底瀬の多いポイントは道糸修正ならぬ
ハリス修正でピンポイントを狙え! ~ 島根県魚瀬・ハリス修正 ~
4月号で60センチ超のチヌを狙う近場のポイントとして紹介した松江市魚瀬の中から、私が特に注目している磯の攻略法をイメージしてみた。初めて40センチオーバーのチヌを釣った思い出の磯
私が島根に帰郷したのが昭和61年春。本格的な磯のフカセ釣りをはじめたのもこの頃である。チヌがよく釣れると人に聞かされ、たまたま訪れたのがここ魚瀬の磯であった。何度か通ううちに初めて40センチオーバーのチヌを釣り、その引きのすごさと感動は今でも忘れられない。ぎこちなくやっとの思いで釣り上げた自分の姿を思い出すと苦笑してしまう。それ以後、魚瀬の磯は私にとってはホームグラウンド中のホームグラウンドになった。私をここまで育ててくれたフィールドといってもよい。今でも大きな大会前の調整や悩んで基本に戻りたいときは必ず魚瀬に訪れる。それだけに私にとっては愛着もあり特別な場所なのである。
魚瀬はフカセ釣り道場
「魚瀬」は読んで字のごとく非常に魚影の濃いところとして知られている。特にチヌやグレは豊富で、これからふかせ釣りを学んで行く人には絶好の場所といってよい。 魚瀬は「カブ島」周辺から沖合い数百メートルに至るまで水深10メートルから20メートルの海域が続き起伏に富んだ底瀬が多い。かなり沖合いまで比較的浅いということだ。3月25日にはこれらを証明する漁船座礁事故が起きた。新聞報道では約500メートル沖に座礁と発表されていたが、磯で釣っていてもはるか沖でカナギ漁をしている光景を目にし、「あんなところにあんな浅い瀬があるのか」と驚いたものである。よってカゴ釣りには向かずここへ訪れる釣り人のほとんどがチヌ、グレ狙いのふかせ釣り愛好者が多い。そして常連さんが多いのも特徴で、みんなが釣り場を大切にしているのが印象的である。
注目ポイントは灘の二つ島
前置きが長くなったが、今年私が最も注目しているのは、「フゼン」「烏帽子岩」その手前にある「灘の二つ島」だ。この島はいずれも人一人がやっと釣りができる小さな島である。図を見ていただきたい。Aはカブ島に向いて正面と西側一帯が好ポイントになりそうだ。ここは約3ヒロほどの水深があり全体にはゴロタ石、所々に底瀬があり浅い瀬には海藻が茂っている。ここを狙うには東から西方向に流れる潮が好条件となるだろう。また、烏帽子岩方向から東側はだんだん浅くなっており水深は約2ヒロくらいだろうか。女島方向に流れる潮の時は、ウキ下を2ヒロにして30メートル~50メートルくらいまで流し込んでみてもおもしろい。女島方向の水深は浅いが藻が多くいかにも大チヌが潜んでいそうで一発大物ならこの方向が本命だろうか。過去に50センチクラスの実績もある。
Bは西向きにしか竿出しできない。西向き約20メートル付近に海面から見え隠れするほどの底瀬がありこの付近が狙い目だろう。ここも東から西へ流れる潮の時が条件だが、潮が速い場合はAと烏帽子岩の水道を抜けてちょうど前述した瀬にぶち当たるようになり、こんな時はむしろAよりも条件がいいと思う。
ハリス修正でピンポイントを狙う
灘の二つ島で仕掛を流すイメージは、起伏の多い海底をいかに根がかりさせずに流し込むかが重要だ。タックルは図を参照してほしい。A・Bそれぞれ西側を攻める場合は水深が3ヒロ平均なので、ハリスを3ヒロとり遊動部分を1ヒロとる。タナは合計4ヒロとなるが、風、潮、波などの自然条件をよく観察し、仕掛にテンションをかけながら3ヒロのタナをキープし流し込む。浅い瀬の付近まで流したら仕掛を少し引いてハリスを浮かせながらこの瀬をクリアーする。溝や深み潮目などに来れば、少しテンションを緩めて道糸を送ってやりさらに遊動部分の1ヒロを送り込む。つまり同じ仕掛設定で1ヒロから4ヒロまでを操作するわけである。この操作は、起伏の多い海底や瀬に仕掛を根がかりさせることなくヒットポイントに長らくキープさせるテクニックだ。結果的にはこの操作がチヌに対しての誘いにもなる。この方法は他のいろいろな磯で、また、グレ釣りにも応用できるので、ぜひ試してみていただきたい。
