中、しばらくアタリが遠のくときがあったが、ウキ下をこまめにかえて流してみるとまた喰いついてきた。夜釣りでこれほどアタリがあったのは初めてだ。腹が空くとか、のどが乾くとか、眠たいとかそんなことは全然思わない。釣れても釣れても、またすぐに次の1匹を求めて仕掛けを投入していった。手返しを速くするために50センチ未満は全て抜き上げ。ただ、いくら釣れるからといって釣った魚を粗末にしては申し訳ない。1匹1匹全て手際よくしめてドンゴロスに収めた。「さすが鳥島、グレの魚影は別格だ」。これほど釣って欲をかくのも甚だしいが、玉網を使うような大グレが喰ってこない。タナをわざと深くし、撒き餌から少し仕掛けを離してなじませたりするが、40センチ級がすぐに喰いついてくる。こうなると普段コッパグレに手を焼いて、良型が釣れないような感覚になってしまう。なんと贅沢なことに40センチから時には50センチもあろうかという尾長グレが、この時ばかりは餌取り状態なのである。それでも28日午後10時頃に55センチ、29日の午前6時頃には60センチジャストを釣り上げることができた。夜が明けても魚影は衰えない。さすがにタナはやや深めになり、アタリがあってもハリに乗らないこともあるが、40センチ級のグレはポツリ、ポツリと釣れ続く。昼間でも、いつ60センチオーバーが来ても良いように7号ハリスから落とさなかった。
離島釣行新記録
船長の予想ではこのまま29日の夜も鳥島で釣りができそうだと言っていたが、結局天候が急変して29日の午後7時で撤収となった。メンバーたちは良型尾長グレの爆釣にすっかり満足したのと、不眠不休がピークに達し疲れたのだろう、内心ホッとしたような表情を見せた。私はもう一晩できそうだというので、夜釣りの仕掛けを念入りにチェックするなどはしゃいでいただけに、後ろ髪を引かれるような思いも残る。またあの爆釣モードが再現されていたかと思うとほんと残念だ。しかし私一人の釣果はグレ82匹、ヒラマサ1匹のおまけ付き。型は全て40センチオーバー。9割が尾長グレ。もちろん数では離島釣行自己新記録である。これだから釣りはやめられない。