小島一文の
“G1フィッシング”

G1フィッシング

夏、夢物語!G杯アユ西日本大会出場

-兵庫県揖保川-

暑い夏、アユ釣り師たちも熱く燃える
 ほぼ平年並みに梅雨が明けいよいよ夏本番がやってきた。
気象台の長期予想どおり今年は猛暑になりそうだ。
例年この時期は猛暑を避けて磯に出かける回数も少なくなるものだが、
釣に出かけないと禁断症状が出てしまう私は、
灼熱地獄もなんのその週末になるとせっせと海に向かったものだ。
「むかったもの」?。
そう、これは去年までのことで、もう過去のことである。
今年から本格的にアユ釣を始めた私は今、アユ釣に夢中なのだ。
まだまだ素人で仕掛け作りもままならないが、
何かを追い求めるときと言うのは本当に新鮮で人間が素直で純粋になれるときだ。
私は少年の心になりっぱなしで毎日が楽しい。
アユは年魚で秋にはその短い一生を終えてしまう魚だけに、
この猛暑続く夏に一番、輝きを増すときだ。
梅雨明けして間際のこの時期がアユ釣の最盛期と言ってよいだろう。
だからアユ釣り師たちは、この夏の暑さ以上に熱く熱く燃え上がるのだ。

夢を与えてくれる主催者に感謝
 さてその代表格と言うべきか、アユ釣にのぼせた者たちが集う
「G杯争奪全日本アユ釣り選手権西日本大会」が
7月22日、23日、兵庫県の揖保川で開催され、
幸運にも西中国大会を優勝した私もこの大会に出場した。
「のぼせた者」という表現は、私以外の選手には失礼なのかもしれないが、
シーズンが限られ、またそれが短いだけに
グレ・チヌ大会などとはまた違った独特な雰囲気がある。

22日夜には各選手役員が一同に会して懇親会が設けられ、
翌日行われる試合の健闘を誓い合った。
話に聞けば今大会出場選手の多くは常連で
何度もG杯や地区予選を勝ち上がってくる人たちがほとんどだという。
私は何度か磯の方でG杯に出場した経験を持つが、
さすがに選手の顔ぶれは全く知らない人たちばかりだ。
逆に私を知るものなど誰もいない。
アユ釣だけに釣人生をかけているベテランも多く、
私などはただただ新参者にすぎない。
それでも主催者である株式会社がまかつの社長様を始め、
役員スタッフの中には面識のある方もあり、
ここでも「おいおい、どういう訳だ」などとジョークで冷やかしを受けたり、
「がんばれよ」と励ましをいただいたりして次第に緊張感もほぐれる。
驚いたのはまだこの上に全国大会がひかえており、
いわば予選の段階だというのにその規模は全国大会クラスだ。
自宅からの交通費以外の費用はすべて主催者持ちであり、
あらためて勝って上部大会に出場することにステータスを感じるものだ。
そして新しい経験と新しい人との出会いがそこにあり、
より人生を豊かなものにしてくれることに感謝したい。

揖保川は水質浄化傾向・・・天然遡上も
 さて大会会場となる揖保川は、
一般の方には「揖保そうめんで有名な・・・」と言えば「ああ、あのー」と
お分かりいただける方も多いはずだ。
アユ釣の川としても有名でここのアユは嵯峨山太郎と
呼ばれ多くの太公望たちに親しまれている。
その流れは約70キロに及び私の目にもアユ釣ポイントが豊富だという印象が強い。
つまりアユがなわばりとする良い石(瀬)が多いように思う。
また、アユがすむ清流というと人里離れている印象があるものだが、
今大会の宿舎となった新宮町周辺は、
まちが比較的開けており住宅なども多い。
それなのに水は非常にきれで
川周辺の人たちがこの川を大切にし誇りに思っている現れを感じる。
近年では「魚の育む流れづくり推進対策事業」や「下水道整備事業」などにより、
目覚ましい水質の浄化が見られるようになったという。
人工産アユの放流育ちがほとんどだというこの揖保川にあって、
これらの公共事業などにより近年天然アユの遡上が確認されている。
中国自動車道(山崎IC)や山陽自動車道(竜野IC)が
川の直ぐ近くにあり遠方からも便利が良く、
私が住む島根県宍道町からでも、
今年開通した高速道路を利用すれば約2時間30分で到着する。
ちなみに入漁料は、日券3,300円、現場日券4,900円、年券13,000円(写真が必要)。

