オフシーズンに基本と原点を見つめ直す
隠岐・知夫でグレ爆釣
-知夫里島でグレ爆釣-
トーナメントシーズンが終了し、来春のチヌ大会までトーナメントに関しては、ひとときのオフシーズンといえるだろう。オフシーズンには、トーナメント抜きのプライベートな釣りをするのであるが、いくらトーナメントでタイトル獲得に情熱を燃やし、それを目標にしているからといって、普段の釣りを軽く考えたり、楽しくないと感じることはない。むしろ、このオフシーズンの釣りこそがトーナメントの原動力・活力となってくれるのである。なぜなら釣りの基本に立ち戻させてくれると同時に、原点であるところの釣りに対する純真な気持ちを呼び覚ましてくれるのである。
基本の上に応用はある
トーナメントで必要とされるのは、限られた時間と条件の中で最善の結果を出すことの出来る順応性、適応性の高い応用を駆使した釣りが求められる。時には一般的なセオリーとは全く逆のことをしなければならない場合もある。しかし、応用は基本があって初めて生み出されるものであり、トーナメントの”強さ”は、基本修得の積み重ねによるものである。だからこそ、多くのスポーツがそうであるようにシーズンオフにそのトレーニングを積むことが大切であり絶好のチャンスなのである。 例えば、”グレを喰わす”という目的のために、最低限必要な知識・技術は何であるのか、というところまで戻って自分の釣りを点検してみる。そこから一つ、また一つと、潮・風・タックル・エサなどの条件の変化に応じた釣りへ展開していくのである。
初心に帰って再スタート
トーナメントは勝負の世界である。優れた釣り人たちと競い合い、自分を磨き、限界に挑んでいくのは、想像以上のエネルギーがいる。しかし、ただ勝負だけにこだわっていたのではこのエネルギーは生まれてこないと思う。なぜ自分はこの厳しい勝負の場にいるのだろうか・・・と、立ち止まって考えてみると、最終的には ”釣りが好きだから”、”楽しいから”という原点にたどり着く。勝負の世界では、見失いがちになってしまう純粋な思いが結局は大きなエネルギーを生み出す源になっていることに気がつくのである。だからこそトーナメントでどんな結果が出ようと”釣りをやっていて良かった”と心から思える自分がある。そして次へ向けてさらに上を目指してチャレンジしていくことが出来るのである。だから私は、このシーズンは初心に帰り、原点に帰ってエネルギーを充電する最も大切な時であると思っている。
まずは知夫里島へグレ狙い
さて、この基本と原点に帰るため、平成10年12月26日、27日の2日間で隠岐島前知夫里島へ、職場の同僚2人を引き連れてグレ狙いに出かけてみた。知夫里島は私にとって未開拓な釣り場である。隠岐のほかの島々に比べて極端に釣行回数が少ないが、隠岐なら知夫里島しか行かないと言うファンもいるほどで、グレの魚影はすこぶる濃いときいている。特に今年は寒の時期に入って大型混じりで数も出ているという。
初日は知夫里島でも超一級磯の「立ガ崎」「立の後」からさらに奥まった無名磯に渡礁させてもらった。立ガ崎、立の後にはすでに先客がいたこともあるが、私たちは磯の状況がよく分からないのでここは船長を信頼してお任せすることにした。幸いにもこの日は今の時期にしては風が穏やかで、それでありながら適度なうねりがあり、いたるところにサラシができている。撒き餌や仕掛けの支度をはやらせるには十分の”釣れる”気配がある。この磯は横に広く足場も良いので3人なら余裕で釣り座が確保できる。午後1時、海の様子を見るためにサラシの根本に撒き餌を入れた。これといった餌取りは肉眼では確認できない。同じくグレも肉眼では見えないが、図の仕掛けがサラシの切れ目にできた潮目に入るとウキがすーと消し込まれた。グレだ!上がってきたのは25センチほどだが2投目のアタリだけに幸先がいい。撒き餌がサラシに乗って広範囲に効きはじめたのか活性が良くなってきた。15メートルほど沖のサラシで出来た潮目からつぎつぎにグレを引き出した。型は27,8センチが中心ではあるが30センチオーバーも姿を見せはじめた。数はアッという間に二桁に達した。やはり魚影は濃い。
サラシの下から口太グレ46センチ
午後4時、夕マズメが近づいてきた。せっかく隠岐にまで来たのだからビッグワン。40センチオーバーがほしい。沖の潮目は相変わらず30センチ前後のグレのアタリはあるものの、ここで思い切って足下狙いに照準を合わせた。足下周辺は大きなサラシで一面が真っ白状態であるが、磯際はストーンと切れ込んで大きくえぐれていると読んだ。その読みはサラシが真下へ吸い込まれれる所があることに気づいたからである。このままの軽い仕掛けでは付け餌をグレのタナまで運び込むことができないので、仕掛けを図のように変更した。ガン玉を付けて仕掛けを重たくしたとはいうものの、やたらめったら仕掛けや撒きエサを入れていたのでは大きなサラシにもまれてアッという間に沖に引き離されてしまう。サラシをよく観察していると一瞬息をつくときがあるので、そのときを逃さずサッと仕掛けを磯際に垂らす。撒き餌は上がってきた波に吸い込ませるように岩の上に撒く。狙いは的中した。大きなサラシが一瞬おさまり青白くなった磯際を漂うウキのトップが、波間に押さえ込まれ付け餌がなじんだことを知らせた。すると次の瞬間、スパッとウキが引き込まれ道糸が走った。竿を立てると今までとは全く違う強烈な締め込み。竿の角度に注意して耐えていると白い泡の中からブルーが鮮やかな46センチの口太グレで姿を出した。同じ要領で6匹のグレを抜き出し、そのうち40センチオーバーが3匹いた。2日目も天候に恵まれ「マルヒのハナレ」に渡礁。納竿の午後2時まで30センチ前後のグレと戯れ大型クーラーは満タンになった。
知夫里島は現代人のオアシス
今回お世話になった渡船は「幸希丸」。船は中型だが磯付けはうまい。磯渡しのほかに民宿の手配、民宿までの移動の手配など至れり尽くせりの対応をしてくれる。民宿はどこも親切で料理が豪華と評判である。島全体がのどかであり、この島にはこの島にしかないリズムみたいなものがあるのだろうか。魚影の濃さもさることながら、隠岐といえばこの島にしか来ないという人たちの気持ちが分かる。ストレス社会でいきる私たちにとっては一時のオアシスのような島である。冬期は船の便数が少なくなり不便であるが、ゆっくり時間をかけるのもいいだろう。時にはこの島のリズムに自分を合わせてみるのもいいだろう。そして釣りの基本と原点を養い、初心に戻るには絶好のフィールドである。