今、地地球環境が危ない
自然に親しむ釣人よ2002年の今、立ち上がれ!
2002年につなぐ一尾
みなさんは年末年始の釣果はいかがでしたか。人はやたらと、何々納めだとか、初何々とかいってその年の区切りを意識するもの。釣りでも竿納め、初釣りといってはその年の釣りを占ったりする。いわば験を担ぐわけだが、私の21世紀最初の年はあまり恵まれた釣果がなかった。そこでなんとか良い釣果で新しい年につなげようと年末に隠岐に向かった。しかし天候が不順で大シケ。希望するポイントに渡礁することが出来ない。「やっぱり今年は運にも見放されたか」と思いながらも、帰る予定の30日は急な水温低下で魚の活性が非常に悪い。アタリがほとんど無い。風も強く風裏だというのに吹き飛ばされそうだ。すると船長から携帯に連絡が入った。「大シケでフェリーが欠航になりました」。家族には「大晦日はがんばって大掃除をするから」と約束し釣行していただけに、鬼のような家族たちの顔が浮かんではくるが、なんとラッキーなことか。もう一日チャンスが出来た。明日は少し風も収まることだろう。家族たちへの言い訳も、自然相手のことだからフェリー欠航なら「仕方がない」の一言で済ませそうだ。そして大晦日。最後の最後にイメージ通りの45センチ口太グレを引き出した。中ノ島(海士町)高田鼻周辺の無名磯である。
初釣りは四国宇和海でスタート
正月三が日の山陰地方は再び冬型の気圧配置になり大雪、大シケの荒れ模様となった。年末の30日に続き2日も隠岐の便は全面欠航となって帰省客の足を狂わせた。私も今年の新年は特に遠征釣行の予定もなくのんびり家で過ごした。こんなにのんびりした正月は久しぶりだ。
2002年、私の初釣りは愛媛県宇和海からスタートした。釣り餌メーカー、マルキュー(株)を励ます会「MFG」主催の親睦釣り大会に参加した。このMFGは、マルキューファンの釣人が「勝手にマルキューを励ます会」と称して、その趣旨に賛同して集まった仲間たちの会である。だからマルキュー(株)とは直接の関係はなく運営されており、会員たちが会費を持ち寄って自主運営されている。 発足は平成9年8月、初代会長にはこの理念を提唱して呼びかけた関西の宮川明氏が就任し、現在関西地区を中心に東海、中国、四国に約1,000人の会員数を数えるまでに膨らんだ。現在も毎日のように会員が増え続けているという。昨年7月にはMFG関東が発足しここにも500人の会員がいるという。この勢いはすごい。
それでは何故こんなに短期間に大きくなったのか。私が考えるには、釣人ひとり一人が、釣り場の環境や釣人のマナー向上を真剣に思うようになった現れだろうと期待している。マルキューの理念である「お魚さんに感謝」、「自然に感謝」の気持ちは、エサ作りの基本理念でもあり、徹底した天然素材にこだわり自然環境に優しいエサ作りを進めている。この基本理念は自社製品を使う釣人たちにも向けられ、釣人のマナー向上を呼びかけている。だからMFGは、これらマルキューが提唱する自然環境やお魚さんに対する思いやりがある釣人ならだれでもが会員になれる資格がある。
モラル、マナーの低下
釣人のマナーが問題視されはじめて久しいが、何もこの問題は釣り場だけのことではないし、釣人だけの問題でもない。今や地球環境において私たち人間のモラルとマナーの低下は、落ちるところまで落ちたといってもよい。私が暮らしている近くに宍道湖があるが、町役場が設置した「ゴミ捨て禁止」看板の根本にゴミの山が出来る現象をどう見たらよいのだろうか。私たち人間社会は物の豊かさを手に入れた反面、自然環境というかけがえのないものを失おうとしていることに気がつかなければならない。このまま行ったらいつかはこの地球が滅んでいってしまうのだろうか。今自分たちだけが良ければ本当にいいのだろうか。もはや人は人としての尊厳と心までもを失おうとしているように思えてならない。だから自然やお魚さんを愛する私たち釣人が中心となって、まずは自らを律し、お互いでお互いを注意しながらも、今度は釣り場だけではなく釣りを通して社会全体に実践させていこう。釣人=マナーの悪い人ではなく。「あの人は自然に親しむ釣りを趣味にしている人だから、やっぱりマナーもしっかりした人だ」と、社会の中でも信頼され模範になるような人間(釣人)でいたいと思う。そんな志を持った仲間が全国に広がれば地球は救えるのかもしれない。私たち釣人こそが環境問題に立ち上がる・・・今その時だ。なにも大きな取り組みをする必要はない。まずは自分自身を省みて実践してみよう。次に釣友。次にクラブ。次に社会へと広げていけばいい。「マルキューを励ます会」は、自分のゴミプラス釣場にあったゴミを一つでも持ち帰ろうと「プラス1運動」を会で決議し、会員たちに呼びかけている。
