報知グレで名人に挑戦
報知グレ大会・日振島
今やグレ釣りトーナメント全盛期。各メーカーや団体主催のトーナメントが各地で盛んに開催されている中、その草分け的存在とも言えるのが、報知新聞社主催の報知グレ釣り選手権ではなかろうか。この大会で名人位を獲得した者の中には、中原、志賀、山元、立石、江頭、宮川、大知(敬称略)などグレ釣りをリードしてきた名手がずらりと名を連ねている。
今年で27回目を迎える同大会が、10月25,26日の両日、愛媛、日振諸島の磯で行われ、私も出場した。
報知グレには、釣友の吉野功くん(出雲市天神町)と4年前に初エントリ-し、彼と共に4年連続の出場である。私の過去の成績は、4位、3回戦負け、2回戦負けと下降線をたどっていたが、今年は初日の3回戦を勝ち抜き、6位に入賞して来年の同大会シード権を得た。
初日25日は、各府県から選ばれた46選手と2回戦から出場のシード選手、元名人の合計51選手が1~3回戦を戦った。この日は、大型の低気圧が日本列島を縦断中で北西の風が強く、沖の日振本島には出れず湾内の磯で対戦することになった。
グレの規定は23センチ以上。湾内の磯といてもこの辺りのグレの魚影は濃い。どの磯でも20~30センチのグレがうようよしている。時には40センチ級のグレも釣れるというから私たちがホームグランドにしている島根半島などの近場の磯では考えられない。
当日は、湾内といってもかなりの強風とうねりである。サラシが強い上に横風がきつい。私は、風の影響を最小限にしようと考え、浮力ゼロのウキにウキから下を1ヒロ半にセット。ハリスにはガン玉を一切付けない。ウキ止めなしのフリーという図のような仕掛けを基本に1回戦から3回戦までを戦った。
懇親会では、たくさんの人と出会い技術交流を・・・
初日が終了し夕食に合わせて懇親会が開かれる。この場で準決勝以降の組み合わせが決まる。たくさんの選手の中から2日目に残れるのはわずか6選手だけ、この中にいるということは何とも言い難いよろこびである。そしてこの場が絶好の交流の場であり、最先端のグレ釣り情報が満載に詰まっている場なのである。私と吉野はとにかく誰にでも声をかけて、たくさんの人の話を聞いて帰るように心がけている。みんなすごく研究していて、特にグレ釣りの生命線とも言えるウキに関しての研究はすごい。いいものはおねだりして、もらって帰っちゃう。そして自分の仕掛けに取り入れられないかといろいろ試してみるのである。実際には使えなくても、試すことによって自分が気がつかなかった様々なことが分かってくるものである。
今、日振諸島周辺の磯では2段ウキを使う選手が多い。ここではアタリウキについての話題に集中する。驚くことは年々進化していることである。ただのアタリウキだったのが、様々な工夫で、アタリを取るだけではなく状況によっては潮を読むナビゲーションの役目をしたり、飛ばしウキのクッションを兼ねていたり、形や大きさ、浮力、色など人それぞれに工夫が凝らされている。
なぜこのように二段ウキが流行るのか私なりに考えてみた。
- 感度がよく小さなアタリでもとれる。
- 視認性がよい。
- アタリウキとの引っ張り合いで簡単に程良い「張り」が作れる。
- 付けエサを先行させやすい(ハリスの向きが分かりやすい)
- 一投一投の勝負が早く手返しが早い。
特に今のグレは「張り」が強すぎるとアタリがあってもほとんど付けエサを放してしまうので、よりアタリウキを小さく、感度をよくして、グレに違和感をできるだけ無くす工夫が必要だ。この仕掛けだと道糸をあまり強く張らないので、穂先でアタリを取ることはない。最近主流になってきたインナーロッドの穂先の感度でもこの仕掛けなら問題ないのだろう。私は、今大会では結局使わなかったが、管付きウキからすぐに2段ウキ仕掛けに変えられるように、あらかじめゴム管を2個通しておき、ウキも竹下ウキなどの足長ウキから同じ管付きでも丸形の天狗ウキなどに変えて、対応できるように準備はしていた。今後、この2段ウキ仕掛けを私たちの仕掛けや釣り方にどのように取り込んでいくのか研究が課題であろう。
