新しく採用されたリーグ戦方式
一日10時間の集中力が試される。・・・・・16回G杯チヌ全国。(小豆島)
「第16回G杯争奪全日本がま磯(チヌ)釣り選手権」(主催・(株)がまかつ)が5月26日、27日の両日香川県小豆島東海岸で開催され、全国9ブロック(九州、四国、中国、関西、北陸、中部、東海、関東、東北)の厳しい予選を勝ち抜いてきた選手とシード選手併せて48選手が熱戦を繰り広げた。私も昨年に続いてこの中の一人として出場した。
今大会から採用されたリーグ戦方式で対戦がスタート。26日の予選リーグは、出場選手48人が6人を一組とし、8組に分かれ各組ごとに5試合(一試合2時間)のリーグ戦を行った。その中から最高勝率をあげた一人だけが翌日の決勝リーグに駒を進める。
同勝率の場合はポイント制
- チヌを釣って勝ったら10点
- チヌをお互いが釣って引き分けたら5点
- お互いがチヌの釣果なしで引き分けたら3点
- チヌを釣って負けたら2点
- チヌを釣らずに負けたら0点)
が採用された。
それでも同ポイントで決着が付かない場合は5試合のチヌの総重量で勝敗を決定することになっていた。
その他の規定は、チヌの大きさが25センチ以上。釣ったチヌは計量後すべて放流。撒き餌も、1日のリーグ戦で使用するオキアミは24キロ、配合エサは4キロの量を規制された。さらに一回戦で使用する量は支給されたバッカン一杯までというもの。
私は予選リーグを1勝1敗3引き分けという成績で、残念ながら決勝リーグに進むことが出来なかったが、今回はこの大会をリポートする。
5月25日、夕方、兵庫県相生市の国民宿舎「あいおい荘」で前夜祭が開催され、ここで主催者側のあいさつやルール説明があり、選手が自己紹介したあと抽選が行われた。
全国から腕自慢が集まるわけだから、前夜祭といえども独特の雰囲気がある。同じ磯のフカセ釣りでもチヌとグレではずいぶん選手の顔ぶれが違うものだが、グレに比べてチヌの方は穏やかなムードを感じてしまう。グレの時は毎回殺気立った雰囲気を感じたものである。昨年のグレとの連続出場は四国の小原輝夫氏、がまかつ推薦の麻田尚弘氏と私の3人だけだった。グレよりもチヌの方が20歳代の選手が多く年齢層が少し若いように思う。それにしても自分が若い若いと思っていても、二十歳そこそこで全国へ出てくるのだからすごい。そして昨年上位のシード選手は別として、予選から2年連続で勝ち上がった東北の伊藤君夫氏、関東の中山文雄氏、関西の内海司氏と再会をよろこんだ。
抽選の結果、私はゼッケン8番。第2組目となった。対戦相手の中には昨年3位の片田岩男氏(関西)がいる。前夜祭は明日からのハードなスケジュールを考慮して午後9時には、お互いの健闘を誓ってお開きになった。
翌朝26日、午前2時半起床。午前3時半に3船に分かれて出船した。小豆島までは約1時間かかる。小豆島に到着したのは4時半、辺りはうっすら明るくなり始めていた。
私の最初の対戦相手は関西の山本博氏。ポイントは小豆島東海岸の最北端に位置する「金ヶ崎」という磯。ここは昨年出場したときに、一度、下見で上がったことがあるため、だいたいの地形は把握していた。まず審査員が境界線に目印を置く。次に選手同士がジャンケンをして勝った方が海に向かって右、負けた方が左に入って釣り始める。1時間後には必ず場所を交代しなければならない。場所や潮の状況によっては相手の境界まで仕掛けを流すことも認められているが、原則的には相手の境界内に入ると即失格となる。もちろん相手の境界内に撒き餌を打つことも禁止されている。
開始早々、気持ちよくウキが入る。竿を立てると小刻みな引きで重量感が伝わる。そこそこの引きだ。あがってきたのはグレ。開始30分で25センチ~30センチ級のグレを立て続けに6匹ほど釣った。グレ大会なら順調なスタートといったところだが、いくらグレでも外道である。しかも今回からリーグ戦方式により他魚で決着が付くことはないので、すべて放流した。今度は少しウキ下を深くしてみたが、それでもグレが食いついてくる。後半になると今度は水面近くまで大型のボラの群が集まってきた。仕掛けを撒き餌よりも離した位置に投入して、棚がなじんでからポイントに引いてくるいつものイメージで攻めるが、アタリがない。ウキ下を底から1ヒロまでいろいろ変えて探ってみるが、結局2人ともチヌの釣果がなく引き分けに終わった。
