小島一文の
“G1フィッシング”

G1フィッシング

チヌ釣りが一番楽しい

隠岐・島前・ハリス修正について

チヌ釣りが一番楽しい

 インフルエンザが猛威を振るった冬も終わり、すっかり春めいてきて海の水も温みはじめた。待ちに待ったノッコミチヌシーズン突入である。この冬、男女群島などの離島で大物の引きを存分に楽しんだ者が「待ちに待った」とは、また大げさなことを、と、思われるかもしれないが、私にとって春のチヌ釣りは、磯のふかせ釣りに本格的にのめり込ませた始まりの釣りでもあるのだ。だからプライベートな釣りで言えば、男女群島などの離島で尾長グレを狙うのに匹敵するくらい、いやそれ以上に楽しい釣りのひとつなのである。
 穏やかな海、比較的水深のある深場、とろーとした緩い潮の流れ、そして軽い遊動仕掛けを静かに送り込み、後は、道糸をやや多めに送り出して張らず緩めずにウキに仕掛けを任せる。すると静かで池のような海面からスーとゆっくりウキが消し込まれる。緩め気味にしていた道糸がスルスルーと張っていき、すぐに穂先にその力が伝わってくる。ビューン。竿を立てると期待どおりの重量感が体全身に電撃を走らす。辺りの静けさからは想像もつかない力強い引き込み、十分に引きをたしなんでからタモに収める。そう、私の好きなチヌ釣りで、しかも一番好きなフィールド隠岐島前・内海の釣りイメージである。

チヌ釣りをグレ釣りトーナメントに応用

 激流の本流。仕掛けを張り張りにして竿にドーン。なんてこんな釣りも確かに醍醐味があっておもしろい。しかし私は、比較的仕掛けを張り気味にすることの多いグレ釣りよりも、前述した緩い流れをウキに任せてゆっくり流し込むようなイメージのチヌ釣りが大好きである。結果的には今、釣りトーナメント中心の私にとって、このチヌ釣りで得た釣りイメージの応用が随所に活かされているのも確かである。今のグレ釣りの傾向から仕掛けを張りすぎていては食い込まないことが多いし、ヒットするタナがだんだん深くなっているし、魚のサイズ規定などでより大型を狙うなどチヌ狙いのイメージに共通した部分が実に多いからである。チヌのノッコミシーズンは、大いに楽しみながら次期トーナメントのトレーニングも兼ねているのである。

今年初のチヌ釣りはボウズ

 今シーズンのチヌ釣りは、3月上旬にGFG中国チヌ釣り決勝大会が山口県徳山沖で開かれ、私も島根県代表として参加しこれが初釣行。6時間、竿を出してなんとボーズ。山陰勢は他の選手も振るわず惨敗した。敗因はいろいろあるにしても、何のトレーニング、何のイメージも作らずにはいい結果は出ないものだとつくづく反省。その後、クラブのメンバーらが大社方面などから情報を入れてくれるのだが、日程調整がつかず釣行できないままになっている。年度末は何かと忙しい。

4月第1週に釣り大会

 4月3日、4日はGFG島根支部チヌ釣り大会を初めて単独開催する予定である。場所は隠岐島前。私にとってもこの大会が実質、今シーズン初のノッコミチヌ釣行になりそうである。当初この計画を立てるときに「時期が早いのではないか」という声もあったが、近年の高水温傾向にあることや昨年同時期の実績から4月第1週のこの日程で進めることになった。私の予想でも、最近の気象状況や撒き餌、釣り方の進歩などから考えても、近年早い時期から釣果実績があることからも十分期待がもてると思っている。1人が二桁以上という数釣りは期待できないにしても50センチを越す大型がヒットする確率は非常に高いと思う。そしてこの大会の釣果が今年の傾向を占うデータになることだろう。