準決勝はグレ釣り5冠王の名で知られる宮川さんと対戦
懇親会も中盤に入り、いよいよ準決勝の抽選が始まった。私は残りくじを引いて、なんと宮川明元名人(守口荒磯クラブ)と対戦することになった。宮川さんは、数々のグレ釣りタイトルを持ち、報知グレでも3度名人位に輝いているグレ釣り界のスーパースターだ。対戦できることは光栄なことでもあるし、自分がさらに飛躍する絶好のチャンスだ。
2日目、26日。いったんやんだ風が明け方からまた吹き出して、この日も沖に出られそうにない。さらに条項は悪化し、湾内の磯でも無理だという。役員が検討した結果、防波堤で時間短縮して行うことになった。
30人以上のギャラリーが見守る中、準決勝の3組6選手が同じ防波堤に並んで試合を開始した。時間は1時間。30分で場所交替。防波堤といえどもグレの魚影は濃い。撒き餌を入れるとすぐに木っ端グレが見えだした。その中にはキープサイズも混じっている。
私の基本的な仕掛けはここでも変わらない。浮力を落とした管付きウキ。ハリスにガン玉を使わない完全フカセで、撒き餌の外からウキを潜らせてポツリ、ポツリ、キープサイズを拾っていった。相手の宮川さんを含めてほかの5選手は全て2段ウキだ。
前半は互角に対戦していたものの、後半になって場所を交替してからは、コンスタントに釣果を伸ばす宮川さんに対して、迷いが出た私は伸び悩んだ。最初はキープサイズのグレも浅い棚まで浮いて活性がよかったが、撒き餌が大量に入ったのかグレの棚が深くなったようだ。時々出るアタリも食い渋ってる様子で食い込んでこない。ここで迷ったのはガン玉を付けるかどうか。棚を変えるかどうかだった。ハリ近くにガン玉を打って棚を3ヒロくらいにし、早くグレの棚まで沈めて手返しを早くする。結局、終了間際にこの仕掛けで釣れるパターンをつかんだが、変える判断のタイミングを失って、ダブルスコアに近い大差で敗退した。そしてもう一つ自分の釣りでイメージしていたのにできなくて悔やんだのは、撒き餌を縦長に遠投して撒き、水中をナイアガラの花火のように流れるようにイメージ。その中を竹下ウキのマイナス付加のウキで遠投して潜らせながら手前に引いてくる釣り方である。名付けて「ナイアガラ釣法」。実は、大会が終了した翌日にもう1日現地に残って準決勝を戦った同じ防波堤に渡船してもらい、反省を含めていろいろ試してみた。確かに2段ウキは、手返しもよく、よく食ってきた。グレは鉛を嫌うと言うが、ハリ上10センチ以内に口鉛を付けてもけっこう食ってくっる。そして一番試してみたかった自分の釣り「ナイアガラ釣法」をやってみた。バンバン食ってくる。しかもグレの型が一回りデカイ。23センチ~30センチのグレを1時間で20匹以上釣り上げた。昨日とは条件や状況が違っているので一概には言えないが、自分のイメージしていた釣りが十分通用したのである。 身に付いていることでも、その場面で適切に使いこなせなければ、知らないのと同じことである。私は、他に誰もいないガラーンとした防波堤で「あー」となにやらわめいて天を仰いだ。
決勝は、矢部卓(無名人)、大谷善正(三重グレ研究)、宮川明(守口荒磯)の3選手で行われ、矢部選手が1号の丸オモリを使った深棚狙いで初優勝に輝いた。続く大知豊(銘竿会)名人との名人位を賭けた戦いも、選手権の勢いを活かして後半大逆転で制した。
今大会も収穫が多かった。まずは自分の釣りをみんなに見てもらえたこと。次に宮川さんと対戦したことにより、宮川さん本人はもとより、同大会に出場していた山元八郎元名人などにいろいろアドバイスいただいた。私の管付きウキを使った釣りを認めてくれた上で、状況に応じては、2段ウキ仕掛けも有効であることや同じ釣れるものならより勝負が早く効率のよい仕掛けの方が数が稼げるなど、まだまだ改良の余地があると助言してくれたのである。