私たちの船には1組と2組が乗船していたが、一試合目はいずれもチヌの釣果がなくすべて引き分けていた。去年も同時期に開催されたが、去年とは海の状況があまりにも違う。水温が2.3度低くエサ取りが少ない。海の水も澄んでいるように感じた。今回はチヌの釣果がないことには勝負にならないので、なんだかいやな予感がする。2試合目は注目していた関西の片田氏との対戦。なにせ1日に5試合、10時間の釣りをするのだからとにかく慌ただしい。磯にあがって7.8分後には自動的に試合が始まるので、そのわずかな時間に仕掛けをセットして撒き餌を準備する。したがって、昼食や飲み物などもその時間内に自分で調整してとらなければならない。普段から手際のいい釣りをしていないと、慌ててしまって自分のリズムが作れないと感じた。そしてなんといっても体力と精神力の勝負である。
2試合目の場所は初めて上がる。ここは出鼻で藻もあり磯の感じは良さそう。藻の際を丹念に攻めるがここもアタリがない。やがて足下に大きな魚体が白っぽく見えてきた。この正体はコブダイの60センチ以上はあろうかというもの。これが食いついてくるからすごい。道糸1.5号・ハリス1.2号のチヌ仕掛けではとうてい太刀打ちできない。竿を限界近くまで溜めるが、それでもこらえきれずリールを逆転した結末は、瀬ズレで道糸がズタズタになりウキごと失ってしまった。相手の片田氏も3回連続でコブダイらしきアタリに仕掛けを持って行かれて苦戦している様子。このあと場所交代してもアタリはコブダイだけ。とうとうここでもチヌの顔は見ることが出来なかった。
それにしても小豆島というところはコブダイの多いところだ。去年の一回戦でも後半残り30分でお互いにチヌの釣果がなかったので、他魚勝負に出てコブダイを狙ったが3発連続バラシたことを思い出す。30センチクラスから70センチ以上の大型も多いようだ。 この時点でチヌの釣果があったのは1組だけ、あとは釣果なしの引き分け。あまりの貧果に船頭や審査員たちも次のポイント設定に困惑気味。それでも、何とか選手にいい試合をさせてやりたいという大会関係者の気遣いがうかがえる。
出鼻がだめなら今度は大きなワンドの中を攻めようと、普段ポイントにしてないような磯を選んで船を付けた。さあ、こうなったらまだ3戦残っているので、誰があがるかわからない。何とか1匹でもチヌを釣れば勝てる状況だ。
第3戦目、やはりここは最近釣人が入っていないらしく、エサを撒いてもしばらくは魚の気配を感じない。前半の1時間が終了する頃、ようやくエサ取りのスズメダイがちらほら出だした。
後半に入っても潮は動かず、竿先ではゴミがよどんでいる状態なので、ここは思い切っ遠投し、ワンドになった浅い藻際を攻めた。このときのウキ下は1ヒロ。攻めだして3投目にウキにアタリが出た。これは間違いなくチヌだ。ジワーともたれ掛かるような引きが伝わり、耐えていると苦しまぎれにコンコンと首を振るのがわかった。最後に足下の深みで強い引きを見せたが、やはりタモに収まったのは50センチはあろうかというチヌだった。
なんとこのチヌは、昨年から今回をとおしてG杯(チヌ)の試合で初めて釣ったチヌである。結局相手は釣果がなく、第3戦目にしてようやく1勝をあげることが出来た。
第4戦目はこれまで2勝している四国の篠原氏との対戦となった。ここまで2勝しているのは篠原氏ただ一人。ここで勝たないと決勝リーグへの道は絶たれる。第3戦よりもさらに奥深いワンドに場所を移動して対戦が始まる。ここも前半は魚の気配がなく、勝負は後半だと思って移動の準備をしようかという矢先、前半終了3分前に篠原氏の竿が曲がった。これが30センチ弱のチヌ。後半場所を代わって、必死に攻めたがコブダイのアタリのみでチヌを釣ることが出来なかった。
最終戦でも釣果がなく引き分けに終わり、私の2回目のG杯チヌの挑戦は予選リーグで終わった。
27日の決勝リーグと決勝戦、3位決定戦は次の勉強ということで観戦することにした。私は同じ中国の大知豊氏についた。大知氏は3位入賞を果たしたが、さすがにここ小豆島で優勝経験があるだけに落ち着いた釣りを見せた。一番感心したのは、一貫して自分の釣りスタイルやリズムを変えないことだ。ウキ下や攻めるポイントは状況に応じて変えていくが、ホームグランドとなる宮島・阿多田方面での釣りと何ら変わったところがない。
自分の釣りを照らし合わせてみると、まだまだ迷いがあり自分の釣りが出来てないことがよくわかる。つくづく勝負の相手は人間ではなく、自然でありチヌであることを思い知る結果である。
それにしてもこの3日間はすばらしい充実感を味わった。普段の生活から抜け出した夢のような時間である。同じように各ブロックの厳しい予選を勝ち上がった者同士でなければ、解り合えない価値観がここにはある。たかが釣りの世界であるが、ここへ来るためにはこの場にいる一人ひとりが皆、自分の置かれている生活環境の中で、釣りが好きで、釣りを大切にして、釣りを一生懸命して・・・。だからこそ、お互いがお互いを認め合えるのである。G杯は数多くあるタイトルの中でも歴史と格式があると思う。この中から勝ち上がって手にする優勝カップは、まさに文字通り「G1」なタイトルであり、私にとって永遠の夢なのである。