10尾早掛けポイント方式
 西日本大会は、北陸から中部地方の西日本の
各地区10ブロックから勝ち上がった73人とシードや
推薦選手5人を加えた計78人で競われた。
試合方法は、選手78人を8から9人の9ブロックに分け3回戦を行う。
1回戦の試合時間は1時間30分。
G杯の審査は「早掛けポイント方式」を採用している。
この方法はアユを釣りすぎて場荒れを防ぐための配慮だ。
各ポイントエリアを各ブロックに分かれた選手が
ローテーションで使うためでもあるが、一般の釣り人への配慮からでもある。
今大会は川の状況が良くアユが良く掛かると言うことで10尾早掛けで行うことになった。
つまり規定時間内にオトリを含む10尾を掛け、
先にスタート地点に戻ってきた者から、10ポイント、9ポイント・・・とポイントが与えられる。
時間内に規定数に満たなかった場合は、
オトリを含む総尾数が多いものからポイントが順に与えられる。
予選は3回戦のポイント合計の多い選手人から
3人が勝ち上がりとなり決勝戦に進出する。
決勝戦は9ブロックからの勝ち上がり3人ずつの計27人が、
9人3ブロックに分かれて競う。
ブロックごとに各エリアで2時間釣り、おとりを含む総尾数の多い順に5人
、合計15人が全国大会の出場権を得る。
決勝は同尾数の場合は釣果の総重量で決する。 

さい先よいスタート、しかし・・・
 私は抽選の結果ゼッケン7番、第1ブロックとなった。
釣るエリアは中国自動車道の高架下上下流が指定された。
主催者が用意した車で大会本部を出発。
各エリアにはすでに大会役員がスタンバイしていてオトリのアユを準備している。
ここで1回戦毎にもう一度抽選し抽選の順番にオトリをもらってスタートする。
15秒間隔に選手が送り出されると
エリア内の思い思いのポイントに釣り座をかまえて釣り開始である。
9人が竿を出すには充分広いエリアではあるが、
その中でもアユが掛かるポイントはある程度絞られてくるし、
一般の釣り人もたくさん入っているので、
やはりポイント選びとその駆け引きが勝敗を分ける。
相手との間隔は、だいたい竿の2本分程度離れて釣るのが暗黙のルールのようだ。
経験のない私はすべてが初めてのことだ。
ベテラン選手たちは大会に使うエリア内の情報も豊富で、
迷いもなく一直線に自分の釣り座を決めていく。
1回戦、午前6時15分スタート。
6番クジの私は、他の選手の動きをうかがいながら
エリア内の最上流部にある堰堤の落ち込みを狙うことにした。
経験のない私なりにイメージしたのは、
朝一番はまだアユの追いが悪いので流れの速い瀬のポイントよりも、
ある程度水深があり流れの緩やかな流れの落ち込みにアユがいるだろうと考えた。
良さそうな瀬のポイントには若い番号の選手がすでに入っていることにもある。
竿を立て気味にしてオトリを堰堤ぎりぎりの落ち込みへ泳がすと
ススッとオトリに変化があった。「追われている」。
アユがいることが確信できて辛抱強くオトリを操作していると待望のアタリが出た。
慎重に引き抜いてなんとか1尾目をキープ。
どうなるかと不安いっぱいだったので、正直、この最初の1尾目をキープして安心した。
同じように堰堤付近を泳がせ釣りで狙う他の選手も何匹かをキープしているようだ。
しかし私には次のアタリがなかなか来ない。
わずかしかない時間は刻々と経過していく。
釣りをしている1時間、2時間が何と早いことか。
前後左右、周辺をくまなく泳がすが、
結局4尾釣ってオトリを含む6尾の成績で1回戦を終了した。
1回戦は10匹早掛けで向けた選手が1人いたが、
他の選手も意外と釣果が伸びず3位の順でポイント8を獲得した。
私としては幸先の良いスタートとなった。
少しやばかったのは、最後にもう1尾、もう1尾とぎりぎりまで粘っていたので、
帰る規定時間に遅れそうになりヒヤリとしことだ。
というのも規定時間に少しでも遅れればその時点で失格になるからだ。
なんと1回戦、第2ブロックでは4人、
第3ブロックでは3人の選手が規定時間内に帰れずに失格となっていたのである。
やっと勝ち上がった大会も予選のしかも1回戦ですべてパーである。
私も最後は川の中をダッシュして間に合っただけに本当にやばかった。