狙いは西ノ島の一部と中ノ島

 昨年4月上旬に実績があったのは中ノ島の水道筋、その中でも「ようのき」「黒崎」「シイノキ島」が特によかった。やはりこの次期、数は出なかったが50センチを越す大型の釣果があった。この周辺のポイントは、足下から8メートル以上の水深があり比較的深く、岩礁、砂地、ゴロタ、海草、と起伏に富んだ海底になっていてチヌ釣りの好条件といえる。今年もこの周辺が最も狙い目になってくるだろうと予想される。
 中ノ島はほかにも「きろがさき」から「松ヶ崎灯台」まで前述と同じような好条件のポイントが連なっているので目が離せない。
 西ノ島にも、早い時期に実績があるポイントがある。「峯竹さん」「センス」「雉が鼻」などは過去の実績からこの時期でも十分期待できる。

チヌは底にある餌を食べる

 狙いのポイントはだいたい定まった。今度はそのポイントを的確に攻める仕掛けイメージである。私のチヌ釣りイメージは「底を釣る」である。それは、ある水族館でチヌを何時間も観察しているとチヌは底にある砂や石ころをつついて探りながら餌を食べている様子がよく分かるからである。今まで釣りをしていても上層から落ちてくる餌を浮いてきて喰うときはよほどの好条件の時で、ほとんどは仕掛けをはわしているイメージで底で喰ってくることが多いようである。しかも大型ほどその傾向が強いと思っている。最近ではドボン釣りで50センチを越す大型チヌの実績をよく耳にするが、釣り味はともかくとしてチヌの習性をよく知った利にかなった釣り方といえよう。瀬戸内海などでは浮いてきてグレと似たような状態で喰ってくることも多いが、それでも私は「チヌは底」というイメージをいつも持っている。

水深よりも深めの仕掛け設定

 よって仕掛けはポイントの水深よりも矢引きから1ヒロくらい深めに設定することが多い。ここで注意するのは、起伏に富んだ海底のどこに照準を合わせるかである。私の場合は、周辺の起伏の一番深い部分に照準を合わせてさらにその部分からハリスをはわせる(図1)。
 また、(図2)のようにA・B付け餌が同じ位置になじんでいると仮定すると、AよりもBの餌の方をチヌはより好んで食べるのだと私はイメージしている。チモトにガン玉を打って付け餌を安定させた方が喰いが立つのもチヌの習性を考えると納得できる。
 海底は、肉眼で見えない部分なので正確には分からないにしても、何度か連続して仕掛けを流すことにより、ウキの変化や根掛かりの状況などから一早く海底の様子を察知することである。水深よりもやや深めに仕掛けを設定しておけば、予測できない海底の状況をある程度補正してくれるので、海底のくぼみ、みぞ、海藻の影などでジッと潜んでいるチヌの口元まで付け餌を運び込んでやるイメージである。根掛かりせずに流すハリス修正
 水深よりも深い仕掛け設定では根掛かりも多い。しかしこの根掛かりを恐れていたのでは釣果は伸びない。海底の起伏を読んでいかに根掛かりせずに仕掛けをポイントに流し込むかがキーである。何度も根掛かりするところでは、道糸を引いてハリスを浮かせ障害物をクリアーするようなイメージで流し込む。また隠岐島前の内海ポイントの多くはカケアガリにハリスをはわせるイメージで釣るので、なるべく遠投し手前に引くようにしてカケアガリに付け餌を送り込む。
 ガン玉の付ける位置や大きさは海底の状態、潮の速さ、風の強さに応じて替えているが、ハリに近い部分にはなるべく打たないようにしている。その方がハリス修正がスムーズにいくからである。 以上の釣りイメージは、3月から4月中旬ころの釣りイメージである。水温が15度から17度以上に上昇する4月下旬から5月になれば、餌取りも多くなりチヌの活性もよくなるので、比較的浅いタナや浅い水深のポイントを攻めるイメージに変わってくる。するとおのずと仕掛けや釣りイメージも変化してくる。それでも頭のどこかには「チヌは底を釣れ」というイメージをいつも持っているものである。

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