1月6日、愛媛県宇和島市蒋渕に105人の仲間たちが集った。宮川会長のあいさつにつづいて相談役の大西満氏が会員たちに提唱した。それはたばこのポイ捨て。大西氏は「確かに弁当の食べかすやエサの袋、ジュースの空き缶などは持ち帰るが、いまだ軽視されがちなのがたばこのポイ捨て。日々の生活でも当然のこと、釣場でも灰皿を用意して海や磯などに捨てないようにしよう」とマナー向上を呼びかけた。
私も全く同感の思いでうなずいた。たばこは自然の葉っぱと巻いてある紙で出来ていることから、捨ててもやがて分解して自然に帰るという間違った認識があるのか。一般社会でも、そして残念なことに釣場でも火が消えればいいだろうという感覚でポイポイ捨てられるのをよく目にする。たばこはゴミだとは思わない感覚なのか。しかし、たばこのフィルター部分は人工物で、ちょっとやそっとでは消えて無くなることはない。捨てれば小さくとも立派なゴミなのである。ちりも積もれば山となるのだ。たばこを吸う人は普段から携帯用の灰皿を持ち歩くらいの心構えは必要で、釣人たちは釣場でも当然同様の配慮が必要だろう。
グレの釣果にひと安心
さて、いよいよ初釣りスタートである。MFGの釣り大会は、このように親睦と釣マナー向上が最大の目標なので大会ルールも楽しい。抽選により渡船やポイントが決まるのだが、審査方法がユニークだ。事務局であらかじめランダムに2人一組でチームを作っておいて、その二人の釣果で審査するのだ。審査はグレの1匹長寸。組んだ相手は納竿後、審査してから発表される。自分に釣果が無くても相手次第では上位入賞する可能性もあるし、またその逆に自分が大物を釣っていても相手に釣果が無くてはダメな場合もある。そのほか上位5人の県別団体戦もあり、同じ県の釣人同士が激励を飛ばし合う場面もあった。親睦ならではのMFGルールだ。この大会に山陰からは鳥取7人、島根7人の合計14人が参加した。
私は岡山の阿部さんという方と「ドウブツの4番」に渡礁した。前日から下見に入っていた釣人の情報によると、急な冷え込みで水温が低下、食いは非常に渋く釣果はあまりよくなかったという。当日も冷たい北風が強く吹き、条件としてはあまりいいとはいえなかった。この磯は潮が引いていることもあるが、水深は比較的浅く底瀬の多い釣場。私は阿部さんの好意で潮下に釣座をとらせていただき、ウキ下3ヒロから軽い仕掛けで4ヒロまでの棚を探るように流した。すると小さくコツコツと手元にアタリが伝わったかと思うとスーッとウキが消し込み、次にズシッと魚の重量感が「がま磯GⅢ」にのし掛かってきた。グレだ。サイズは30センチほどだが初釣りで狙いのグレがヒットしてきてホッとした。まずはボウズを逃れてひと安心だ。同じパターンで30センチまでのグレを3匹追加して、渡船の見回り時間が来た。同行の阿部さんがサイズアップを狙って磯替りするというので、私も船に乗り込んだ。今度は「契島」に渡礁したが、賭は裏目に出てグレを追加することは出来なかった。
40センチ級の釣果も・・・
港に帰港後、次々に釣果が検量所に持ち込まれた。今回は前述したようにチーム戦なのでどんなに小さくてもグレの釣果があれば、自分の手持ちの一番大きなグレを出しておかなくてはならない。全体の釣果は場所によってかなりの釣ムラが出て、残念ながらボウズの釣人も多かったが、一級磯の「黒島」「大ウルシ島」周辺が比較的釣果がよかった。40センチオーバーを何枚も仕留めた釣人もいる。検量の結果、千田敏文さん(42.8センチ:岡山)原田真さん(37.9センチ:大阪)チームが80.7センチで優勝した。団体戦は5人のグレ5匹の合計が199.1センチでほぼ40センチ平均をマークして、他県を圧倒した広島県が優勝した。山陰勢で健闘したのは島根の宮廻裕さん(出雲市)、貴重な1匹の釣果が42センチをマーク。相棒の篠原龍蔵さん(愛媛)が38.6センチを釣って優勝とわずか0.1センチ差の準優勝に輝いた。今回の大物賞は楠木竜次さん(46.6センチ:福山)だったが、組んだ相手に釣果が無く上位入賞は出来なかった。
今回の大会は九州以外の西日本各地からたくさんの釣人が集まった。特にこのMFGは、タックル関係の各メーカーの垣根を越えて多くの名人たちも顔を連ねる。この名人さんたちと直接交流がもてることも魅力の一つだ。
釣を愛し、お魚さんを愛し、自然を愛する人ならだれでもいい。トーナメントを目指す人、普段の釣を楽しむ人、釣の楽しみ方は千差万別でいい。ただ私たちは、決して人としての心を忘れてはいけない。 2002年、今私たち釣人が環境問題に立ち上がろう。