経験不足から大きなミス
 2回戦は高速の下流部に入った。
今度は1番クジで私がトップスタートである。
下流部すぐに良さそうな瀬の流れがあったのでここを狙うことにした。
大きな瀬からチャラ瀬に入る肩部分が流れに変化があり良さそうなので、
そこを狙おうと少し上流部に釣り座をかまえた。
しかしここで経験不足から思いもよらぬ展開となった。
なんと私が釣り下ろうと少し空けておいたその肩部分に
スーッと他の選手が入ってしまったのである。
私もすでに準備し釣りかけていたし、
こんなものかなーと思いながら釈然としないまま釣りをはじめてしまった。
今思えば私に優先権があったのだから声をかけて
「そこは私が入ります」と宣言してみても良かったと反省。
案の定、私が一番狙いたかった瀬でコンスタントにアユを掛けられてしまう。
何とか最初のポイントで1尾をキープしたが、
さらに悪いことに納得がいかないまましびれを切らして
他のポイントへ移動してしまった。
この選手は私が移動したことで大きく空いたエリアを有効に釣って、
とうとう10尾揃えてしまった。
私のすぐ上流に入っていた選手も9尾揃えて3位。
私は苦しみながら終了間際に1尾追加してオトリを含む4尾。
2回戦は4ポイントの成績で最後に望みをつなぐ。
最終戦でトップの10ポイントを稼がなければ決勝戦進出はない。

予選敗退に反省点も多い
 3回戦ではアユの追いは確実にあっているのだが、
いわゆる「けられ」状態が何度もあってハリ掛かりしない。
経験がないのは悲しいもので、まだワンパターンの仕掛けしか知らない私は、
こんな時どのように対処してよいのか分からない。
狙う瀬や竿の角度などを変えて攻めてみるがなかなか掛からない。
さすがに他のブロックが2回戦使っているポイントだけに、
他の選手たちも苦戦しているようだ。
最後はオモリを使ってガンガンの荒瀬にオトリをぶち込んでみるが
流れの急な芯ではほとんどアタリが出なかった。
3回戦トップはオトリを含む8尾で4人が同尾数で並び
各選手にそれぞれ10ポイントが与えられた。

結局私は、オトリ込みの6尾で5ポイントとなり合計17ポイント。
ブロック成績は9人中6位となって予選敗退となった。
結果論になるがあと2尾で私にも10ポイントが加算され、
そうなると勝ち上がれたなと思いながらも
この2尾の差がものすごい経験の差、技術の差と言うことを痛感した。
当然いろいろ反省点も多く経験不足の何ものでもないが、良い経験をしたのも確か。
毎日、ドキドキ、ドキドキ、少年の心にさせてくれて、少しの間いい夢を見させてもらった。

中国から4人が全国へ
 決勝戦は、今後の参考のために各選手の釣りを勉強することにした。
私と同じ予選を勝ち上がった西中国ブロックからは、
5人の出場者の内3人が決勝戦に進出している。さすがだ。
日野川会場の東中国ブロックからも7人の出場選手の内
3人が決勝に残り中国からは計6人が挑んだ。 
選手に迷惑がかからないように注意すれば、
川縁で各選手の釣る様子を間際まで来て観戦出来るのがよい。
余裕のある選手は、釣りながらいろいろ教えてくれたり
選手の方から話しかけてくれたりもする。
ポイントの選び方、足の運び、オトリ操作、仕掛けと勉強することは山ほどある。
アユの仕掛けほど10人いれば10通り、100人いれば100通りみんなが違もので、
その仕掛けが違えば同じポイントを釣っていても竿の角度、
糸の張りなどオトリ操作もまちまちだ。
本当に経験がものを言う世界なのだ。
 決勝の結果、中国から進出した6人の内、
友保礼次郎さん(岡山)、渡辺啓一さん(岡山)、
出口静男さん(広島)、藤田久美さん(山口)4人が
夢の全国大会への出場切符を手に入れた。
熱い熱い夏の夢は短くはかないものだが、
磯のグレ・チヌの全国制覇とともにアユでもよい目標が出来た。
後わずかなアユ釣りシーズン、来年に向けてのトレーニング開始である。

 
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