完全フカセが基本、状況に応じてガン玉使いも
この釣り方はハリスには何にも打たない完全フカセがいいだろう。しかし、風、潮、波の状況によっては、ガン玉を打って仕掛を安定させなけれならない場合もある。要はサシエをチヌのタナまでいかにして送り込むかである。私の場合は最初は完全フカセからはじめて、横風が強かったり、潮が速かったりすれば、その度合いに応じてジンタンの5号~Bをハリスに2段打ちする。ガン玉についてはあくまでも目安なので打つ位置や個数などはどんどん進化していく。極端な場合では1投1投変更する場合もある。ガン玉が仕掛に加われば、仕掛にかけるテンションの強さも変えなければならないが、自然条件は無限であり、操作は感覚的な部分もあるので、これをヒントに自分でいろいろ試してみると良い。その積み重ねが経験となり自分のテクニックとして身に付いてくるものである。
撒き餌は軽比重に
私のチヌ釣りの撒き餌には配合えさは欠かせない。通常はベースにマルキューのオカラだんごを使用しているが、灘の二つ島では水深が浅いので軽比重の配合エサを試してみたい。半日の量としてオキアミ生3キロ、配合エサにマルキューのスーパー磯チヌ1,チヌパワー浮かせ1、チヌにこれだ1を使用する。サシエサにはこれも最近マルキューから新発売されたくわせオキアミスーパーハードLを使用する。生タイプなのに時間が経っても変色せず身がくずれないのでハリ持ちが良く遠投してもOKだ。
灘の二つ島に今シーズン初渡礁するも・・・
私の春のチヌ釣りは、大社方面の湾内から始まり徐々に島根半島、隠岐島前、島後と足を伸ばすのがここ数年のパターンになっている。
しかし今年の出だしは苦戦の連続。せっかくの休みの日も不安定な天気にたたられて思う場所へ渡礁できなかったり、急な仕事が入って釣行が中止になったりと、これもわれわれサラリーマン釣師の宿命なのであろうか。
2月下旬と3月上旬に大社湾の第2隠岐防波堤に釣行したが共に30センチ未満のチヌ1匹づつの釣果に終わっている。3月中旬から下旬にかけては、天気予報をながめながら仕事の合間をぬうようにして島根町の野井、松江市の魚瀬へ釣行したがいずれもチヌはボウズであった。魚瀬では前述の灘の二つ島Aに渡礁したが西風が強くなり1時間ほどでカブ島に変わる羽目となった。
悪いイメージは良いイメージに修正しておく
2回連続ボウズであったわけだが、こんなときは悩みに悩んでしまう。何が悪かったんだろうか。マキエか、仕掛か、釣り方か、ポイントかとあらゆる角度から分析してみる。この悩みが釣りに対する問題意識となり、次の釣行に必ず役立つのである。こんなことを言うと楽しいはずの釣りなのになんだか深刻で小難しいように思う人もいるかも知れないが、私は釣れなかった悪いイメージを自分のイメージフィッシングの中で修正してイメージの中でアフターフィッシングを楽しむ。修正するときに出た問題点、つまり反省点を洗い出し次の釣行までに整理して、次の釣行に活かすように心がけている。だからたかが釣りのことなのに真剣に悩んで考えることも私にとっては釣りの楽しみの一つなのである。時には釣友たちと時間をかけて意見ををぶつけ合ったりもする。師匠や先輩に質問したり相談したりもする。重要なことは、どんなときにでも前向きに問題意識を持って取り組めるかどうかなのである。固定観念にとらわれず常に学ぶ気持を持つことが、釣りだけではなく全ての生活において大切なことだと思う。